ネロのごとわれは見おろす誕生日卓のケーキの上の大火事 『青年霊歌』 |
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加藤治郎(未来・ラエティティア) |
荻原裕幸の作品から一首選ぶというのは、楽しい苦行です。 話題性ということでは、ぼく自身よく引用しましたが、『あるまじろん』の「日本空爆 1991」。 ▼▼▼▼▼ココガ戦場?▼▼▼▼▼抗議シテヤル▼▼▼▼▼BOMB! 情報としての湾岸戦争をクールに解析した傑作だと思います。 さて、さんざん迷って選んだのが、「ネロのごと」です。 二十五をむかふる前夜くれなゐのカフス釦のひとつ失ふ があります。この誕生日は、二十五歳と分かるわけですし、実際の年譜的誕生日もそうですね。 前置きが長くなりましたが、この歌の見所は、「卓のケーキの上の大火事」という幻影の迫真性ですね。どうでしょう。蝋燭の灯がおそろしくデフォルメされ、めらめらと燃え上っているのがみえませんか。 表現史から見ると、この作品には前衛短歌の余光が感じられます。 |