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TOKYO POETRY READING Vol.6

たぐち ふとし


1
愛を待っている

うつむきかげん
しかめ面してことばをひろう
わたしの髪はパサついているわ
古文書の中にエロスを求めているのね
けれど、
ことばばっかりじゃイヤ

安いがいい
特売を見つけ、割引のを買って
できるだけ出費を控えたわ
けれど、
貯金ばっかりじゃイヤ
ほんものがいい
ほんもの、ほんものがほしい

目は半分閉じて
呼吸をととのえ、静かに座る
私の隣に男も座った
翻弄される自分を取り戻したく道場に通ったの
けれど、
瞑想ばっかりじゃイヤ

ほんとうのわたしの気持ち
キツクいってることばの裏側にあるの
はやく気付いてほしい
だから、
強がってばかりはイヤなの、イヤなの
ほんとうにイヤ
甘えたい


2
国語の授業

あんなにも嫌いだった国語の授業
そう、あんなにも、なんなにも、嫌いだった
本当は嫌いではなかったのだ
嫌いにさせられた

あんなにも嫌いだった国語の授業
今、私は国語をほんとうに私のものにするため
つい先日、本屋で買ってきた教科書を読む
線を引きながら
閃きをノートしながら
この伝えたい何かをいつか伝えられるよう

私のために
何かのため
そして
だれかのために


3
夏なんだし

夏はもう来ました「か」
暑いですね
汗かくね
けれど、部屋の窓は開けない
暑いね
暑いですね
だったら部屋の窓を開けたら
イヤだね「蚊」が入ってくるもの
だったら、開けられないね
そうなんだよ
でも、「蚊」がいてもいい「か」なと思う
夏なんだし
腹も減るだろうし
血も吸いたいんだろうし
生きたいんだろう
羽があるから飛びたいんだろうし
夏なんだし
わたしも飛ぶ
「か」


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