かえるの絵本
第5話 ネコと盗賊
スポーティな、ショートカットの女の子。
アンジェがコロナの街にやってきたとき、ルーは街にはいなかった。
・・・けれど。
今日のルーは、何かが違う。
「・・・ルー?」
アンジェが声をかけると、彼女は、焦りまじりの声を返した。
「お願い、ルビィを一緒に捜して!」
「ルビィ」とは、ネコの名前だ。
ルーと知り合ってすぐに、アンジェは、ルーの買い物に付き合ったことがあった。
「ルビィがね、家を出たまま帰ってこないのよ。いつもは、ちゃーんと帰ってくるのに・・・。
それは大変だ。・・・アンジェは思った。一緒に捜そうと申し出たのは、言うまでもない。
(うわぁ・・・・・・)
「さあ、アンジェ。遠慮しないで、入って入って!」
「あたしね、半年前までは、スラムの酒場に住んでいたんだよ」
お茶の用意をしながら、背中を向けてルーは言う。そして、手にしたカップをテーブルに
スラムの酒場――。
「でも半年前、ルビィを拾ってきた頃から、パパとうまくいかなくなって・・・。パパってば、
伏し目がちなルーに、アンジェは多少の戸惑いを感じた。こういうときは、何と言えばい
「ママがいれば、パパも、あたしのこと追い出したりしなかったかな・・・・・・?」
しばしの、無言。
目的地は、「盗賊ギルド」。
「やあ、ルーちゃん。どうだい、ルビィは見つかったかい?」
薄暗い建物の中、長い階段を下りた先に、「盗賊ギルド」はある。珍しい宝石やら武器や
「ううん、まだ見つからないの。もうずっと、家に帰ってこないし、こんなに捜してるのに、
もう何度も繰り返したであろう会話を口に、ルーは答えた。それから、呟くように続ける。
ええっ・・・と、アンジェは驚愕した。
しかし、その心配はすぐに解消されることとなる。「ルーちゃん、それは違うよ」アッシュが
「マノンさんは・・・・・・あの人、ネコアレルギーなんだよ。自分のために、ルビィを捨てろ
今度は違った意味で、「えっ!?」という顔をする二人。「あたしのこと、キライじゃなかっ
「マノンさんも、ヘンなところで意地を張る人だからなあ」
確かに・・・。そう思いながら、アンジェも少し笑った。そんな和やかな雰囲気になったとこ
「ところでルーちゃん。裏の排水溝は、まだ捜してないんじゃないか? あの辺で、ネコの
「・・・・・・! そういえば、まだそこは捜してないわ」ルーが、ハッとしたように答える。が、
「まあまあ、あわてなさんなって」余裕をこめて、答えるアッシュ。「ほら、ルーちゃん、オレ
「・・・得意な魔法?・・・・・・あ〜!!」
ポンっと手をたたいて納得したルーを見ると、アッシュの助言は最終段階に入った。
「排水溝の近くに土管があるから、アレをつかえば、そこから入れるぜ」
うんうんうん・・・と頷きながら、ルーの考えはまとまったようである。
「アンジェ、行こう!」
「あっ・・・う、うん!」
盗賊どうしのやりとりについていけないアンジェは、一生懸命、話の筋を追っていた。
「この土管のことかなあ、アッシュの言ってた入口って?」
空き地の壁からは、1本の管が顔を出している。「確かに、この大きさじゃ、普通では入
アンジェも、土管をのぞき込む。手のひらですっぽり覆えてしまうくらいの穴である。
「ルー? さっき言ってた、魔法って・・・?」
振り向きながら訊くアンジェ。すると、ルーはニヤリと笑って、人差し指をまっすぐこちらに
――ミニミニ!!
・・・・・・!? ぐんぐんぐん、と大きくなる。アンジェの目に映るものが、一気に巨大化して
瞬間、アンジェの前に、同じ大きさのルーが現れる。そう、二人の身体が、縮んだのであ
「えへへ、ビックリした? この『ミニミニ』はね、あたしたち盗賊にとって、必須の魔法っ
大丈夫、とアンジェは答えた。確かに、身体が小さくなっていく瞬間は、軽いめまいが襲
二人は、土管の中へと潜り込んだ。管を抜けると、そこには広い世界が広がっている。
「さあ、ルビィを捜すわよ! 気合い入れてこうね、アンジェ!」
冷たい空気の下水道内を、二人は進んでいった。生活排水の流れ出る場所である。ど
「!? どうしたの、ルー?」
「・・・お宝のニオイがする・・・!」
ニオイ・・・?と息を吸ったアンジェの鼻に、下水の匂いが思いっきり入り込んだ。慌てて
「コレだぁ〜!!」
ガシャーンと、道具類が崩れる。そのなかに立つルーの右手には、1本のビン・・・らしき
「・・・・・・なにこれ?」あらためて、自分の手にあるものを見定める盗賊ルー。どうやら、
「えっと・・・『ネコダイジョーブ』? ・・・・・・ネコアレルギーに効く薬だって!」
ルーの顔が、パァッと明るくなる。ことの次第を理解して、アンジェも一緒に喜んだ。
偶然の産物か。まさに、「お宝発見」だったのである。
――そのとき。
もう音はたたないはずのガラクタが、小さな音をたてた。アンジェとルーが目を向けると、
「かえちゃん!?」
ひっくり返った鍋の上にいたのは、1匹のかえる・・・そう、アンジェのルームメイト。
「・・・あれ、アンジェ?」重なった道具類の真上には、細い配水管が通っていた。かえる
「ルビィを・・・ルーのうちのネコをさがして・・・・・・」
「ネコッ!?」アンジェが言い終わらないうちに、かえるは恐ろしいものを見たかのように
「やっぱり」って・・・? アンジェは再び聞き返した。すると、かえるはこう言った。
「さっき外を歩いていたら、街のボスネコに追いかけられたんだケロ。それで、この配水
今にも泣きそうな声で、かえるは続ける。「中からも、ネコの声が聞こえるんだケロー!」
・・・ということは・・・!
「それが、ルビィかもしれない! ねっ、ルー!!」
有力な情報を得て、意気揚々にアンジェは振り向いた。だが。
「・・・アンジェ?」ルーは、けげんな顔でこちらを見ていた。「もしかして、かえると話を?」
ケロケロと、声をたてるかえる。それに向かって、独り言のように会話している女の子。
「あははっ、良いね。便利じゃん!」
――えっ?
思ってもみなかったルーの言葉に、アンジェは目を丸くした。それにかまわずニコリと笑
「この中に、ルビィがいるのね?」排水溝の先をまっすぐに見つめ、ルーのまなざしが強
それから、二人は走った。
「ルビィー!ルビィー!」
――にゃーん――。
それはまさしく、ネコの鳴き声。数え切れないほど繰り返されたルーの呼びかけに、とう
「ルビィ!」
白い毛並みが、下水ですっかり汚れてしまってはいるが・・・捜し求めた本人(猫)に、間
それを見て、アンジェも微笑みながら近付いていく。
「よかったね。ルビィ、見つかって」
「うん!・・・サンキュ、アンジェ! ルビィは無事に見つけられたし、アレルギーを治す薬
ルーの瞳は、やっぱり少し潤んでいた。
「・・・ねえ、アンジェ、また一緒に冒険したいね。おもしろい話があったら、あたしも誘って
「たぶん・・・パパの酒場にいるからさ」
翌日。
スラムの酒場を訪れたアンジェを、輝く笑顔が迎え入れた。
「いらっしゃーい! あっ、アンジェ!!」
テキパキと料理を運ぶその後ろでは、店主のマノンが、真っ白なネコにミルクをあげてい
のちにルーは、アンジェに、こう言うのである。
・・・あたし、アンジェみたいな気の合う友だちができて、本当にうれしいんだ・・・。
その言葉は、きっと真実。 |
ハイ! というわけで、1周目、ルーの絵本は出来ませんでした〜。これぞ「プレイリポート小説」の真髄ってか!(笑)
でもね。その後、2周目からは絵本が出来るように、ルーの家→スラムの酒場というのもやってみましたけどね・・・
私、こっち(盗賊ギルドに行くほう)の展開のほうが、好きなんですよ。酒場に行っちゃうと、どうしてもルーが子供っぽくなって
しまってるような気がして・・・。もう19歳なんだから、パパパパ連発しちゃダメよ、みたいな。(大きなお世話だ)
それはそうと、「3人パーティのもう一人はどうした?」という疑問をお持ちでしょう、そこの貴方。
今回は、敵がいない、という設定にして、二人で捜しに行ったということにしました。いやぁ、勝手ですねぇ。横暴ですねぇ。
(だって、街の排水溝に行くのに、薬買って、仲間を揃えて・・っての大げさじゃん(爆))
このクエスト、誰つれていっても、どうせしゃべらないしね。(だからって、実際のゲームを二人で行くのは危険です(笑))
次回、第6話「First encounter」。 邦題(?)「最初の遭遇」。
遭遇・・・誰と? 何と? イベント名は、そう・・・牛泥棒をつかまえて!
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