かえるの絵本
第3話 潜在する力
目の前には、3匹のコボルト。人狼型のモンスターだ。
コロナの街の行政地区にある、「政務室」にいる、「ユリア」という人物に指輪を届けるよう
「それ、すごく貴重な物だからな。絶対になくさないでくれよ!」
マスターの念押しも甦り、今度は指輪を探して街をさまよう。人々の証言情報も得て、そう
おかげで、指輪は見つかった。ただ、モンスターたちの足下に・・・であったが。
「きっと、ゆびわを取り返しに来たコボ! やっつけるコボ!」
ああ、やっぱり・・・・・・。
そのとき。
「お待ちなさい!」
透き通るようなその声の主は、亜麻色の衣に身を包んだ、長い黒髪の青年であった。
「私はミーユ。私の知り合いに手をかけるなど、許しませんよ」
そういって、吟遊詩人ミーユは、その優美な風貌からは想像もつかないような、見事な剣
「やりましたね、アンジェ」
「アンジェ、自分の力は弱いうちは、ひとりで冒険には行かずに、仲間を誘っていった方
・・・・・・ズキンッと、胸に突き刺さる。
それとも、それが私の「弱さ」なのか・・・?
土とホコリで汚れてしまった指輪を拾い、アンジェはその場をあとにした。
しかし、部屋に入った途端の、大きな溜め息だけは、隠しようがないのだった。
「アンジェ、どうしたケロ? 指輪はちゃんと届けられたのに、元気ないケロね?」
・・・・・・・・・。
かえるには「名前」という概念がないのを、アンジェは身をもって知っていたが、それでも
「・・・かえちゃんや、ミーユさん、他の誰にも、きっと笑われてしまうと思うけど・・・でも・・・
!!
アンジェは、腰につけていた武器を手に取った。
「悔しさ」という感情。
翌朝。
「よう、アンジェ。どっか行くのか?」
「・・・うん。ちょっと鍛冶屋に・・・」
悔しさを和らげるために、新しい武器を買おう!
それを聞いたアルターは、「よっしゃ、そういうことなら付き合ってやるぜ!」と、いきなり
「いらっしゃい・・・ん? なんだ、アルターか」
「アンジェだよ。コロナには、こないだ来たばっかりなんだ。なっ?」
「・・・知ってるよ。挨拶に来たもんな。確か、呪いで姿を変えられちまったとかって・・・。
コクコク・・・と、アンジェはすぐにうなずいた。
「そうか。それでアンジェ、おまえ、ロディタイトは持ってるんだろうな」
あくまで職人として、眉ひとつ動かさず、ロッドはアンジェに聞き返した。・・・が、それを聞
「おいロッド! アンジェはまだ新米冒険者だって、さっきも言っただろっ!? ロディタイ
「・・・新米だろうと、何だろうと、ロディタイトを持たんヤツに武具をやるわけにはいかねえ
「・・・・・・んだとォ!!」
見るからに血の気の多い二人の間で、まさにひと悶着起きよう・・・というとき、それを止
「ロディタイトなら・・・ここに・・・・・・」
そう言って、アンジェは腰の布袋から、ほのかに光るひとつの石を取り出し、手のひらに
「なんだ。持ってるんじゃねえか・・・」
ロディタイトを手に入れたのは、5日ほど前の、レーシィ山に行ったときだった。
「それがあるんなら、文句はないぜ。ちょっと待ってな」
ロディタイトを受け取ったロッドは、そのまま店の奥へ行くと、すぐに代わりの物を手にし
「そいつは、マンゴーシュっつう、まあ見たとおり短剣だ。今のおまえには、このくらいが
陽気な笑いに見送られ、それから、アンジェとアルターは店をあとにしたのだった。
――マンゴーシュ、か・・・。
明るい陽光を受けて、短剣はキラリと輝いた。いや、アンジェの目には、それ以上に輝い
「ありがとう、アルター。一緒に来てくれて!」
マンゴーシュを大事そうに持って、アンジェは満面の笑みをこぼして言った。
「・・・あ、ああ、なんてことねぇよ。良かったな。気に入った武器が見つかって・・・」
武器を手に入れて、こんなにもうれしそうにしている女の子・・・。
・・・・・・もう少し、一緒にいたい。
アルターは思った。そして、酒場に戻る一歩手前で、ひとつの提案をしたのである。
「なあ、アンジェ。そのマンゴーシュ・・・使ってみたくないか?」
着いた場所は、酒場の近くの裏山だった。
「どうだ、アンジェ。これから一戦交えないか? オレ様の腕前も見せてやりたいし。なっ
唐突な誘いに、思わずアンジェは驚き、手に入れたばかりの武器に目をやった。
「・・・練習試合って・・・、これで・・・!?」
だが、アルターの答えは違っていた。
「いや、いくらなんでも真剣は危ねぇだろ。・・・って、危ないのはオレじゃなくって、おまえ
そう言って、そこらに落ちているしっかりとした木の枝を2本、手にとったのである。
さっきは、「マンゴーシュを使ってみたくないか」とか言ってたのに・・・?
ともあれ、気分も随分上向きになっていた今日のアンジェは、快く練習試合の誘いを受け
「よし。それじゃ、どこからでもかかって来ていいぜ!」
微笑を浮かべて、アルターも構えた。軽くて余裕の構えである。が、そこにスキはない。
ダダダダッ――。
・・・スキがあるかないかなど、アンジェは考えていなかった。「どこからでもかかって来い」
「これで後ろから真っ二つーーーっ!!・・・だな」
アルターの枝は、アンジェの背中ギリギリのところで止まっていた。勝負あり、である。
あ然としているアンジェを見て、ちょっとばかりうれしそうにアルターは言う。
2戦目。公約どおり、アルターは1歩もよけずに、アンジェの力任せの技をすべてしっかり
「・・・剣がなければ、戦えないな。この勝負も、オレ様の勝ちってことだな! けど、気に
「・・・待って!!」途端に、鋭い声が発せられた。「お願い。もう1回・・・!」
急いで枝を拾いにいったアンジェに、アルターは応えることにした。3度目の、交戦。
アンジェの攻撃は、1戦目とまったく同じだった。正面から走り寄り、寸でのところで、しっ
――カ・・・キンッ
2本の枝が、勢いよく重なった。
・・・・・・!
そのとき、アルターには一瞬のスキが生まれた。
『攻撃を受け止めて・・・反撃する』
「・・・・・・後ろから・・・真っ二つ」
かすかに揺れる、戦士の赤いマントの寸前で、アンジェの枝は止められていた。勝負は
「・・・・・・・・・」緋色の戦士は、さすがに驚愕を隠せないようであったが、すぐに開き直って
「オレの技を見て、学んだってワケだな。結構やるな、おまえも。・・・ま、とりあえず、今日
・・・2勝1敗。アンジェにとっては、1勝2敗。でも。
対戦相手を上回った瞬間の、あの手応え。あの感触・・・。
運命の冒険が、幕を開けるとき。 |
さて、今回から語り口調を一時中断して、ナレーション方式(?)にしてみました。
「こっちの方が書きやすい」というのが主な理由ではあるのですが(笑)、そろそろ仲間の活躍も目立ってくるころですから、
丁度良いかな〜なんて思ってます。語りとナレーションが一緒になってる部分もありますが、それもまた一興ということで。(^^;
主人公の名前が気になる人は、ご自分の主人公ちゃんのお名前を当てはめて読むと良いかも?です。(たぶん)
ところで武器防具関係ですが、私の場合、この話のように育成モードのときに買うなんてことは、まずありませんですねぇ、ハイ。
たぶん皆さんそうだと思いますが・・・。ロッドとアルターの掛け合いは、またいずれ登場することと思いますので、ファンの方は
お楽しみに。ところで、そろそろお気づきの方もいらっしゃると思いますが、この主人公の職業はいったい何でしょう?(笑)
次回、第4話「水晶に映る運命」。
ご存知、主人公クエスト第1弾! あなたはどのメンバーで行きました??
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