かえるの絵本
第1話 かえるの冒険者
・・・何かの呪いにかかり、かえるの姿になっていたのだ・・・。
数刻前にかわされた言葉が、ひとつひとつ甦る。
・・・その呪いは、とても強く、わしの魔法でも、おまえを少しの間だけ人間に変えてやる
あのときは気付かなかったけれど・・・。
わしの魔法は、一年で消えるだろう、と。
・・・・・・いちねん・・・・・・。
目前に映る光の具合が変わったところで、私は思考を、一時中断した。
コロナの街。
いつの間にか、歩幅が早くなっている。まるで何かにとりつかれたかのように、一点を
声・・・・・・。
ふつふつと、自分の中で、何かが踊り始めている・・・・・・。
心と身体の勢いは、どうやら比例していたらしい。
・・・コロナの街で、おのれを鍛え、友を探し、呪いに打ち勝つ力をつけるのじゃ・・・。
今一度、賢者・・・ラドゥの言葉を思い出す。
さてと・・・。これから、どうすれば・・・・・・。
心の踊りは、いったん収められた。
・・・おのれを鍛え、友を探し、力をつけて、呪いに勝って・・・・・・。
「あの・・・。冒険者の方・・・ですよね・・・?」
ビクッとして、私は顔を上げた。目の前に、いつの間にか、ひとりの女の子が立っていて、
「このコロナの街には、初めていらっしゃいましたか? もし、何かお困りのようでしたら、
「あ・・・・・・」
・・・どうしよう・・・。
女の子は、しばし目の前に座る人物の返答を待っていたが、すぐのち、自ら口を開いた。
「今夜、お泊まりになる宿は・・・お決まりですか?」
宿! そうよ、宿、やど!
こういった旅人を見慣れているのか・・・わからないが、彼女はまた優しい微笑みを浮か
「それでは、大通りにある酒場へ行かれるとよいでしょう。この街を訪れる冒険者の方々
大通りに・・・酒場・・・・・・。ああ、そういえば・・・!
私は、スッと腰を上げた。眼下の少女は、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに元の様子
「行かれますか? では・・・」
「あ・・・、大丈夫」
前を行こうとする女の子を止めるように、私は声をかけた。
何でも、人の助けばかり受けては、いられない――。
「どうもありがとう」
振り返り、礼を言ったそのときの私が、どんな表情を見せていたのかなんて、自分では
「・・・お気をつけて。・・・大変な運命を・・・背負った方・・・・・・」
もと来た道を戻る形で、目的の酒場はすぐに見つかった。
そろそろ日も傾こうかという時間。中からは、楽しげな雰囲気と、一方、静かな雰囲気が
入口に立ち、様子をうかがう。・・・と、すぐにひとりの人物と目が合ってしまった。
「おっ!?」その人物とは、正面にあるカウンターごしにいた、この酒場の店主・・・らしき
「あんた、新しい冒険者かい?」
そして、その返答を待ってか待たずか、手招きをしてこう続ける。
言われるままに、カウンターのほうへと足を進めた。すでに酔いの入っているかであろう
「・・・ほら、アルター、どいたどいた!」
店主のほぼ正面に立っていた、鎧とマントに身を包んだ戦士らしき男が、その声にうなが
低い段差を登り、その場所に辿り着いた。
「あんた、冒険者だろ? このコロナの街は初めてかい? この街にやってくる冒険者は
先ほどの少女と同じ文句をひととおり言ってから、次の言葉はこう続く・・・
「・・・さて。それから、名前も用意しないといかんな・・・」
ラドゥは言った。かえるだった私を人間の姿に変えてから、直後のことである。
「その姿は、完全ではないにしても、呪いにかかる前のおまえより確実に影響を受けて
何やらブツブツとつぶやきながら、ラドゥは考え始めた。
私に、必要なもの・・・・・・!
そのとき、風が吹いた。その風にのせられて、私の・・・この「髪」がフッと揺れ、一瞬だけ
「アンジェ・・・・・・」
浮かんだ言葉を、知らずのうちに、私は声に出していた。
「!? いま、何と言ったのじゃ? ・・・・・・アンジェ? そうか・・・姿が変わって、名前を
そういうわけで、私の名前は決まった。
「・・・ふーん。アンジェ、か。オレがこの酒場のマスターだ。よろしくな!」
こく・・と、うなずいて、私は返事をかえした。「よろしく・・・」
一瞬の沈黙のあと、待ってましたとばかりに口をひらいたのは、傍らに立っていたあの
「オレはアルター。街で一番、腕が立つ男だぜ」
自信を持って、言ってのける。
「あんたみたいに可愛い女の子のためなら、いくらでも力になってやるぜ!」
・・・・・・。こういうのには、慣れてない。どういった反応をしていいのか迷っていた私だった
そのときだ。
「おい、ちょっと待て! どこ行くつもりだ!」
明らかに、こちらに向けた声だった。一斉に、声の発したほうへ顔を向ける。・・・と。
先ほどまでの私のように、入口付近に、ひとりの少・・・年?少女?・・・が立っていた。
「仕事がないんだとよ。じゃあな、マーロ」
アルターは、その人物の肩をポンとたたいて、いかにも軽い足取りで酒場をあとにした。
頭から湯気が吹き出す・・・とは、こういう状態のことをいうのだろうか・・・。呆気にとられ
うわ・・・・・・。
「・・・・・・あんた、見ない顔だね。おれはマーロ。魔法学院にいる」
つかつかと目の前に歩いてきた彼・・・マーロは、真っ直ぐな視線で私に声をかけてきた。
・・・なんて・・・綺麗な顔・・・・・・。
「魔術が必要なときには、おれに言いなよ。手が空いてれば、手伝うぜ。・・・・・・じゃあな」
また、違う意味で呆気にとられている私に対し、マーロは続きの言葉を残して、その場を
振り返った私は、さぞ「びっくりした」顔をしていたのだろう・・・マスターは、余裕の笑顔で
「あんなやつらだが、ふたりとも腕はいいんだ。冒険のときには、手伝ってもらうといい。
ちゃらん、とかすかな音をたてて、マスターから小さな鍵を渡された。・・・あとでわかること
そのぶん、さまざまな仕事を受けたり、街の人々の力になるのが、このコロナに滞在する
マスターのすすめに従い、カウンター横の階段を上がって、与えられた部屋を見つけた。
ドアを開け、薄暗い中にあかりを灯す。意外にも、部屋は広くて、小ぎれいだ・・・・・・と。
「!」
何者かと、目が合った。
「うわー、人間だケロ!」
それは・・・まぎれもない、一匹の・・・かえるだった・・・・・・。
「勝手に入って悪かったケロ! 許してほしいケローーーーー!!」
かえるは、もう「この世の終わり」とでもいえるくらい、驚き焦って部屋を跳び回り始めた。
「・・・ねぇ・・・ちょっと、落ち着いて! 怒ってなんかいないから! ・・・ねっ?」
ちょうど、私の頭上を勢いよく跳び越したあとで、かえるの動きはピタリと止まった。
「あれ・・・もしかして・・・、ぼくの言葉が、わかるケロ?」
・・・私はうなずいた。
すると、さっきまでの驚きはどこへやら、かえるは、私の顔をまじまじと覗き込み、今度は
「・・・・・・不思議だケロ。かえるの仲間と同じ感じがするケロ・・・・・・」
心臓が、トクン・・と鳴った。
・・・友だち・・・。
もう二度と、出会うことはないと思われていた、その言葉。
心の揺れを悟られるのが、ふいに恥ずかしくなって、私は部屋の隅に置かれた鏡の前に
・・・・・・これが、私。
目の前の表情は、複雑に変化を見せていた。
「ありがとう・・・よろしくね」
以後、多大な協力者となるであろう、小さな友人へ向けて、笑顔とともに返事をおくる。
私はこれから、記憶のパズルを埋めていくのだ。
本当の自分を、取り戻すために・・・・・・。
運命の期限は、一年。 |
こんにちは! 著者のyumiでございます。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。そして、おつかれさまでした(^^;
なんか、初回からおそろしく長くなってしまって・・・(滝汗) ってか、場面転換しすぎ。序盤の語りはみょ〜にカタイし・・・反省ばかりだぁ。
主人公の名前・・・そうです、アンジェです。某恋愛育成シミュレーションとは、多分関係のないものだと思われます(苦笑)
いや、この名前で3竜編ともやり通したものですから、今さら他の名前で書けないんですよ。すいません、ワガママで。
(余談ですが、ディズニーの「美女と野獣」にも、アン○ェリークというキャラクターがいるんですよー!って本当に余談(^^;;;)
さてさて、この小説風プレイリポート。そーなんです。プレイリポートなんですよ。多少アレンジはしていくつもりですけどね。
だから、今後「本来ならば絵本のできないストーリー展開」でいくことも、あるかもしれないとゆーことです。それが真実だから☆(爆)
とっても印象深かった1stプレイを、何らかの形で残したいと思って、この小説を書いてます。
不定期更新となりますが(やっぱり(自爆))、お時間の空いたときにでも、また読みにきてみて下さいませ。よろしくです!
・・・てなワケで、次回、第2話「依頼」!
酒場のマスターに頼まれた初仕事と、アンジェを襲ったピンチとは!?(バレバレ(笑)) おっ楽しみに〜!
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