★文芸1 日本文学 小説 近刊本中心

日本のミステリーもとりあえずここにあります。

書名−著者名−出版社−発行年−初・再−帯の有無−状態−元価格

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N−a036−001
『我が輩は猫である』殺人事件 奥泉光 新潮社 1996年 B上 2700円
★本郷の東大医学部に今も保存されている漱石の脳は、常人に比べかなり大きいと聞く。日
本を代表する文豪漱石の脳内ワールド、つまり知識は広大深淵ではるかに常人の及ぶもの
ではない。まず第一に、子規が舌を巻いた漢籍の素養があり、幼少より慣れ親しんだ落語な
どの江戸戯作文の嗜みがあり、さらに英国留学中、神経衰弱になるほど勉強した英文学の
知識もその上に加わる。この三位一体こそが漱石文学の素地であり、他の文学者、(例えば
同時代人、露伴は、漢籍などの古典知識は漱石を凌駕したとしても英文はできなかった)の
追随が及ばぬ所以である。この壮大な知識、教養があったからこそ、時代を超え100年近くも
読み継がれているとも言えよう。その漱石文学の代表作のひとつ『我が輩は猫である』は、
古今、最も贋作、偽作、続編、今で言うパロディが生まれた小説だと聞く。話の筋は単純で、
教師をやっている苦沙弥先生宅に集まるヘンな人々の床屋談義四方山話といったとりとめ
のないモノだが、その実、読んだ人はご存知かと思うが、注解を半端でないほど版元は載せ
なくては今日の読者はちんぷんかんぷんな語彙や警句、洒落に満ちている。ストーリーはあ
ってなきがもののごとくだから誰でもマネて書けそうな気がするが、どっこいそれを許さない
のが、この注解の部分、つまり三位一体の膨大な知識から溢れ出した言葉の遊び(ギャグ)
の部分なのだ。研究者によると未だ出典がわからない地口、洒落がかなりあるのだと言う。
その博覧強記の漱石の脳内ワールドに果敢にも挑んだ勇者がいて、しかも、パロディの定番
である『猫』の続編を20世紀末に書いてしまった。それがこの本書である。知る限りにおいて
この手の漱石パロディ本としてはもっとも漱石ワールドを巧みに現出させている。そして原作
よりもはるかに物語として面白く良くできている。苦沙弥先生が殺され、我が輩は上海へ連
れ去られて…。感心した。労作以外の何ものでもない。ただ、ラストが一カ所だけ気にいらな
い点もあるが……。それは謎解きに絡む箇所だからふれないでおく。※近年文庫でも読める
ようになりましたが、やはりオリジナルを買って漱石全集の横に並べて置きたい人に。頑健
箱入り・柄谷行人と著者の対談を収めた小冊子付き。美本。
価格
\1,700
N−a036−002
生活の設計 佐川光晴 新潮社 2001年 初・帯 B 1400円
売り切れ!ぼくが屠畜場で毎日ナイフを持って働いている理由? 
よし、説明してみよう! キツイ仕事ゆえ、午前中で終業だから、
共働きの妻にも幼い息子にも都合がいい。僕の体質にも最適
なんだ。しかし……――帯惹句より。※2000年度第32回新潮新
人賞受賞作。★奇妙な小説である。主人公は、著者を彷彿させ
る家庭を持つ三十代の男。彼は屠殺場に勤めている。その彼の
経歴、仕事、家庭生活を主人公は、若い頃のウディ・アレンの映
画のようにひたすら饒舌に自分が汗かきであることから始まって
事細かに説明する。読者はそれに面白く耳を傾けるのだが、ふと
疑念をいだく。これは、何か秘密があって、それを隠すためのアリ
バイ工作の一環ではないのかと。それが読みとれるかどうかでこ
の小説の評価は分かれるだろう。自伝小説のふりをしているが
まったくそうではない。新しい才能だと思う。この人の受賞の言葉
がまた良かった。「牛の上にも10年…」。これからも頑張って意欲
的な小説を書き継いでもらいたい。
価格
\700
N−a036−003
象と耳鳴り 恩田 陸 詳伝社 平成11年 初・帯 B下 1700円
★恩田陸というと、デビュー作がNHK教育テレビでドラマ化された『六番目の小夜子』のイメ
ージが強く、ジュニア向けの子供だましの小説を書く、大人の読者の鑑賞に堪えられない作
家だと何となく思っていた。でも本書を読んで認識を一変した。退職判事である関根多佳雄
を狂言回しに用い、彼が遭遇した奇妙な12の“事件”を収録した本書は、日本のミステリとい
う範疇にとどまらず、ロアルド・ダールとかの欧米の作家に通ずる上質な短編小説の香りを
ただよわせている。人が殺され、謎が解かれ、犯人が捕まることだけがミステリではないこと
を示す好見本。
価格
\700
N−a036−004
ぼっけえ、きょうてえ 岩井志麻子 角川書店 平成11年 B 1400円
★すっごく、おっかねえです。ご存知、第6回日本ホラー小説大賞受賞作。この短編一作で
岩井志麻子の名は文学史に残るものとなった。本書はその表題作に、同工の“きょうてえ”
土俗的伝奇小篇を三編書き下ろして収録しベストセラーともなった話題作。岡山ってほんに
八つ墓村の元になった事件といい、ぼっけえ、きょうてえ…ところだで。
価格
\400
N−a036−005
日曜日の夕刊 重松清 毎日新聞社 帯 B上 1700円
ひさびさに家族全員揃った日曜日の夕方、ちょっと照れくさくなったお父さんが、日曜日には
夕刊がないことを知りつつ「えーと、夕刊は……」なんてつぶやいてしまう、そんな気持ちにさ
さやかなエールを送らせてもらいます。現実の夕刊が哀しいニュースで埋めつくされているか
らこそ、小さな小さなおとぎ話を、12編。微笑んでいただくための短編集です―――帯惹句。
★最近ブームのしみじみ系“ちょっと泣かせるいい話”の名人・重松清のサンデー毎日で連
載された短編をまとめたもの。誕生日や病人へのプレゼントに最適です。※帯やや破れアリ。
価格
\800
N−a036−006
ビタミンF 重松清 新潮社 2000年 帯 B 1500円
炭水化物やタンパク質やカルシウムのような小説があるのなら、ひとの心にビタミンのように
はたらく小説があったっていい。そんな思いを込めて、七つの短いストーリーを紡いでいった
―――著者後記抜粋。★最近ブームのしみじみ系“ちょっと泣かせるいい話”の名人・重松
清の「小説新潮」に発表した作品をまとめたもの。最近、文庫版が出たけれど、やはりオリジ
ナルで読みたい人に。「山本周五郎賞作家の最高傑作!」―――帯惹句、だそうです。
価格
\600
N−a036−007
あした命はもっと輝く! ひたむき女性20人の「自分肯定力」
田村章 光文社 1999年 初・帯 B 1600円 
★本書は、雑誌「「女性自身」の「シリーズ人間」という連載記事からのベスト選集であり、本
来はノンフィクションの欄におくべきものだ。それが何故、ここ小説の欄に置いたかというと、
記者の取材原稿を記事にまとめ上げるアンカーマン田村章なる人物が作家・重松清である
からだ。彼は、「あとがき」でこう書いている。――数え切れないほどの人々の“生”を、喜び
も悲しみも丸ごと呑みこんでは物語に移し替える仕事を、毎週のようにつづけた。《略》ぼくの
書く小説は、「シリーズ人間」の仕事をつづけることで、確実に変わった。《略》「シリーズ人
間」がぼくの小説の原点の一つであることは確かだ、と。近年、しみじみ系“ちょっと泣かせ
るいい話”で話題の作家のいわばネタ帳とも言えよう。障害を克服して自ら人生を切り開い
た女性や、32歳で医師を志し僻地医療に尽くす主婦など読むと元気を与えてくれる“素晴ら
しきかな人生”賛歌の20人の女性の記録集。
価格
\800
N−a036−008
酒仙 南條竹則 1993年 新潮社 帯 B上 1300円
それが酒仙の道ならば、酔って酔って酔いまくれ! 古今東西の美酒珍味に舌鼓、酒呑み
必読の「教養」小説―――帯惹句。※第5回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。★一言で
言うと分類不能なまか不思議な小説。『山月記』の中島敦が漱石の『猫』を書いた時の気分
で酔っぱらってペンを走らせたらきっとこんなお話ができるのではないか。えっ、全然一言で
説明になってないって? そうなんです、ですからまずは読んでください。装幀・南伸坊。
価格
\800
N−a036−009
ベイスボイル・ブック 井村恭一 新潮社 1997年 帯 B 1200円
正体不明の「海上委員会」が管理する南の島。「わたし」はそこで、前代未聞の奇妙な野球を
観戦する仕事を引き受けた……――帯惹句。※第9回日本ファンタジーノベル大賞。★この
賞の受賞作の中では最もハヤカワ文庫的SF作品。
価格
\700
N−a036−010
イントゥルーダー 高嶋哲夫 文藝春秋 平成11年 初・帯 1429円
一度も生きて会うことのなかった父子の絆を描く叙情、最先端のコンピュータ犯罪が見事に
融合する傑作―――帯惹句。※平成11年度サントリーミステリー大賞受賞作。読者賞ダブ
ル受賞。★全選考委員激賞!超大型新人登場。(帯)だそうです。
価格
\700
N−a036−011
共犯者 山崎永幸 新潮社 1999年 帯 A 1300円
埼玉愛犬家連続殺人事件。犯人がなかなか挙がらなかったことには、深いワケがある。死
体が絶対に現れない方法をあの男があみ出したからだ。俺は雨の音が何よりも嫌いだ。連
想させるのだ、人肉に降りかかるシャワーを―――裏表紙惹句抜粋。※新潮クライムファイ
ル★世間を震撼させ記憶に新しいあの事件の実録小説。日本版『ハンニバル』の感あり。
価格
\800
N−a036−012
フェイタル 横森理香 幻冬社 1998年 初・帯 B 1500円
ストーカー、整形マニア、恋愛依存症……。今を生きるために、六組の男女は疼くような情事
に賭けた。驚愕の連作小説集―――帯惹句。けっこう下世話な男と女のエキセントリックな
愛の形。革命的なこと(表層はそう見える)が実は保守的(旧弊)であるという良い例。
価格
\600
N−a036−013
オルファクトグラム 井上夢人 毎日新聞社 2000年 B 1900円
★ものすごーく鼻がいい、つまり人並み外れた犬のような嗅覚を持った主人公が巻き込まれ
た謎の事件。その着想の妙で書いてしまった550ページを超す大部の嗅覚ミステリー。鼻が
利くって推理小説の主人公の必須アイテムだが、それをそのままミステリーにするなんて!
トンデモ本の一種としてミステリの歴史に残るかも。ヘンです。笑ってもいいかな?
価格
\600
N−a036−014
船上にて 若竹七海 立風書房 1997年 初・帯 1600円
八つの様々な味わいの短編を収録。「ミステリー自選傑作集!!」(帯惹句)だそうです。
価格
\600
N−a036−015
水辺のゆりかご 柳 美里 角川書店 平成9年 帯 B 1300円
★柳 美里は今最も話題の作家だが、本書はベストセラーになった「命」などの現在進行形
「自伝」のルーツと呼ぶべき、彼女の特異な「過去」、家庭の歴史ををあますところなく晒した
美里版「血族」と呼ぶべき衝撃の自伝エッセイ。ここまで書かれると身内はツライよ。
価格
\600
N−a036−016
セレファイス 伏見健二 メディアワークス 1999年 初 B上 1800円 
本書は、その構想と夢想の〈核〉をH・P・ラヴクラフトの幻想短編小説『セレファイス』と
〈クトゥルー神話〉に拠っている―――朝松健解説抜粋。★ゲームデザイナーでもある著書の
新感覚モダンホラーだそうです。この手のSFファンタジーがお好きな人にオススメ。
価格
\800
N−a036−017
ディングルの入り江 藤原新也 集英社 1998年 初 B 1785円
★藤原新也に関して説明は不用だろう。かつて若者に圧倒的に支持され、ためにその著書
の多くは古書として価格が今日暴落している世界各地を放浪した写真家兼物書き。その彼
のこれまでの膨大な旅の経験を軸に開始する小説活動の第一作が本書だ。アイルランドの
孤島を舞台に“人間の記憶再生の神話”が描かれる――(帯)そうだが、これまで彼の書い
てきたものじたいが実は既に「小説」だったのだと気づかされるだろう。
価格
\900
N−a036−018
電車 久美沙織 アスペクト 1999年 初・帯 B 1800円
わたしのなかでなにかがずれて、壊れた。恐怖の果てに訪れるせつなさ。著者渾身の書き下
ろしホラー!!―――帯惹句。
価格
\900
N−a036−019
あなたには帰る家がある 山本文緒 
集英社 1994年 初・帯 B 1800円
愛に迷っているアナタ 愛に傷ついているアナタ にささげます。嫌な奴だけど 裏切った奴
だけど みんなみんな 愛しい人間たち―――帯惹句抜粋。★きちんとした小説です。不倫
で今悩んでいるアナタにオススメ。
価格
\800
N−a036−020
しゃべれどもしゃべれども 佐藤多佳子
新潮社 1998年 帯 1600円
本の雑誌が選ぶ’97ベスト10、第1位! 照れ屋の恋の物語―――帯惹句。
価格
\700
N−a036−021
ザ・ベストミステリーズ1998 日本推理作家協会編 講談社 
1998年 初・帯 B 2200円
1997年に小説雑誌などに発表された多くの短編ミステリーのなかから、日本推理作家協会
が15篇の傑作を厳選した決定版のアンソロジー《略》。推理小説界とSF界の1997年の概説、
推理小説関係の各賞歴代受賞リストなど、資料編も充実―――帯惹句。
●収録作家 渡辺容子 逢坂剛 小杉健治 歌野晶午 唯川恵 夏樹静子 北森鴻 藤田
宜永 野沢尚 東野圭吾 加納朋子 北村薫 柴田よしき 新津きよみ 南島砂江子
価格
\1,200
N−a036−022
駆ける少年 鷺沢萠 文藝春秋 1992年
初・帯 B上 1200円
★売り切れ★先日、自ら命を絶った著者の出世作であり代表作。表題作の他二
編の短篇を含む本書は、どれももう若くない男性が主人公で彼らの
追いつめられ荒んだ内面が巧みに描かれている。当時、著者は二十
歳そこそこの小娘だったはずだが、どうしてこんな世界が書けたのか
不思議な気がする。何にせかされているのだろう―――と帯の惹句に
大きく書かれているが、著者は本書の後書きで、こう記している。「ゆ
っくり歩くことができればどんなにいいかと誰よりも強く願いながら、
やはりわたしも駆けているのかもしれない」。この言葉が暗示するかの
ように、ずっと走り続け、駆け抜けて行った人生だった。つくづく惜しい
才能を失ったと思う。追悼鷺沢萠 合掌。
価格
\900
N−a036−023
インストール 綿矢りさ 河出書房新社 
2001年 B下 1000円
★先日、史上最年少の芥川賞受賞者として話題を呼んだ綿矢りさの
デビュー作。第38回の文藝賞受賞作でもある本作は、登校拒否とな
った女子高生が同じ団地に住むネカマの小学生と出会い、性風俗サ
イトのチャットルームの相手嬢となるその顛末を女子高生の語り口で
描いた中編。小説は時代を写す鏡であるけれど、先端の風俗と現代
女子高生の雰囲気は描かれているが果たしてこの作家に光るもの
は果たしてあるのか…。村上龍は彼女を高く評価しているけれど、確
かに村上の「透明に近いブルー」に共通するところもある。流行の風
俗と雰囲気だけの上っ面ってとこが。
価格
\300
N−a036−024
三島由紀夫 剣と寒紅 福島次郎 文藝春秋
 平成十年 B 1429円
★近年またまたブームとなりさらなる評価が増している三島由紀夫。
彼のことを実は同性愛者ではなかったとする評論家、研究者も多
い。本書は、そうした風潮に真っ向から立ち向かい、生前の三島と
親交のあった著者が同性愛者同士としての立場から彼との出会い
から別れまでを事実のままに描いたもの。しかし三島の遺族から抗
議を受けやむなく絶版となってしまった問題の書。好奇心的側面で
読んではならない。よくある暴露モノでは決してなく、そこには三島
に対する深い尊敬と愛情が静かに流れている。ホモだっていいじゃ
ないか!とホモにもなれなかった店主は深く作者の福島青年に同情
している。やはり三島はホモ的側面抜きには語れない。
価格
\2,000
N−a036−025
三島由紀夫 没後三十年 新潮11月号臨時増刊
新潮社 平成12年 B 1200円
★衝撃の死から三十年以上がたっても未だ謎の多い問題の人・三
島。本書は三十年目の節目の年に企画された新潮社版三島由紀夫
全集に合わせて編まれた三島に関するアンソロジー。三島のアルバ
ムや十代の詩、「金閣寺」創作ノートなどファンにとっては貴重な資料
的読み物が収録されているが、橋本治による『「三島由紀夫」とはな
にものだったか』、古井由吉・島田雅彦、平野啓一郎による三島をめ
ぐる座談会などが目を引く。興味深いのは現代の主要な作家・知識
人らへの「三島由紀夫と私」というアンケートへの返答で、井上ひさ
し、梅原猛、立松和平、小林信彦ら30数名がそれぞれの三島を語っ
ている。その中での藤原新也の“回答”を紹介しておく。
Q――「三島由紀夫」が好きですか、嫌いですか。それは何故です
か。A――人間の強さと脆さが見えるところが好き。青白く痩せた小
男が肉体を獲得する過程。それを維持する緊張。はりつめたものが
ぷっつり切れるもろさ。 ―――店主も深く頷けるところ多し。
価格
\1,800

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