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マッケンローから草薙くんまで

(N)


 私にとってのヒーロー・ヒロインは誰だろうと考えてみたけど、飛び抜けた存在の人はいない。けれど、何人か思いつくままに挙げてみると以下の様になる。
 まず、テニス界からはビヨン・ボルグとジョン・マッケンローの対決がとても好きだった。二人は「紳士のボルグと悪童マッケンロー」と言われ、私はやっぱりボルグの方に好意を持っていたが、一方でマッケンローのとことん自己主張する姿に魅力を感じずにはいられなかった。この点は後の私にかなり影響を与えたのかもしれない。
 TVの世界からは、「バイオニック・ジェミー」のジェミー、「キャンディキャンディ」のアンソニー、「はいからさんが通る」の少尉、「エースをねらえ!」の宗方コーチ等あげるとキリがないが、とりわけインパクトが強かったのはNHKで放送された「七瀬ふたたび」の火田七瀬だった。原作は筒井康隆の同名小説で、ストーリーは超能力を持つ若者達の話だ。
 ここ数年の間にいろいろな若い女優を使って何回かドラマ化されていたが、やはりあの衝撃性は最初の作品には勝てないだろう。
 まだ若くてふっくらとした多岐川裕美が演じたあのドラマは、映像も当時としては想像力をかき立てるような感じもあり、(例えば、「恒夫」が予知する風景が緑の木々と空しか見えないとか。−これが恒夫の見る最後の景色だったわけだけど。)私はとても熱心に見ていたのだ。
 私はこれをきっかけに、筒井康隆の「七瀬三部作」といわれる三冊の本をたて続けに読んだ。どれも当時中学生だった私には衝撃的ではあったけれど、すっかりその世界に引き込まれていった。しかも、この後、私は筒井康隆のIQ190の頭がどんな事を考えるのに興味を持ってしまい、中学から高校にかけての主たる読書は彼の作品となってしまった。私は彼の作品を読んだ後は必ず頭の中がグッチャグチャの状態になり、彼の主だった作品の殆どを読み終わった頃、もう読むのは止めようと思った。いくら読み進めていっても、もう二度と「七瀬三部作」のような作品には巡り会いそうにないと判断したからだ。
 果して、私がその後、なにを言っているのか分からないとか、なにを考えているのかわからないとか、どれが本音かわかりにくい等、人に言われることがあるのは彼の作品の影響なのか・・・。

 それから、これはもしかしたらすごい歴史的瞬間に立ち合ったのかもしれないのでこの人も「ヒーロー」の一人として挙げておきます。
 それはつかこうへい脚本、演出の「蒲田行進曲」に大部屋俳優「ヤス」の役を演じた「草薙剛」です。(1999年3月5日から27日までシアターコクーンにて上演)
 舞台の上には「ヤス」その人が立っていました。驚きました。彼はつかこうへいの演出法を具現化できる希有な役者です。ホントに驚きました。ああ、あとは彼と張り合える「銀ちゃん」と「小夏」がいれば・・・。
 舞台に立つだけで、もうそこに華があるし、活舌も良し、顔も大きく表情も豊か、そしてあのパッションていうんですか?んー、草薙くんは舞台役者として今後が楽しみで目が放せません。


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