はるか昔 伝説の勇者 ロトの血をひく若者によって 竜王は たおされ

世界は 光をとりもどしました。


若者は その後 ひとりの女性とともに旅に出て

いくつかの 新しい国を 築いたのでした。


それらの国は 若者の子供たちによって 代々 治められたと

伝えられています。



そして 100年の月日が 流れました・・・・・・。






ドラゴンクエストU

〜 プロローグ 〜



 それは、今まで見たことのない、美しい城だった。

 華やかであり、それでいて荘厳。萌える緑に囲まれ、どこか、ほっと安堵の気持ちさえ覚える、そんな城だ。
 城の中庭には、色とりどりの花が咲き誇り、年中、春を思わせる。小さな橋が渡された水路には、清んだ水が、静かに流れている。
 まさに、そこは楽園。
 王と、若き姫は、それらの中で、平和な語らいの時を、過ごしていたのであった。

 今までも、そしてこれからも、途絶えることなく続いてゆく、この平和な時。父娘は、その象徴であった。
 しかし・・・・・・!
 突如として、城が震えた。語らいの声は、そこで止まった。
「こ、これは・・・! いったい、何が起こっているのだ!? 誰か、誰かおらぬかっ!」
 王の叫びと同時に、兵士がひとり、息を切らして中庭に入ってきた。そして、早口に事の起こりを告げる。
「お、王さま! 大変でございます! 大神官ハーゴンの軍隊が、我がムーンブルクの城を!」
「なんと! ハーゴンが攻めてきたと申すか!」
「はい・・・!」
 王は、はじめ驚愕の声をあげたが、すぐに冷静さを取り戻し、兵士のほうへ向き直って続けた。
「ぬぬぬ・・・ハーゴンめ! こうしてはおれぬ。すぐに、兵士たちを集めよ!!」
「はっ。直ちに!」
 兵士が去ると、王は、それらのようすを、後ろで不安げに見つめている娘の姿に気づいた。そして、何か思いついたかのごとく、その手を掴み、橋を渡った水路の向こう・・・人の目につきにくい、奥の地下室への入口に娘を立たせた。
「よいか、アイリン! おまえは、ここに、かくれておるのだっ! わしの身に、なにがおこっても、けっしてなげくでないぞ!」
「お、お父さま・・・!」
 娘は・・・姫は、父のその言葉に、ショックをかくせないようだった。すぐには、地下に降りようとはしない。
 だが、それ以上の話をしている余裕さえも、父娘には許されなかった。
「さあ、はやくしろっ! わしはこのことを、ローレシアの王に、知らせねばならんのじゃ!」
 と、その時・・・!
「ケケケ・・・!」
 魔物が・・・いやらしい目つきをした鳥型のモンスターが、ついにそこまで飛び下りてきた。王は、すぐさまそちらへ向き直り、
「うぬ・・・ここまで来ていたとは! おのれ怪物めっ! ――バギ!!」
 真空の刃が、魔物の身体を切り刻む。倒した・・・! と思うのもつかの間、同じような鳥型のモンスターがもう一体やって来た。
「おのれ・・・怪物どもめ!」
 再び、バギの呪文を唱える。前者同様、真空に切り刻まれた魔物だったが・・・・・・。
 王は気づいていなかった。その戦いの背後に忍び寄るもう一体の影に。邪悪なその手の中に、炎の気が集まっていることに・・・! そして!
「ベギラ・・・マ!!」
「ぎょえーーっっ!!」
「お、お父さまーーーっっ!!」
 炎の波が、振り向く間もなく王に襲いかかる。閃光に包まれた花々とともに、姫は、この世で最も親しい人の断末魔の叫びと、この世で最も悲惨な光景を目の当たりにして、ただ、泣き崩れるばかりであった・・・・・・。

 城内は、まさに軍団の魔物たちによって、次々に破壊されていった。
 城の兵士たちもよく戦ったが、次第にその数は減らされていく。そんな中、ひとりの兵士が、襲いくる敵を倒しつつもなんとか、城から抜け出すことに成功した。
「いっこくもはやく、このことをローレシア王に知らせなくては・・・・・・!」
 魔物の身体を貫いた鉄の槍を握りしめ、足を早めたその刹那、ごうっ――という音が兵士の耳をかすめた。
 城は・・・自らの誇りであった美しきムーンブルク城は・・・炎の中へと沈んでいく・・・・・・。
 兵士は、そのようすに思わず足を止めたが、そのまま二、三歩後退りをし、はっと気付いたように振り返り、その後はまっすぐ前だけを見て走り続けた。

 はるか遠国、目指すローレシアへと・・・。


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