BMW 320d touring(F31)



BMW 320 d ツーリング(LDA-3D20)。

初代3シリーズから数えて6代目。
欧州で売れているディーゼル。
「クリーンディーゼル」と銘打ってはいるが、
別に空気を綺麗にするわけではない。
低回転域から発揮される太いトルクと低燃費が
特長とされている。
欧州ビッグ3の中では「走り」に定評のある
BMWだが、ディーゼル版はどうだろう。
早速試乗所見に移ろう。


【試乗所見】

(エクステリア)
お馴染みのキドニーグリル。
5代目はやや上向き顔だったが、
ヘッドライトとグリルの位置が変わって
重心が下がったような印象を受ける。

ヘッドライトがキドニーグリルとつながって
いるが、これは空力を考慮したデザインらしい。

ボンネットはエンブレム手前で開口部のラインが
直線的に横断している。5代目後期型のように、
キドニーグリルの形状に沿って整形された
手の込んだボンネットと違う。

テールランプはセダンと同じ形状。
リアは特に奇をてらった造りではなく、
シンボルマークでBMWだと分る。


(インテリア)
高級感は無く、必要なスイッチ類をズラリと
パネルに並べたような感じ。
センターパネルは運転席に向けて傾けられており、
シフトレバーの造りとともにコクピットという雰囲気
を醸し出している。個人的には質実剛健という
雰囲気があると思う。

ETCカード挿入口がルームミラーの
裏側にある。入れにくい。

コスト上、手抜きがされがちなカップホルダーだが、
後席アームレスト内臓ホルダーは指で押すと
ニョキッと展開するギミック。

ラゲッジルームは普通の大きさ。
後席は40:20:40の分割可倒式。通常で495 L、
最大で1,500 Lの容量。



(エンジン)
2 L 直列4 気筒DOHCディーゼルターボ。
太いトルクを実感できるのは
スポーツ・モードに入れたとき。

車内にいるときはあまり気にならないが、
車外で聞くとエンジン音はかなりうるさい。

アイドリングストップ機能もついている。
欧州車でよくある性質だが、停止も再始動も
素っ気無い。

前述だが、このディーゼルエンジンはNOx・PMを
発生し、大気へ放出する。つまり「クリーン」ではない。
触媒があるだけ多少はマシ、ということだ。

NOx還元には吸蔵触媒を使う。
尿素水とどちらが優れているのかは分らないが、
余分なタンクを装備せずに済む。

型式はN47D20C 。
5シリーズの523dツーリングにも同じエンジンが
搭載されている。



(走行性能)
始動時はコンフォート・モードになっている。
スムーズに走り出せる・・・と思ったら、初動は
意外にモッサリしていた。
アクセルを離すとギクシャクし、ブレーキを踏めば
つんのめり、信号待ちから発進すればノーズが
持ち上がる。エコ・プロモードに切り替えても、
加速がもどかしくなるだけで大した違いは無い。

スポーツ・モードにすると軽やかに加速する。
車体が軽い感覚を覚えたが、伸びは無い。
頭打ちが早いように思う。
しかし、いったん高速に合流すると、
加速もステアリング応答もスムーズで快適。
路面への吸い付きも良かった。

ステアリングの手ごたえは軽かった。
右左折、追い越しともに車体を水平に保ったまま
スムーズに行える。操舵角に応じて的確に
切り込んでゆく感覚は良い。

ガングリップ型のシフトレバーは少々使いづらく、
なんとなく頼りなく、慣れが必要だと感じた。
マニュアルモードもあるが、8速ATのほうが
自分のシフトチェンジよりスムーズなのであまり
使わなかった。
方向指示レバーのワンタッチレーンチェンジャーの
使い勝手が悪い。手ごたえが軽すぎてタッチの加減に
気を使わなければならない。スバルを見習うべき。


普段、試乗でよく使うトンネルの段差舗装は、
かなりスムーズに乗り切ることができた。
大きなカーブの坂道でも車体が傾かずに
下ることができた。

ブレーキは効くものの、最後の小カックンを
なくすような繊細な制動はできなかった。

視界はおおむね良好で、Aピラーの支柱は
太いものの、いい角度で立っているためか、
プリウスαより右前方は見やすい。

バックする際にドアミラーが自動で下方向を
向き、車体の両脇下部を写すようになっている。
だが、ミラー角はそのままのほうが後方視界を
確保できるので、サイドビューカメラをつけた
ほうがいいと思う。


(乗り心地)
シートについては、乗っていて特に
気になる点が無かった。
硬くも無くヤワくもなく、変な突き上げも無い。
ポジションメモリー機能もついている。

スポーツシートでもないのに、カーブで
臀部の片方への荷重をあまり感じない。
車体自体の据わりがいいのだろうか。

ただし、自分にとってのベストポジションな
シート位置で二眼メーターを見ると、上部が
ステアリングに隠れて見えない。

一般道では車体の挙動はあまり快適とは
言えなかったが、高速では快適だった。

後部座席は狭いというほどではないが、
大柄な大人の人にはやや窮屈に感じるかも
知れない。


(価格)
高速で乗る分には妥当かも知れないが、
一般道も含めたトータル的な印象では、高い。



(総評)
格好いいが癖のあるディーゼルワゴン。

高速道路を、一定の高速を維持してツーリング
する分にはとても良い車。高速を維持しながらの
ハンドリングの軽快さは、並みの国産車では
味わえないものだが、市街地での挙動を
考えれば、よほどディーゼルにこだわる必要が
無い限り、ノーマルな320i と比べてから購入を
決めたほうがいい。

ボディの大きさは日本の国情に合うが、
寒冷地では軽油は凍結しやすい。もしスキーなどへ
行く時はあらかじめ現地入り前の給油を考慮に
入れておくといい。
(寒冷地では2号〜特3号軽油が使われる)



【各部について】

スポーツシートではないが、
大きなカーブでも左右の腰に
荷重はあまり感じなかった。


オーソドックスなインパネまわり。

ドラポジを取った時の後席足元。
狭くもなく広くも無く。

後席アームレスト内臓の
カップホルダー。


後席シートを倒した状態。


フロントドアのエントランスランプ。


フロントドア・トリム。
スピーカー位置が気になる。


これだけ注意書きが添えられていても、
間違えてガソリンを入れてしまうトラブルが
絶えないそうだ。


後方から見た外観。


キドニーグリル。
BMWの代名詞的なデザイン。



【性能諸元(BMW 320 d:LDA-3D20)】
全長:4,625 o
全幅:1,800 o
全高:1,460 o
ホイルベース:2,810 o
最低地上高:140 o
トランスミッション:8速AT
駆動方式:FR
エンジン:直列4気筒DOHC
      ディーゼルターボ
総排気量:1,995 cc
最高出力:184 PS/4,000 rpm
最大トルク:38.7 kgm/1,750 〜 2,750 rpm
最小回転半径:5.4 m
使用燃料:軽油
燃料タンク容量:57 リットル
車両重量:1,620 kg
乗車定員数:5 人
価格:5,000,000 円(2013年8月当時)






クルマのこと

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