絹の雨 何に失敗しても 人生が終わったわけじゃないよって だから大丈夫だよって その老女の瞳は涼しくて 遠くも近くもよく見える眼差しで云う 遠い異国に娘を送って そして あの娘はカセットデッキと引き換えに その人生を断たれた 彼の国の裁判は この国のものとは違う 遺影を持ち込むことを疎んじたりせずに 言いたい事はないかと訊いてくれる 思いのたけをぶちまけて できる限りの憎しみを込めた瞳で あの時は だけど だけど ああそうだよ あの娘は戻らない 人間の尊厳とか 存在の価値とか それを操る魂の数だけ種類がある 自由意思という名のもとに 蘇摩 でも同じその名のもとに あの目に近づく事はできるんだろうか 抱えきれないほどの絹の雨を飲んで あの人はそれを 証明したのかもしれない |
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