あなた達知っていますか
あなた達の出掛けて行ったあと
あなた達を見送って
行ってらっしゃいと笑ったあとで時計を見る




帰ってくる時間を計算して
あと二時間は戻らない
二時間は泣ける
そうして涙を落としている私を
その時間に
できる限り
思い切り
泣いているのを




あなた達知っていますか
あなた達の出掛けて行ったあと
あなた達を見送って
そうして一人椅子に座る




戸締りが気になりだし家中の鍵を掛け回る
窓が気になり家中のカーテンを引き回る
息を殺して
厳重に鎧を着けた家の中の
それでも不安で
小さな部屋に篭る私を
窓の外すら眺められず
不安に怯えているのを




あなた達知っていますか
あなたたちと一緒にテレビを見ている時の私
殴り合いの場面
子供が打たれた傷




それらの場面が展開されるたびに
背中に汗が流れ
掌が震えているのを
叫び出しそうになり
涙を落としそうになり
そっと部屋を出てゆく私を
そうして恐怖に
怯えているのを




あなた達にはわからぬように
あなた達には知られぬように




私の中に植え付けられてしまった
傷跡を
絶対に悟られないように
私の中に住んでしまったもう一人の私と
じっと闘っていることを
隠すために




もう平気よ
もう大丈夫よ
もう終わったのよ
もう忘れたのよ
さあ
次の人生を





再出発の歓びの
新しい私だけを見てもらうため
知られないよう
悟られないよう
あなた達の前では
決して泣かない怯えない




けれど
教えてほしい




解放されるのか
忘却の力を持っているのか
本当の再生は来るのか
闘いは終わるのか




あなた達の知らない私を
私自身が知らなくなる日は
隠さなければならない私は
いつか消えゆくものなのか
きっと消えてしまうのか




私の中に住んでしまった
この得体の知れない影は
永住するつもりなのか




どうしても
教えてほしい

 

 

 

 

 

Photo by Noi


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