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エクニセイカツ

interior

*シャンパンマドラー*

 寛大な睦月は屈託なく笑い、じゃあこれは今年のプレゼント、と言って小さな包みをさしだした。
 緑色のりぼんをほどいて白い包み紙をひらくと、銀色の物体が現れた。百合の花のようなかたちのそれは、泡立て器にしてはきゃしゃすぎる。
「シャンパンマドラーっていうんだ」
 睦月が言った。こまかくてきれいな泡がたつように、シャンパンをかきまぜるものなのだという。
「素敵」
 じゃあ今夜上等のシャンパンを買ってきましょう、と言ったら睦月は首をふった。
「でも、これは上等のシャンパンには必要ないんだよ」
 安物のシャンパンに泡をたてるマドラーというのは、何て美しい贈り物だろう、と思った。

―きらきらひかる―
 目をさますと天気の良い冬日で、果歩はまずシャワーをあびた。リビングの小さなティーテーブルで、いつもとおなじものをぼんやり食べる。バターをたっぷりつけたトースト、果物をどっさり、それに紅茶。紅茶には牛乳をいれ、カフェオレ用のボウルで飲む。

―ホリー・ガーデン―
*カフェオレボウル*

アピルコのカフェオレボウルなのデス

*あざみ色のエナメル*

汚い足晒してスマン

 電車のなかで、私はふいに、足指の手入れをしていないことを思い出した。仕方がないので、電車を降りてから駅ビルに寄って、化粧品屋でエナメルを一つ買う。こっくりと濃いピンク色、あざみの花の色を選んだ。でも、ほんとうのところなに色でもよかったのだ。強い色でさえあれば。
 私は西海岸風のパイ屋の奥の洗面所で、足指の1本づつにそのエナメルを塗った。二度塗りして艶をだし、テーブルに戻ってコーヒーを2杯飲む。コーヒーは、さくらんぼみたいな味がした。

―落下する夕方―
 視線を感じてふりむくと、ユッカエレファンティペスがこっちをじっとみている。青年の木、という奇妙な別名を持つこの鉢植えは、紺くんからの結婚祝だ。大きくてとがった、まっすぐな葉っぱをどっさり繁らせているこの木は、どこか挑戦的な感じがする。
 私は紺くんの木をにらみつけ、ウィスキーを飲みほした。

―きらきらひかる―
*紺くんの木*

*ミニばら*

 電話をきり、私は鉢植えのミニばらをベランダにだした。大きな声ではな歌をうたいながら、赤が3鉢、ピンクが5鉢の鉢植えを、一つづつひなたにならべる。
 ミニばらはすごくかわいらしい花だ。私はならべおわった鉢植えを眺め、一つづつに如雨露で水をやる。

―落下する夕方―

 

*広尾店*

*黒猫軒MENU*