かえるの絵本
第2話 依頼
・・・私が静かにうなずくと、目の前の小さなルームメイトは、ますます甲高い声を上げた。
「呪いって・・・どうしてそんなコワイ目に会わなきゃならなかったんだケロ!? アンジェの
・・・答えてあげたいのは、やまやまなんだけれど・・・。
「・・・正直いうと、自分が呪われているという実感さえ・・・無いの・・・。だから、とりあえず
後半は、ラドゥのうけうり。本音は、といえば。
「・・・いったい、何から始めたらいいのやら・・・」
しばしの沈黙。
「アンジェ! 街に行こうケロ!!」
!?
「これからぼくが、いろいろ案内してあげるケロ! このコロナの街には、楽しい場所や
そして、今度はドアに向かって大きくひとっ跳び。
「レッツゴー!だケロ!!」
コロナの街には、今日も賑やかな時が流れていた。
酒場を出た私たちは、まずこの辺一帯の大通りを歩き、続いて広場、スラム、学術地区
訪れた場所で、あらゆる人々に会う度に、簡単な自己紹介が交わされる。
そう、まずは自分のことを知ってもらわなければならない。
皆、聞いた瞬間は驚き、私の姿を凝視した。
それから、「なんでも聞いてほしいケロ」との言葉どおり、かえるの案内もとても素晴らしか
街の施設や、人々について、(なぜそこまで知っているのかと思えるくらい)詳しいエピソ
本当に、良いルームメイトに恵まれたものである。
決意と不安で、交錯していた私の心に、少しずつ、明るい兆しが見えてきたようだった。
すべてが良い方向に動いている・・・!?と、この街での新しい生活を半ば楽しみながら、
事件は、起こった。
「アンジェ、入るぞ」
ノックとともに、軽快な声が響いた。この部屋を貸してくれている、酒場のマスターだ。
「よう、アンジェ。おまえに初仕事を頼みたいんだ。実は、コロナのすぐ西に、レーシィ山っ
言われるままを、とりあえず黙って耳に入れる。話はまだ続いている。
「明日の団体さんに食わせるためなんだが、オレが店を空けるわけにもいかないし、アル
そうか、普段はアルターが・・・酒場の手伝いなんかもしてるんだ・・・などと思いをめぐらせ
かくして、私の冒険者としての初仕事は、突然にして訪れた。
「イヤな予感がするケロ・・・・・・」
部屋を出ていく私を見送ってから、かえるは思わずつぶやいたそうなのだが。
マスターの言ったとおり、レーシィ山にはすぐに行くことができた。西側の土地に則して、
緩やかな山道を少し登ると、左右に分かれ道があり、その中心に立て札が立っていた。
『右・初心者向けルート』 『左・上級者向けルート』
とりあえず、一度左右をキョロキョロと見渡してから、右のルートを選んで歩き出した。
・・・大丈夫かな。
不安はあったけれども、ここで止まっているわけにもいかない。ましてや、マスターに任さ
行こう!と、早足にて進み出した、そのときだった。
「ちょっと待って!」
一瞬、驚き気味に振り返ると、ひとりの旅人風の青年が、後ろから駆け寄ってきていた。
「キミ、レーシィ山に行くのかい? こっちは上級者向けルートだから、技能がなくちゃ
・・・・・・ギノウ??
疑問をそのまま露わにした、こちらの表情を見て、青年は微笑しながら会話を続けた。
けれど、このまま山を登れないと、頼まれたキノコが・・・・・・。
「だったら、ボクが途中まで一緒に行ってあげるよ。この辺のことにも詳しいし、ね」
こうして、快く山道の同行を引き受けてくれた「ヴィクタ」と名乗るその青年のおかげで、
その後、進路をふさぐ大岩やら、確かに普通に登るのにはちょっと険しい崖道などに、
しっかりとしたお礼を言う暇もなく、旅人は颯爽と自らの道を歩んでいってしまったが、彼
さあ、キノコを採って帰るぞ!
意気揚々と、走り、広い場所に出る。
が――。
そこに待っていたのは、キノコではなかった。
ドス黒い肌・・・邪悪な羽・・・いやらしく鋭い眼光・・・
「モンスターもいない」・・・!? 頭の中で、マスターの話が前後する。
黒い悪魔は、こちらの姿を確認するや否や、薄笑いを浮かべて飛びかかってきた・・・!
――た、戦わなきゃ!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・満足な構えも出来ず、魔物の突進を正面から受けた私の身体は、人形のごとく宙を
そして・・・・・・。
「アンジェ、災難だったな」
ここは、酒場。
・・・気が付くと、診療所のベッドの上にいた。
ぐったりとした私を、この街の診療所まで連れてきてくれたのが、アルターとマーロだった
そういえば、遠のく意識の中で、確かに二人の声を聞いたような気も、するような・・・
あの魔物は・・・!? 二人が、倒してくれたのだろうか・・・。
幸い、ケガ自体はたいしたことはなく、すぐに冒険者宿に戻ることができたのだった。
「実は最近、あの山には、妙に強い魔物が出るようになったんだ」
「だから、マスターから、おまえをそこに行かせたって聞いて、心配になってさ。急いで
もしも、彼らが来てくれなかったら・・・今頃、私は・・・・・・。
「あっ・・・た、助けてくれて、本当にありがとう。・・・それで、その魔物は・・・・・・」
なんとか笑顔を見せ、二人のほうへと顔を上げる。
「それがよ、オレ様の存在にビビったのか、技も見ねぇうちに逃げちまったんだ。・・・けど
得意満面のアルターに対し、マーロは少しばかり憂いの表情を浮かべてから、元の端正
「・・・とにかく、これから外に冒険に行くときは、おれたちに声をかけろよな。魔物なんか、
・・・・・・頼もしい言葉に、思わず、心からの笑みがこぼれた。
二人の背中を見送ると、今度はマスターが、申し訳なさそうに話しかけてきた。
「・・・あっ、そういえば、キノコ・・・!」
「ああ、それならあいつらが採ってきてくれたから、心配いらないぜ。・・・それより、本当に
マスターは私に何度も謝り、それから、今回の報酬のお金を、しっかりと手渡してくれたの
依頼を成し遂げることは、できなかったというのに・・・。それに、アルターとマーロは、
そして・・・部屋に戻ると、小さなかえるが、心配そうに私の帰りを待っていたのである。
自分は、こんなにも、あたたかいものたちに包まれている・・・!
・・・・・・・・・なのに。
――負けた。たった1匹の魔物に。何もできず、一撃で――。
疼く心を隠すように、私はベッドに潜り込んだ。
その数日後、同じようなやるせない思いを、また経験することになろうとは・・・・・・。
このときはまだ、知るはずもなかったのだった。 |
あ、いけね!ラドゥ出すの忘れちゃった・・・。セリフは一応メモってあったんだけどなぁ。ま、いっか。どうせ幻だし!(爆)
2話目・・・いかがでしたでしょうか? なんか状況描写が、ドキュメント番組っぽくなってる気もしますね(^^;
本当は、街の人々のことをもっと詳しく書き連ねたかったんですけれど、キリがなくなりそうなのでやめました。これからの話で、
関わってくるごとに登場してもらえばいいかな〜なんて思って。
ちなみに、実際のプレイでは、さすがに一撃ではやられていません(笑)・・が、回復だけで精一杯だったってな思い出がありますな。
御存知のとおり、魔物を追い払ったときのアルター&マーロの会話が、文中には出てきていません。
主人公は気絶してたから知らなかったってことで。(←勝手に決める) でも、あの会話はホント面白いですよねぇ。
マーロの、あのあからさまに「?」を出すところなんて、最高!! 何度見ても大笑い!!! と、あとがきはこのくらいにして・・・
次回、第3話「潜在する力」。
自分の無力さを思い知ったアンジェは、新しい武器を買い、その足でアルターとの剣の稽古に望みますが、
果たして・・・? どうぞ、また読みにきてやって下さいね!(^^)/
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