DEVOUR GAME





ある夜、彼は気分が悪くなって目を覚ました。辺りは荷物ばかりだった。
ドアの隙間から漏れてくる光は乏しく、外がどういう状況かは分からなかったが、 時化で揺れている、ということだけは分かった。
渡航する金がないわけではない。実は、罪を犯して面が割れていた。
現地での生活はすぐにでも始められるように手配しておいた。
あとは、自分が行くだけだ・・・。

ドアの外で水夫がどなっているのが聞こえてきた。
「だから言っただろう!!出港する前に荷物をちゃんと見とけよって!!」
「俺だってそのつもりだったんだ!お前が急に他のこと頼むからこういうことになるんだ!!」
「じゃあ、今見て来い!!」
「くそっ」
会話はそこで途切れた。しばらくたつと、また先ほどの水夫がやって来た。
「どうして俺がこんな目にあわなきゃならねえんだ、ばかやろう」
ドアのカギを開けようとしていた。時化で船が左右に大揺れするので、上手くいかないらしい。
カミュは身構えた。今まで何日も見に来なかったくせに、よりによって大時化の日に来るなんて。
水夫は雨と海水で手が濡れて上手くカギを外せないらしくかなり怒っていた。
「なんで、倉庫が甲板から入らなきゃならねえんだよ」
こんなことなら、もっと船底にある貨物倉庫にすれば良かったと、舌打ちするがもう遅かった。
「ちっ、どうせこういうところに入ってんだ、ジャガイモかたまねぎが転がってるだけだろッ」
悪態を吐くうちに、カギが外れた。水夫はドアを引いた。滑りそうになりながら中に入った瞬間、 ドアが物凄く大きな音を立てて閉まった。水夫は階段を降りて中の様子を伺いに来た。
電気が使えないため、懐中電灯を照らしながらやってくる。懐中電灯は最初の荷物を照らし出した。
「なんだ、こりゃ?」
水夫の予想は大いに外れていた。ここは3等客室用の倉庫だった。
「ヤツラ、大したもん持ってねえが、上手く行けば相当の暇つぶしになるぜ」
水夫はガハハと下品に笑った。
そしてその遥か奥では水夫の一挙一動を頑に見つめる侵入者がいた。



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2000.5.27
月下