Mercedes-Benz A180
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メルセデス・ベンツA 180(DBA-176042)。
同社のラインナップの中ではSmartの次に低価格。
「300万でベンツが買えるエントリーモデル」、
というのがアピールポイントだが、この300万という
価格に収まるのはオプションのほとんどを諦めるか、
ディーラーが豪気に値引きしてくれた場合だろう。
A 180の「A」は、メルセデスベンツいわく
「アタックのA」との事。
攻撃的な理念と現実との関係やいかに。
試乗所見に移る。
【試乗所見】
(エクステリア)
デザインは旧Aタイプの悪評を覆す、風格を凝縮
したような存在感を発揮している。Cクラス、CLA
クラスのヘッドライト周りと似ており、これなら大抵の
エントリー希望者の所有欲を満たすと思われる。
ボンネットは、万一歩行者をはねてしまっても、
歩行者へのダメージが最小限度で済むように設計
されているらしい。
コンパクトカーにしてはワイドローでマッチョ。
リアから見たスタイルは、フロントに比べるとあまり
威圧感はなく、国産でも見かける後姿という印象。
エンブレムが無かったらベンツとは判らないかも
知れない。斜め後方から見ると、ウインドウのカーブで
ベンツだと分かる。
(インテリア)
樹脂を多用しており、価格相応の質感。
Cセグとしては上質な雰囲気だと思う。
ジェットエンジンをモチーフにしたエアコンの吹き出し
口と曲線を多用したデザイン、一部カーボン調の
ステアリングがスポーティさを醸し出している。
乗ってみて良かった点は、アナログ式のテンキーが
ついていることと、シートベルト装着時にベルトの
たわみが自動でシュっと締まる機能。
悪かった点は収納スペースが不十分な点。
(エンジン)
直4/1.6リッターのダウンサイジングターボ。
アイドリングストップ機能もついているが、アイドリング
停止の仕方は唐突でそっけなく、あまり気もちよくない。
主観だがエンジン音自体があまり良くない。
巡航時は不足を感じないが、発進時や加速時は
パワー不足を感じる。
(走行性能)
初めて乗り込んで公道へ出ようとアクセルを踏んだが、
なかなか前へ進まない。気持ちに加速がついて来ない。
このモッサリ感で後続のドライバーさんが痺れを切らさ
ないか心配になる。
Sモードにしても回転数が3000を超えてからシフト
チェンジするのでもどかしく、エンジンノイズばかり
上がる。Eモードも走らない。
M(マニュアル)モードはパドルシフトが苦手なので
あまり使わなかったが、うまく使えればSモードや
Eモードよりスムーズだろう。
ベタ踏みすればプリウスαと互角の加速性能は備えて
いるはず(巷の数値では0-100kmをともに9.2秒)。
もっとも、ダッシュを競うような車ではないと思う。
一般道では加減速に気を使った。ミッションは7速DCT。
アクセルを踏み込んでもあまり反応が無く、グっと
踏み込んで後から加速が来た、と思ったらもう信号が
黄色、という場合が多い。街中や渋滞走行には
CVTのほうがスムーズでいいと思う。
不安を抱えたまま首都高に乗ってみた。
高速道路の合流車線で加速力の不足を感じた。
だがスピードが乗ってくると腰が据わり、頼もしさを
覚えた。残念ながら長時間の巡航はできなかったが、
おそらくこの高速安定性がこの車の真価なのだろう。
もっと速度を出したかったが、遵法精神に則って
断念した。パワステの操舵感はやや軽め。
(乗り心地)
乗り心地は良いが硬め。路面の凹凸情報をよく拾う。
ゴーカートっぽさのあるミニクーパーを重たくした感じ。
エンジンノイズは入るが外界からの遮音性は高い。
少々の段差でも車体がカタマリとなって揺れる。
段差舗装はレヴォーグより突き上げが少なく乗り切れる。
カーブや右左折は踏ん張りが利いて揺れにくい。
ブレーキは大味。力の抜き加減による静かな制動を
試してみたが、最後にカックンとなる。
後方視界は5ドアハッチバックなので期待はしなかったが、
オーリスの絶望的なまでの悪さよりはマシ。VWゴルフより
若干いいかも知れない。
(価格)
メルセデス購買層の発掘を目論んだ戦略として見れば
妥当な価格だと思う。
装備の多くはセットオプションとなっており、それらを
充実させる場合はそれなりの出費が必要。
(総評)
非力だが高速向けの5ドアハッチバック。
アタックを表す「A」とのことらしいが、別に攻撃性を
意味するものとせず、単純にメルセデスの入門車としての
序列をあらわす「A」と考えればいいのでは。
ボディの大きさは日本の国情にマッチする。
性能的に特筆できるものは無いが、
今回試乗したのは2013年型のA 180であり、現在は
加速の応答性を改善させたマイナーチェンジモデルが
発売されている。
購入の際は乗り心地と加速力の確認をお勧めする。
【各部について】
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運転席は意外にプラスチッキーで親しみやすい。
曲線の使い方がうまく、チープな印象は受けない。
ヘッドライトの操作は右下のチャンネルをカチャカチャ
まわして選択する、欧州車ではお馴染みの方式。
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シフトレバーはコラムタイプとなっており、ステアリングの
右側にある。先端にモード切替スイッチがついている。
方向指示レバーは左側で、ワイパースイッチも兼ねて
いる。この画像では見えないが、左の下部にクルーズ
コントロールレバーがある。
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ジェットエンジンをモチーフにデザインされた、
○×スタイルのエアコン吹き出し口。
グローブボックスはすごく狭い。車検証を入れる
前提でデザインされていないのだろうか?
リアビューモニターと7インチモニター、ハンズフリー
通話機能は標準装備。ナビ画面は小さめだが
マイチェンした新型はやや大きい8インチ画面に
なったそうだ。
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シートベルトを装着すると、たるみ部分がシュルっと
自動で締まる。
仕掛けは面白いが、もう少し加速が良ければ。
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後部座席は足元に十分な余裕がある。
この前席はドライビング・ポジションを取った上での位置。
単独運転のため、後部シートの走行中の乗り心地は
検証できなかった。
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後席は分割可倒式。通常時341L、
フルラゲッジモードで1,157Lの容量。
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発光式スカッフプレート。今でこそ珍しくなくなった演出
だが、奇をてらわない字体は好感が持てる。
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スポット照明の使い方はいいと思う。
総じて欧州車は「光」の演出がうまい。
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