MINI COOPER(F55)



モデルコードF 55(型式DBA-XS15)。


搭乗者の利便性を考慮して
再設計されたのがこの5ドア。
「ミニ」という名に反して3ナンバー。

さっそく試乗所見にうつる。


【試乗所見】

(エクステリア)
あの軽自動車よりも小さかったBMC時代より
かなり大柄になった。
車体はデミオ、フィットやアクアとほぼ同じ大きさ。

後部座席にもドアを設けてある。
正面と斜め前から見れば違和感は無いが、
横から見ると3ドアより間延びしている印象。
古風かつ個性的なデザインは健在。
丸いヘッドライトにMk-Uグリル。
クロムメッキパーツの効果的な取り合わせで、
クラシック・ミニの雰囲気を充分に感じる。



(インテリア)
サークルを基調とした個性的で洒落た感じの内装。
メーターやエアコン吹き出し口、シフトレバー周りから
ドアノブ、スピーカー、ステアリングスイッチなどが
丸い形状のデザインで統一されている。
明らかに他社の一般的なクルマとは雰囲気が異なる。
エンジンスタートボタンや、オプションのライトパッケージ
のリーディングライトスイッチはモダンなデザインの
トグルスイッチ。
ナビモニターもサークル形状。

光の使い方も上手い。
試乗した個体はエキサイトメントパッケージも
ついており、夜間はドアノブやドアトリムの
間接照明が面白い。
ドアを開けると足元を照らすカーテシライト
(ドアエントランスライト)もついている。この
カーテシライトはノーマルでただの光だが、
純正プロジェクターを付ければ、地面にMINIの
ロゴマークやユニオンジャックなどを投影する
ことができる。

先代まで速度計はセンターナビ位置にあったが、
運転席正面に移された。合理的だと思う。

スペースは思ったより余裕がある。
後部座席はさすがに大人3人では無理な狭隘さ
だが、膝元の狭さはあまり感じない。
荷室は予想した以上に広い。ちょっとした大きな
買い物だと手狭かも知れないが、後部シートは
可倒式で、オプションのコンパートメントパッケージ
をつければ最大941 リットルのフラットな荷室になる。

こうなるともはやミニではない。


良かった点は個性的なデザインと光の使い方。
悪かった点は、アームレストを下ろした状態では
MINIコントローラーが操作しづらかったこと。


(エンジン)
直列3気筒1.5 リッターDOHC12バルブターボ。
スタートすると「ブロロロローン」という独特な
エンジンノイズが生じる。
アイドリングストップ機能がついている。
ストップから再始動できなくなるケースが稀に
あるらしい。この個体は問題なかった。
停止すると容赦なくバルルン!と事切れる。

パワーは車体の割りに大きく、低回転域から
十分なトルクを発する。



(走行性能)
発進時はストレスなく加速する。
シフトレバーの根元の輪っかを操作すると
走行モードが変わる。
スポーツ:ゴーカートっぽい?加速
ミッド:これでもまずまずの加速
グリーン:加速はもどかしいが経済的

街中では車の流れに沿っても、ダッシュが効くので
車間空隙を縫いながら走ることができた。
カーブ、右左折ともに車体はあまり傾かず曲がる。

よく走り、よく曲がる車だが、
最小回転半径は車体の割りにべらぼうに大きい。
ミニという名前だからといって、小回りが利くだろうと
期待して買ったら駐車場で取り回しに苦労した、
ということも起こり得ることを注意喚起しておきたい。

高速道路への合流でも加速が利くので入りやすい。
車体は意外に安定する。と言っても首都高速なので
100q/hを出したわけではない。むしろこの操舵感では
疲労が溜まるかも知れない。
長距離のツーリングには
適さない車体だと感じた。


(乗り心地)
製造会社のBMWは「カートを意識した」
と言っている。確かにゴーカートっぽいのだろうが、
この感覚は、国産のふわふわセダンや乗り心地の
良い車に慣れた人には居心地悪く感じられるかも
知れない。

個人的にいつも試乗で使うトンネルの段差舗装を
走ると、突き上げはそこそこ発生する。
ロードノイズもそれなりに拾う。

ドアやハッチの開閉音は、重い鉄板を思わせるような
レトロな重厚感を覚える。
他の欧州車はドアの開閉音が「バフ!」という
くぐもった重厚感のものが多いが、このミニは
あえて鉄板を思わせる音を意図して出しているのかも
知れない。

視界は、ピラーが太いので決して良好ではないが
VWゴルフやオーリスに比べれば見やすい。



(価格)
思い切り趣味性に振ったクルマなので、
高い安いの問題ではないだろう。
ただし、街中からツーリングまでこなす純然たるクルマ
としては、要求される性能に見合ったものではない。



(総評)
お洒落だがクルマとしての性能を落としたクルマ。
5ドアにしたことにより、確かに搭乗の際の利便性は
旧型に比べると格段に良くなった。ただし
サルーンの乗り心地を求める人には勧められないので、
気分、雰囲気で乗ろうと考えている人は、まず
試乗でどういうものか試してから買うといいだろう。

旧型ミニの雰囲気を出しつつ、安全水準ギリギリのところで
造らざるを得ないクルマだが、趣味性に振ったクルマは
貴重だ。これから先も遺して欲しいクルマのひとつ。



テールランプはLED。
テールランプカバーのクロムメッキや
車体を一周するメッキフレームが
レトロ感を醸し出す。


素材自体に高級感は感じられないが、
ライトアップやデザインのおかげで
内装は洒落た雰囲気を感じさせる。
速度計は時速260 kmまで数字が
あるが、実際は200 km/hを少し超える
程度らしい。


元の車内は暗いため、ライトパッケージは
つけておいたほうがいいかも知れない。


ナビ画面のサークルもライトアップ。

エキサイトメントパッケージの
ドアハンドル用ライトアップのカラーバリエーション。

ストレージコンパートメントパッケージの
フロアカバー。写真では上段にセットしてあり、
後席背もたれを倒すと、かなりフラットに近い
スペースが生まれる。LED照明で荷室も明るく、
ちょっとした買い物なら十分だろう。





【性能諸元(F 55:クーパー5ドア)】
全長:4,000 o
全幅:1,725 o
全高:1,445 o
ホイルベース:2,565 o
最低地上高:― o
トランスミッション:6 速AT
駆動方式:FF
エンジン:直列3気筒DOHC12バルブターボ
総排気量:1,498 cc
最高出力:136 PS/4,400 rpm
最大トルク:22.4 kgm/1,250 〜 4,300 rpm
最小回転半径:5.6 m
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
燃料タンク容量:40 リットル
車両重量:1,260 kg
乗車定員数:5 人
価格:2980,000 円(2014年10月当時)














クルマのこと
INDEX