農林水産省ケナフ・プロジェクト


予算額:31,525(千円) →平成11年度行政対応特別研究の採択研究計画


正式名称:行政対応特別研究「新規転作作物ケナフの栽培・収穫・調整技術等の開発」

期間:1999年より2001年(3年間)

研究目的:
 ケナフを水田転作作物の一つとして定着させるための、繊維の生産量・質に対応した品種の選定や栽培技術、繊維の収穫・調整技術および ケナフのもつ環境浄化機能を解明し、それを積極的に利活用する技術などを 開発して、低コスト生産体系を確立すること。

研究内容:
 1)ケナフの栽培技術の確立
 2)ケナフの機械収穫・調整技術の確立
 3)ケナフの環境浄化機能の解明

所轄: 農業研究センター耕地利用部作付体系研究室


上記の内容は、作付体系研究室に直接問い合わせて、担当の方に貰った資料を元にしています。 今回の研究は、転換作物としてのケナフの可能性を調べて欲しい、という行政サイドからの要望が発端だということです。担当の方に、幾つか質問しました。一問一答は、以下の通り(質問は、1999年9月現在)

 Q:現在の進行状況は。
 A:5、6月にケナフの種まきをして、現在育成段階の途中です。

 Q:ケナフには、連作障害があるともいわれていますが、そのあたりの研究予定は。
 A:転換作物としての利用を考えているので、(連作する性質のものではないから)連作障害の研究予定はない。

 Q:ケナフが在来植物に与える影響についてどう思いますか。また、その影響について調べる予定は。
 A:今回の研究目的を一言でいうと、ケナフが工業製品として、コストに合うか、合わないかを調べることです。従って、畑の中以外のことは、研究する予定はありません。

 でもね、新しい農地を拓く場合は,それまで存在した自然植生を犠牲にすることになるんですよ。(注1)あるいは、転換田から種子が飛散して周辺の自然植生にダメージを与えるかも知れません。(注2)それなのに、自然植生についての影響は、評価の対象外なんですか。

 そもそも農林水産省は、「有用性」だけを優先して、栽培作物をどんどん移入してきたんですからね。その結果、
日本の低地の草原は帰化植物だらけですよ。(注3)殆ど全部、栽培目的で人間が持ち込んで、野生化したんです。ケナフがこの帰化植物の列に加わった時、皆さんは「トキはいなくなったけど、日本の生物が新たに1種増えた。良かった良かった。」と喜べますか?

 
ちなみに、プロジェクトの結果は、2002年4月には報告書としてまとめられるそうです。一般にも公表されるということなので、入手方法がわかれば掲載します。


(注1)農林水産省の研究が転換作物としての研究の範囲であっても、新規導入作物として利用する自治体があるかも知れません。「指針を与える側」としては、そういった可能性も検討するべきではないでしょうか。

(注2)ケナフが日本の生態系を破壊する?参照。

(注3)主に、ネズミムギ・カモガヤ・ヒロハウシノケグサ・シロツメクサ等の牧草です。これらは、河川敷の堤防や、道ばたに普通にみられます。日本の帰化生物の現状についてもっと知りたい方には、「日本の帰化生物」(鷲谷いづみ・森本信生、保育社)がオススメです。