ドラゴンクエストU
1 運命の旅立ち


「銅の剣・・・」
「そうじゃ。衛兵たちが使っておるのが鉄の槍だが、まずはこれが手頃であろう・・・。サマルトリア、ムーンブルクには同じロトの血を分けた仲間がいるはず。その者たちとチカラを合わせ、邪悪なる者を滅ぼしてまいれ!」
「はい」
 何の前ぶれもなく旅立ちを余儀なくされて、いきなり張り切れる人なんているわけがない。さすがのリモーネにも、戸惑いは隠せないようだった。だけど、そんな心配を吹き飛ばし(!?)いつものリモーネに戻してあげたのは、ほかでもない、このあたしなのだった・・・!

「おーい! リモーネ! もう出発!?」
 ちょうど自室から出てきたのを見つけて、あたしは声をかけた。
「ああ。仕度はできた。もう行くよ。元気でな、フィ・・・」
 言い終わらないうちに、(ちょっと大げさに)続けた。
「なぁーにのっけから元気ないこと言ってんの! ま、いいわ・・・んじゃ、とにかく出発しましょ! あたしのほうも準備オッケーだからっ!」
「・・・・・・は!?」
 沈黙の時間・・・どのくらい続いたかしら・・・・・・!?


「お・・・おまえ!! 俺がこれから何しに行くか、わかってんのか!?」
 先に口を開いたのはリモーネ。感情むき出しで怒鳴る怒鳴る。
「わかってるよ」
 リモーネの反応はすでに予測済み。だからあたしは冷静に答えてみせた。
「ムーンブルクの城を襲い、世界を破滅に導こうとしている大神官ハーゴンを、倒しに行くんでしょ」
「そうだ! 俺はこれから戦いに行くんだ!! 遊びに行くんじゃないんだぞ!! だからおまえは城に残ってろ!」
 ・・・・・・案の定だ。気負ってるなぁ。ま、ムリもないか。
「ところでさぁ。あんた、これから今すぐそのハーゴンってヤツのとこに攻めていくつもり?」
「えっ? そ、そうだな・・・」
 あたしの不意の質問に、一瞬ビビッたようだったが・・・気を取り直して、ちょっと自信ありげに答えたのには、
「サマルトリアとムーンブルクに、ロトの血を分けた仲間がいると父上が言っていた。まずはそいつらを捜して、仲間が揃ったら一気にハーゴンを倒しに行く!!」
 ・・・・・・はぁ。ここまで思った通りだとはなぁ・・・。あたしはもう、きっぱり言った。
「リモーネ・・・あんた、死ぬつもり!?」
「な・・・なんでだよ!!」
「だってそうでしょう。一気に倒しに行くって、その銅の剣でハーゴンに立ち向かおうっての!? 信じらんない! 絶対勝てるワケないじゃん、そんなの!」
 リモーネは無言になった。その通りだって思ってくれたんだと思う。そう・・・だって一番不安なのは、きっとリモーネ自身なんだもんね・・・。
「だからさ! 世界中旅しようよ! んで、いろんな町とか行ってさ。武器や防具を強くしていって、情報を仕入れたりして・・・。そうやっていけば、きっとおのずと道は拓かれるし、ハーゴンだって倒せるよ!!」
「フィナ・・・おまえ」
「ふふん。なんでそんなに詳しいんだって言いたいんでしょ。はっきりいってあたしはそれ系、ほとんど知ってるわよ! 書庫の事典も暗記するほど読んだしねっ」
 どうやらリモーネが驚いていたのは、あたしが旅のことに詳しいってことじゃなく、『なんでフィナがこんなにはっきりとした討伐計画を述べることができるんだ』ってことだったらしい。もちろん、あたしはそれに気づいてなかったワケだけど。
「ま、とにかくそーゆーコトだから、一緒に行かせてもらうよ。旅の知識はあたしに任せときなさい!」
「ええっ!? それは・・・。いや、やっぱ連れてくわけにはいかないよ。そんな戦いの旅におまえを・・・・・・」
「大丈夫だって! それにね・・・」

 この旅についていきたい一番の理由。
 はっきり口に出すには少しためらう、その理由。

「夢の話・・・したでしょ、さっき。あたしさ、あれはやっぱりただの夢なんかじゃないんだと思う。やけにリアルだったのは、それがホントのことだから。あの城は、ムーンブルク城だったのよ!!」
「・・・そんな・・・!?」
「うん。なんでそんな夢をあたしが見るんだって思うでしょ。ロトの血を引いてるリモーネならともかく、なんでこのあたしがって。でもね、もし・・・もしもね、あの夢がムーンブルクのお姫さまからのメッセージだとしたら・・・・・・あたしは行かなくちゃいけない! 助けにいかなきゃいけないんだよ!! ・・・だから、お願い」
「フィナ・・・」
「あたし絶対足手まといにならないから!! それに、あたしがいた方が役に立つよ! ねっねっ」
 力説するあたしを、リモーネはじっと見ていた。そしてふっと表情を緩めて言った。
「わかったよ。じゃあ、とりあえずサマルトリアまでついてきて、そんで危なかったらすぐ帰すからな!」
「オッケー!! まかせときなって! あたしがいなくちゃやっていけなくなるんだからっ」
 うれしかった。こうなるつもりだったとはいえ、ホントに行けることになったんだもん!

「よし。じゃ、気を取り直して出発するか!」
と、リモーネ。「うんっ!」と勢いよく応えると同時に、ひとつの言葉が返ってきた。

「ところでおまえ・・・その服、何?」

 ・・・・・・あたしたちの旅は、こうして始まった。


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筆者が高校生〜短大生のころに、ワープロでばちばち打っていた小説です。
印刷したものが部屋の荷箱(ダンボール)から出てきたので、サイト用にアップしてみることにしました。
それにしても、今読むと主人公フィナの口調がすごい・・・(汗) 自分が年取った証拠かね(;;)


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