Volkswagen GOLFZ Variant TSI Comfortline 



フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアント(DBA-AUCJZ)。
VWゴルフのワゴン版。
名称の「Variant」は「標準とはちょっと違う」といった意味らしい。
ゴルフのワゴン版には常にこの名称がつけられる。
ゴルフの現行モデルは7代目(ゴルフZ)に突入したが、
ヴァリアントが登場したのは3代目(この時はワゴンと呼んだ)から。
つまりゴルフのワゴンはこれが5代目。

各カー雑誌では軒並み最高評価のゴルフだが、
乗り心地や使い勝手というものは実際にユーザーが乗り、
五感で確かめて初めて分る。

「世界の小型車のベンチマーク」と謳われる、その実力や如何に。
さっそく試乗所見にうつる。


【試乗所見】

(エクステリア)

先代ゴルフYのおおまかなデザインを踏襲している。
Zの特徴はボンネットの上面左右のプレスライン。



エッジが立った プレスライン。
光の当たり具合によって表情が際立つ。
シンプルな造りだが印象強い。


ドアハンドルは大きく、車体面から突出している。

↑サイドウインドウは直線を基調とし、
視界がある程度確保されている。
ゴルフより若干いい程度。

↑リアエクステリアはゴルフとほぼ同じだが、
ナンバープレート位置はゴルフがバンパー表面、ヴァリアントが
リアハッチ表面。真後ろから見て、それがヴァリアントと
ゴルフを見分ける特徴となる。
VWのエンブレムがハッチのハンドルになる点は同じ。
リアビューカメラもエンブレムに装着できるが、今回の
個体にはカメラは未装着。

直線と曲線の使い方のバランスにより、
存在感を持たせているようだ。
フロントの造形とリアの大人しさが若干、アンバランスに
感じるが、実用重視なのだろう。



(インテリア)

↑インパネはごくシンプルな造り。
ヘッドライトのチャンネルはやや上の方に設置されていて、
操作がしやすかった。


↑カップホルダー。
前席ホルダーは4点式振れ止めがついており、
ボトルを入れるとバネの力で適当に押さえ
つける。後席はアームレストについており、
造りはシンプルそのもの。

↑ドアトリムの造りは価格相応だが、ドアの重さは
同クラスのほぼ全ての他車のそれを上回る。
ボルボと張るだろう。

↑二眼メーター。視認性は良く、日本語表記は
明朝体になっている。
文字が小さい。

↑ナビ周りもシンプル。
配置面でレヴォーグと通ずるものがある。

↑ドラポジを取った状態での後席足元。
ゴルフより若干の余裕があるようだ。

↑通常で605 L 、後席シートを倒せば最大で
1,620 Lの容積を確保できるラゲッジルーム。

↑Aピラーの傾斜は若干ドライバー方向へ
寝かせてあり、右前方から接近する物体に対し
視認性はそれほど悪くない。


(エンジン)
1.2 リッター直4ターボ。
アイドリングストップ機能がついており、他の輸入車のような
素っ気無さはあまりなく、レヴォーグほどではないが
停止と再始動がスムーズ。
遮音性能がいいのか、騒音は気にならない。



(走行性能)
初めて乗り込んで公道へ出ると、すんなり加速した。
アクセルペダルがいい意味で軽く、右足をのせるだけで
時速30 〜40 q/h近辺を維持できる。

2千回転を待たずにギアがどんどん上がってゆく。
ミッションのスムーズさはこれまで乗ったどの輸入車よりも
良い。 カー雑誌やネットレビューでよく話題にのぼるDSGだが、
「低速でのギクシャク感」なるものは今回は感じられなかった。


店員さんの話では「ターボラグがある」との事だったが、
発進や再加速に不満はなく、逆に一定の速度以上から
加速がもどかしかった。


高速に乗ると、70 q/h近辺からはアクセルを
踏む力が要る。流れの中をスイスイ走れると言うほど
ではないが、非力さはさほど感じなかった。
終始安定しており、ブレーキの利きも良かった。

最高速度はUK仕様で193q/hとの事。

ナビはビルトインなのでおそらく純正だろうか。
確認はしなかったが、純正であまりいい噂を聞かないものの、
精度は良かった。

回転半径はそこそこ小さいので、駐車場では
扱いやすかったが、車体感覚、特に左前方のコーナーが
つかみにくい。フェンダーコントロールが必要だと思う。




(乗り心地)
前席で運転する分には硬くも軟くもない。
乗り心地はあまり気にならなかった。
ただし最適なドライビング・ポジションを取りにくい。

手動ながらもランバーサポートのような機能がある。

静粛性は優れており、エンジン音はかすかに伝わる程度。
ヘタった道路や高速ではロードノイズをそれなりに
拾うが、不満に感じるほどではなかった。

いつものトンネルの段差舗装は問題なく乗り切った。
大きなカーブでは、やや腰が圧迫される感覚は
あったものの、不快な荷重は無かった。

ワゴン版ゆえ視界はゴルフより悪いかと思ったが、かえって
ヴァリアントのほうが良好な視界を確保している。
良好と言っても5ドアハッチバックの水準としての話だが、
ヴァリアントはゴルフより全長が300 o以上も長いのに、なぜか
リアウインドウが近くに見える。後部ピラーの太さが視覚に
影響しているのかも知れない。



(価格)
相応の価格。


(総評)
使い勝手は非常にいい。近場の足代わりに十分使える。

個人的に高速道路は多用しないので、街中を走り回るだけなら
国産車でいいのがリリースされているから、それらを選べば
いいわけだが、感性では国産車に無いデザインは貴重に思う。
特にボンネットのデザインやワイド&ローな点は魅力的だった。

よく話題に上るDSGや電装系統だが、国産車とは設計思想が
違うため、単純に「故障しやすい」とは言い切れない。
VWはディーラー数なら輸入車の中ではもっとも多いので、ピットインの
多さを覚悟の上で購入するなら、エントリーには妥当だろう。

「世界の小型車のベンチマーク」たりうる理由は、
(ゴルフに乗ったときもそう思ったが)
少しばかりの試乗では結論づけることは難しい。

だが、国産車には無いボンネットと重いドアを持ち、
スムーズなミッションと操舵感や積載量を体験した上で言えば、
合理と感性、どちらで選択してもOKな1台だと思う。












【性能諸元(GolfZ Variant Comfortline)】
全長:4,570 o
全幅:1,800 o
全高:1,485 o
ホイルベース:2,635 o
最低地上高:140 o
トランスミッション:7速AT(DSG)
駆動方式:FF
エンジン:直列4気筒DOHC16バルブICターボ
総排気量:1,197 cc
最高出力:105 PS/4,500 〜5,500 rpm
最大トルク:17.8 kgm/1,400 〜 4,000 rpm
最小回転半径:5.2 m
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
燃料タンク容量:50 リットル
車両重量:1,300 kg
乗車定員数:5 人
価格:269万5,000円


(データは2014年1月発売時)







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