シューティングスター☆







 俺は高1の夏休み前に引っ越してこの町にやってきた。正直前の学校がダチも多くてよかったんだけど、親父の仕事の都合ってやつだから仕方ない。
急な転勤だったんで、近くの男子校に通うことにした。学力は前の学校より下がるけど、俺が一番やりたいバレーボールもあることだし。まぁいっか、ってことで。
 そういうわけで、担任の先生と面談後、入部届を出す前にいろんな部活を覗いてみることにした。バレー部の帰りに、担任がこう言ってたのを思い出した。
「お前がバレー部に入ったらうちはバスケと並んで強豪校になるなぁ〜」
そうだ、バスケも見に行こう。一応。強豪校って聞いてどんな部なのか興味が湧いた。教室から随分離れた建物の一つがバスケ部が使ってる体育館。人数が多くてコートが使えないので特別に建てたそうだ。
「どんだけ人数がいるんだよ」
そう思いながら、重たいドアを開いたら、熱気とともに一斉に視線がこっちに来た。
「おっ、○○校のエースアタッカーじゃん」
「なんでバスケ?」
部員はあっちこっちで俺のことを言い合った。や、見学ですから。ってゆーか聞こえてるんですけど!
そのうち、先輩の1人が近づいてきた。
「見学?」
「はい。バレー部に入部する前にバスケ部も拝んでおこうかと思いまして」
「元エースアタッカーに拝まれるなんて光栄だね。俺、副部長の白井。よろしく」
「あ、よろしくっす」
「見学するならこっちで見て」
コートの端に連れて行かれ部員たちの後ろから練習を眺めていると、部長らしき先輩がこちらにやってきた。
「そこでじっとしてんのも辛いだろ?体動かして行けよ」
そう言うと手元のボールを投げて来た。
「や、もうそろそろバレー部に戻るんで」
ボールを投げ返した。
「ま、ちょっと遊ぶくらいなんてことないだろ?おーいみんな!」
みんな練習をやめて一斉にこっちを見てくる。
ちっ、まずったな。はやく出ればよかった。
「ちょっと俺、新入りとミニゲームやるからゴール使うぜ」
コートにボールを打ち付けながら向き直った。
「俺からボール取ってゴールするだけ。3回のうち1回取れたらでお前の勝ちってどうだ?勝ったら入部してからの大会で1試合レギュラーやるよ」
「ええ〜〜〜!!!キャップ〜〜〜〜!!」
後輩たちの叫び声が体育館にこだまする。
「え、いっすよ。俺、みんなに敵視されそうだし」
「美味しい話だろ?そのままバレー部に入ったらエースは確実だろうけど、張り合いないぜ」
それは俺もちょっとは考えていたところだ。前の学校みたいに強豪校でもないバレー部でだらだらと続けるのはどうかと思ってた。
「ぜってー無理。バレーやってたからって面田先輩から1回も取れねーよ!」
みんな一斉にその声の主を見た。どうやら1年のようだ。ってことは同い年。なんだ、こいつ。
「相沢!!」
軽く副部長が牽制した。
「みんな、口出し無用だぞー!」
相沢と呼ばれたやつはムクれて口をつぐんでいた。
「ミニゲームだって、相沢。熱くなるな」
「え・・・でも。」
「悪ぃな、こいつ俺のファンだからさ!」
周りの奴らは爆笑してた。けど、俺は売られたケンカが頭から離れず、そいつに向かって静かに吠えた。
「お前、今の言葉思いっきり後悔させてやる」

それからは無我夢中でよく覚えてない。1本目はやっぱりついて行けずに先取された。2回目もあっさりやられてしまった。あとは3回目。何も考えず怒りに任せて速攻からダンクできた。どうやってボールを奪ったのかもう覚えてねぇ。
「と、取れた・・・すげー!!」
地響きみたいな声が体育館の中をコールする。
「俺は本城美流だ。これからお前のレギュラー潰してやる。・・・部長、俺入部届け出してきますんで」
俺は睨みつける相沢に捨て台詞を吐いた後、部長に挨拶するとその場を去った。




小説TOPへ | 2へ

2008.8.14
Gekkabijin