TOYOTA PRIUS α
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プリウスα(アルファ)S L selection
型式DAA-ZVW41W。
トヨタが21世紀に間に合わせたハイブリッドカー
「プリウス」の派生型で、 2011年にリリースされた
ステーションワゴン版である「α」。
内燃機関+モーターのハイブリッドエンジンを
搭載する。今回レビューするのは5人乗りだが、
ラインナップには7人乗りミニバンもある。
2014年11月にマイナーチェンジしたが、
形式は同じで基本性能は変わらない。
さっそく試乗所見にうつる。
【試乗所見】
(エクステリア)
3代目プリウスの外観をベースにして、ひとまわり
大きくした感じ。
初代プリウスに比べると、格段に洗練されてきた。
ヘッドライトの形状は木の葉を連想させ、空気抵抗の
少なそうなボディ形状とともに、エコカーっぽさを
体現しているようだ。
バンパー周りからサイド、リアにかけて
高さがあり、乾舷の大きい船を思わせる。
ルーフは中央部が凹んでいる。
これはディーラーの話によれば、空力を考慮した
形状らしい。他の車種でも採用されている形状。
Aピラーはかなり寝かせてあり、それに伴い
フロントウインドウも傾斜が強い。
スモール・オフセット衝突の衝撃を受け止めるには
理にかなっており、ノーマルプリウスよりもズングリ
したボディにスポーティな外観を与えることにも
寄与する。ただし寝かせすぎると死角も増え、視界の
確保にはマイナスになる。
後部ドアはスライド式ではなくヒンジ式。
ミニバンぽさを嫌う人にはいいだろう。
はじめは違和感を覚えたデザインだが、
仕事を手伝ってくれるお礼として、洗車と
コーティングをかけてやるうちに愛着が湧いてきた。
2014年11月に発売されたマイチェン後のアルファより
優しげな風貌。
(インテリア)
プラスチッキーで質素。
「床にシートを乗っけた感」が強く、
コクピットという感じはあまりしない。
二眼メーターは無い。モーター走行が主で
CVTだし無くてもいい、と思い切って廃止
したのだろう。
助手席の前にはグローブボックスに加えて
アッパーボックスもある。
運転席のオーバーヘッドコンソールには
サングラス用収納ボックスが設けられている。
室内はスペースに余裕がある。
後席の足元はウォークスルーで移動に便利。
後席から見て前席アームレスト下部にある、
一見すると灰皿の引き出しのような部分を
あけると、カップホルダーが出てくる。
また、後席足元には通風口のようなものが
あるが、これはエアコンの吹き出し口。
ラゲッジ・ルームは荷室床面が少し高く、
通常モードで535 L、9.5 inゴルフバッグなら4つを
積めるそうだ。後席を倒したフルラゲッジモードでは
1,070 Lの容量。このフルラゲッジモード容量は
同クラスのステーションワゴンとしては非常に少ないが、
通常モードの多さにより実用性はある。
ちなみに7人乗りミニバンだと、後席3列目によって
荷室が圧迫され、通常モードでは200 L、
フルラゲッジモードも1,035 Lと、5人乗りワゴンより
積載容量は少なくなる。
良かった点はエントランスランプがついてること、
および後席のウォークスルー。
悪かった点は二眼メーターが無いこと、
後席の座面がやや狭いこと。
(エンジン)
1.8 L直列4気筒DOHC、および
交流同期電動機(モーター)。
この二つの動力を走行状況により使い分ける。
発進時:モーター
低速走行時;モーター
通常走行時:エンジン+モーターによる補助
全開加速時:エンジン+モーター出力増幅
減速時:モーター(エネルギー回収)
α5人乗りはニッケル水素電池だが、
7人乗りはリチウムイオン電池を使う。
(走行性能)
発進時は音も無く、スムーズに出られた。
この滑り出すような滑らかさは、内燃機関だけを
動力とするクルマではなかなか味わえない。
加速はエコモードだともどかしいが、
パワーモードにすると推進力を得たかのように
一気に加速できる。ゴーカートっぽい。
信号待ちから40〜50 q/h近辺での速度変化の
多い市街地や高速への合流で使えるかも知れないが、
アクセルはすぐ頭打ちになり、坂道でも苦しい。
噴かすと音もうるさい。
右折、左折ともにハンドリングは鈍重で、
車体ごとねじれるように曲がる。
操縦する楽しさは無い。
右前方に対する視界は悪い。傾斜したAピラーが、
斜め前から接近する移動物体を隠してしまい、
死角を多くしている。三角窓も小さすぎる。
後方視界はノーマルプリウスより若干良好だが、
合流時の右後方は見づらい。
ボンネットの形状は車体感覚を掴みづらく、
先行車や障害物との距離を測りかねるケースが
あった。
シフトレバーには「B」というポジションがある。
これは「エンジンブレーキ」のBで、長い下り坂道で
エンブレを多用したい時に使える。
年配の方や、MTから乗り換えた方は注意。
「バック」のBではない。
高速に合流する際はパワーモードにより、
スムーズに入ることができた。まっすぐ
巡航する分にはフラつきもなく問題ないが、
そこからさらに加速しようとしても伸びない。
高速域で路面を捉える感覚も希薄。
ミニバンと同じで、積極的に車線変更や
追い越しをする気にはならなかった。
駐車場での取り回しは、スペースに余裕のある
場所ならいいのだが、隣のクルマとの距離が
狭まる駐車場だとややきつい。
(乗り心地)
室内は静かだが、アクセルを吹かすと煩い。
普通に舗装された平坦な道路を走行する分には
乗り心地は通常のノーマルプリウスよりいい。
ローラーをゴロゴロ曳くような感覚だが、
独特の浮遊感のある加速は面白い。
ただし右左折では踏ん張りが足りない。
舗装のヘタった道路や高速では、「ゴ〜」という
ロードノイズがある。
試乗でよく使うトンネルの段差舗装では
突き上げがそこそこあった。
ショックを吸収しきらないうちに次の段差が
来るので、リアが跳ね回る感触。
荷物をたくさん積んで抑えられるか、それとも
荷物も一緒に跳ねるのかは分らない。
大きなカーブでは車体がかなり傾く。
後席は、足元は広いものの座面がやや小さい。
突き上げはノーマルプリウスより抑えてある。
舵を切るとタイヤが路面を踏みにじるような
感触とともに進路が変わる。これはタイヤの空気圧の
問題ではない。新品のエナセーブに窒素を標準圧で
入れてもこの状態になる。また車線変更のたびに天井が
振られるので常にユッサユッサとボディが揺れる。
これにはかなりストレスを感じた。
(燃費)
プリウス(アルファ)ということもあるので、今回は特別に
燃費の所見も述べておこう。
トヨタ発表のプリウスα(2012年発売時)
環境仕様・燃費性能
10・15モード・・・31.0 q/L
JC08モード・・・26.2 q/L
実燃費との乖離がかなりあるようだ。
10・15モードは靖国通りと甲州街道を想定し、
JC08モードはそれに暖機を加えたモードだ。
いずれの測定モードも実走行でなくシャシダイナモに
乗せて、熟練ドライバーの操作によって短時間のうちに
行われる1回限りのもの。
実際に街へ出てユーザーの蛮用に遭えば、
乖離するのもやむなし。
より実践的な測定方法であるWLTPを採用する
予定があるが、これは国交省の発表によると
大排気量の車には有利で、HVカーや軽には不利な
燃費になるらしい。
燃費投稿サイトとして有名な「e燃費」情報によれば、
プリウスα(ZVW41W)の平均実燃費は19.28 q/L。
これはハイブリッド車全体で29位。
(ZVW40Wは19.82q/Lで27位)
自称日本最大の自動車SNSである「みんカラ」情報に
よれば、19.41 q/Lとなっている。
今回のプリウスαは走行距離約2万5千 q、
トータル燃費はメーター読みで16.5 q/L。
ただし用途は駅までの送迎が主であり、経済走行を
意図して行うことは困難。街中では軒並み燃費は
下がるものであり、健闘しているほうだろう。
別の視点からになるが、カタログ燃費の達成率と
いうものがあり、「e燃費」情報によれば、ハイブリッド車
では
1位:ホンダCR-Z(ZF-1、2010年型)MTタイプ
17.27q/20.6q、83.83%
2位:トヨタクラウン3500cc(GWS-204、2008年型)
11.38q/14.0q、81.28%
3位:ホンダインサイト1300cc(ZE-2、2009年型)
19.39q/24.0q、80.81%
となっている。
このプリウスαはどうだろうか。
辛いほうの「e燃費」の平均実燃費19.28 q/Lを用いると、
19.28km/26.2km=73.59%
となる。
従ってカタログ燃費のおよそ7掛け、と考えることができる。
(価格)
往年のマークUクオリスが240 万だったことを
考えれば、「3ナンバーのステーションワゴン」という
カテゴリーとしては妥当な価格。
ただし、燃費の良さで元が取れるから割安、と
考える人は注意が必要だ。
営業とか通勤で頻繁に乗るユーザーでもない限り、
燃費で元を取るのは至難の業と言える。
(総評)
燃費のいい家電的ステーションワゴン。
文字通り、その航続距離と利便性を活かして
日常の送迎や商用などに幅広く使える1台。
ハンドリング、乗り心地、パワーについて
積極的に勧められる要素は無いが、
消費経済のけん引役としては主役級であり、
ハイブリッドカーの代名詞ともいえるブランドを
構築した点は大いに評価する。
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メーター類はこれだけ。
シフトレバーにPは無く、ボタン式。
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荷室はやや床高。
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後席はウォークスルー。
ただし座面が狭い。
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後席カップホルダー。
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フロントドアにはエントランスランプ。
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走行モード切替スイッチは
前席アームレスト部についている。
助手席⇔運転席間の移動には苦しい。
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リアウィンドウは一見大きいが、可視部分は
狭い。全高は1,575 oで、立体駐車場によっては
入庫できない所もある。
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デザインは株主総会でも突き上げを食らう課題
らしいが、3代目は比較的洗練されたと感じる。
美的とは言いがたいが、ひと目で「プリウスだ」
と分るデザインは貴重だろう。
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視認性の悪いAピラーと三角窓。
斜め前方から接近してくる物体に対して
死角が多い造りになっている。
【性能諸元(PRIUS α:DAA-ZVW41W)】
全長:4,615 o
全幅:1,775 o
全高:1,575 o
ホイルベース:2,780 o
最低地上高:145 o
トランスミッション:CVT
駆動方式:FF
エンジン:直列4 気筒DOHC
+交流同期電動機(モーター)
総排気量:1,797 cc
最高出力:99 PS/5,200 rpm
最大トルク:14.5 kgm/4,000 rpm
モーター最高出力:82 PS
モーター最大トルク:21.1 kgm
システム全力:136 PS
最小回転半径:5.5 m
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:45 リットル
車両重量:1,450 kg
乗車定員数:5 人
価格:2,350,000 円(2011年5月当時)
クルマのこと
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