ドラゴンクエストU
2 サマルトリアの王子


「また思い出したのか? 例の夢」
 リモーネが言う。武器屋を出て、あたしたちはもう町の出口へ向かっていた。別にずっと金縛りにあってたわけじゃないし、すぐに現実に戻って盾の会計もちゃんと済ませた。でも・・・やっぱりちょっとぎこちなかったかな・・・。
「別人みたいに真剣な顔するから、どうしようかと思ったよ」
「・・・別人みたいはないっしょ。だって、いきなりだったからさぁ。まさかここであんな話聞くとは思ってなかったし」
「息子をあずけに来た、か。もしかして気づいていたのかな・・・その兵士は・・・。とにかく急がないとな・・・。もう用事はないだろ? コレも買ったし」
「用があっても、ゴールドがこれじゃねー。がんばって魔物たくさん倒してよね。なるべくカネ持ってそうなヤツ」
「はいはい。でも、そんなのわかんのか・・・?」
 地図で見ると、次の目的地・サマルトリアは、このリリザの町のほぼ一直線上、北にある。もちろん、そこをまっすぐ行くのが一番の近道なわけだが、例によって草原の道を選ぶことにした。あの旅の戦士も言ってたっけ。ローレシアからリリザの周辺が、一番魔物が弱いんだって・・・。
 それにしても、やっぱりリモーネは天才ね。あ、もち、戦いに関してだケド。あたしは(これまた例によって)草陰なんかに隠れて密かにチェックしてたんだけれど、はじめは、まぁギコチなかったとしても、今日手に入れた皮の盾を、初めて装備する盾ってものを、もう自分のものにしちゃってる。確かに、昨日より強いと思われる敵は出た。山ネズミとかね。でも、そんなピンチってほどにはならなかったのよね。辺りが暗くなるまでは・・・。

「あー、もう疲れた!! 休もうよぉ。どーせ今日中には着けないんだからさー」
 昨日とおんなじ。歩きっぱなし。しかも日がどっぷりと暮れちゃって、疲れ倍増、ってかんじ・・・。
「そうだな・・・、じゃ、この辺で休むとするか。あの木の下なんかどうだ? でっかいし、ちょうどいい」
 リモーネが指さした方向には、確かに休むのにピッタリそうな大きめの木が一本しっかりと立っていた。ああ、やっとだぁ・・・。おなかもすいたー・・・。まるで救いを求めるかのような足取りで木にたどり着き、まさに腰を下ろそうとした、その瞬間――。
「キキーーーッッ!!」
「!? な、何ーーっ!?」

 バサバサバサ!! すさまじい羽音。音に従い、上を見上げる。光り始めた星たちを一瞬で覆い尽くす真っ黒な影。違う、影じゃない! コウモリ・・・。コウモリ型のモンスター、ドラキー・・・の大群だーっ!!

「逃げろっ、フィナ!!」
 リモーネがあたしの腕を掴んで走る! もぉー、せっかく休めるとこだったのにー!!
「・・・ちっ、しつけーな」
 リモーネが振り返る。剣と盾を構えてる。迎え討つつもりだ!
「ちょっと待ってよ!? いくらなんでも数が多すぎだって!!」
「大丈夫だ。さっきよりかは減ってる。このまま逃げてたって埒があかないだろ! ・・・さあ、来やがれ!!」
 キキーッ! うわー! ふと見ると、そこにはいかにも人の隠れるような大きな岩がひとつ。あたしはすぐさまそちらへ走った。そしてリモーネは・・・。

 いち、に・・・あ、一匹落とした! ・・・さん・・・、全部で五匹か。もっといたような気がしたけど、あれは木の葉だったのか・・・、いや、そんな場合じゃないって! ちょっと・・・ヤバくない・・・リモーネ・・・・・・!?
 ドラキーには羽がある。しかもチョコマカとすばしっこいから、飛びながらリモーネの攻撃をよけることができてしまう。それでも一匹、また一匹と次々に振り落とすリモーネ。あと二匹、これならいけるかも・・・と思ったその時、振りかぶった剣は惜しくもドラキーの真横を素通りし、前によろけたリモーネはかろうじて膝をついた。だが。
「リモーネ・・・?」
 ・・・・・・立ち上がらない。立ち上がれないの? もしや、血を吸われて・・・!?
 相手は吸血コウモリ。傷つけながら血まで吸う。このままじゃ、リモーネが!

 ――薬草。

 そうだ、薬草! これで体力だけでも回復すれば、あと二匹ぐらい倒せる! でもどうしよう・・・今出てったら、すぐにあいつらが襲ってくる・・・。ううん、そんなこといってる場合じゃない。今行かなきゃ、リモーネが死んじゃう!!
「よし・・・」
 袋から薬草を取り出し、腰に着けてたナイフに手を置く。と、その時、あたしの脳裏は実に素晴らしいコトを思い出したのだ。それは・・・・・・。
「どけどけどけーーっっ!! リモーネッ、薬草だよ!!」
 動物は火に弱い!! あたしは持ってきた松明(たいまつ)に火をつけ、それを振り回しながら突進した。・・・・・・案の定☆ ドラキーのやつら、近寄ってこれない。このすきにリモーネに薬草を渡す。うわ・・・ホント、やばそうだ。
「大丈夫? 食べられる?」
 なんとか・・・ってカンジだけど、確かに薬草は口にした。これで安心。ほら、だんだん体力、戻ってきたでしょ。
「んじゃ、あたし下がるからね。がんばれ。あと二匹!」
「ちょっと待て!! それ貸せ・・・火!」
「えっ、これ?」

 それにしても、ドラキーって本当にしつこい。リモーネが薬草を飲む間、動かない炎を見て強気になったのか、飽きもせずまたまた急降下してくるんだから。でもねえ・・・!
「ギャアッ!!」
 松明を剣がわりに、おもいっきりぶつけてやる。やっぱ動物! 真っ赤に燃えたドラキー野郎はそのまま燃え尽き、煙となって、消えていった。
「うっしゃ!! あと一匹ぃ!!」
 リモーネが静かに構える。フツーは逃げるよねぇ・・・仲間、燃えてんだよ・・・。魔物って、人を襲うしかすることないんだろーか。
 一閃。長かった戦闘、終了。さ、しっかりゴールド、拾わなきゃ。


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