さて、翌日はやっと3日目。旅行していたときは、「もう3日目」と思ったけど、こうやって記録を書いていくと「やっと3日目」という印象だなあ。。。
朝食は豪華なハムやチーズ、オレンジなどの果物が並び、朝から優雅な気分になれた。とにかく、ホテルのエスプレッソがおいしかった。朝食をさっさとすませて観光へ、という観光客が多いなか、我々は自分たちのペースが大事な方なので、朝食もやたらと遅い。たいてい、朝食終了時間前ぎりぎり(つまり9時半ごろ)にならないと食堂に降りられなかった。だからかもしれないが、毎朝すいている食堂でのんびりと朝食を楽しむことができた。ホテルは割と団体さんの多いところだったらしく、我々が食事に降りると、ロビーでは団体の荷物がどっさり置いてあることが多かった。スペイン人の熟年の団体さんが多かったと思う。日本の方には一度もホテルでは会わなかった。
この日は、お父ちゃんもお母ちゃんもなんとなくのんびりしたくて、どちらともなく、「今日はブリュッセルでお買い物」ということになった。「せっかく遠いヨーロッパまできて、お買い物で一日費やすなんて!」といつもなら思うのだが、どうもごまちが一緒だと余分に疲れるようだ。というのも、ベビーカーの移動やごまちのおむつ交換、ミルクなどで移動が中断されることがやたらと多い。ごまちのペースを守りつつ、大人も楽しむには、街でのんびりする方が得策と思われた。
さて、街歩きにしゅっぱーつ。前日寄った雑貨食料品店にまたもや寄ってミネラルウオーターや簡単なお菓子を購入。どうもお父ちゃんとお母ちゃんは街歩きの時に食料を携えていないと不安なたちのようだ。結局この雑貨屋さんには毎日朝と帰りの2回は通いつづけていた。雑貨やさんの方でも毎日来るへんてこな日本人が大量(我々にとってはあまり大量でもないが)の食料を買っていくのでおかしかっただろう。
この日も地下鉄一日乗車券を購入して、まずはルイーズ通りへ。ルイーズ通りとは、高級専門店が建ち並ぶ、ブリュッセルで最もハイソな場所だ。この家族がどうしてそんな場所へ、と疑問に思うのだが、お父ちゃんもお母ちゃんもミーハーなので、とりあえずそういうところもチェックしてみたいのだ。
地下鉄を降りてからぶらぶらしはじめ、ショッピングアーケードでお父ちゃん恒例のおもちゃやさんめぐりへ。お母ちゃんはその間つまらないので、ぶらぶらとショウウインドウを眺めたり、お店のおばちゃんがごまちをあやしてくれるのにお礼を言ったりしていた。
お父ちゃんとの旅行は好きだが、このおもちゃ屋さんめぐりがなければなあ、とときどき思う。お父ちゃんの趣味のミニカー収集のための買い付け。どの街に行っても必ず「ちょっと寄ってもいいかな?」とまあるい目をしてお父ちゃんにたずねられる。そのまあるい目がかわいくて、嫌とは言えなくなってしまう。で、仕方なくお母ちゃんは、「いちごケーキ1個」とか、「ストロベリーアイスクリーム」とか条件をつけて許してしまう。
この日もまずはおもちゃ屋さんだった。
お父ちゃんと旅行するようになって、それまであまり知らなかったおもちゃ屋さんに何軒も行くようになって、おもちゃ屋さんもそれぞれ分業されていることがわかった。一つはどこの街にも一般的にあるような、子供向けの普通のおもちゃ屋さん。それから、マニア向けのおもちゃ(フィギュアやミニカー、ブロマイドなどコレクターがほしがるもののみを扱っている)屋さん、高級なおもちゃ(例えば木でできた細工をしてあるものとか精巧にできたしかけ人形など)ばかりを扱っているおもちゃ屋さんなどである。それぞれ対象が異なり、子供向け、マニア向け、ちょっとお金持ちの大人向け、などなど。
この日最初に寄ったのが子供向けの普通のおもちゃ屋さん。そこで後述する3輪バギーを扱うお店やこれも後述するミルク屋を売っているお店の所在を確認し、その後、健全な大人向けのおもちゃ屋さんに行った。さすが高級なルイーズ通りのおもちゃ屋さんだけあって、高級なおもちゃ屋さんはすごかった。大人も十分楽しめる。例えば、手作りでできたきれいなデザインの木のおもちゃや、精巧な地球儀、マリオネットなど、どれもかなり出来がよくて高価だった。みているだけでも飽きない。子供のころあこがれたけど高価で買ってもらえなかったので大人になって自由にお金を使えるようになってやっと手にいれることができる、といったたぐいのおもちゃばかりだった。もちろん、世の中には子供のころからそのようなおもちゃを与えられるしあわせな(?)子供もいるのでしょうけど。
かくいう我々もごまちのために(今はまだ少し早いけど)、幾つかのおもちゃを購入した。といってもそのお店の中では安価なものしか買えなかったけど。それに、結局選ぶものは、お父ちゃんが子供の頃欲しかったおもちゃ、や、お母ちゃんが子供の頃欲しかったおもちゃ、であった。ごまちがそのおもちゃを将来喜んでくれるかどうかはわからない。ごまちが物心つく時にはそのおもちゃが手元にある状態になるのだから、ごまちが心から「欲しい」と思うおもちゃにはなり得ないのだろうなあ。
おもちゃへの情熱というものは、そういう風に輪廻転生していくものかもしれない。(ちょっと意味が違うか。)
お母ちゃんが子供の頃欲しかったおもちゃは、自由に変化させられる、組み合わせが幾通りも楽しめるおもちゃ。絵を描くおもちゃならなおよし。積み木やパズル形式のおもちゃで自由に組み合わせられるものが好きだ。
というわけで、ごまちに購入したのは四角い積み木の各面に模様が描いてあって、模様を組み合わせていろいろな絵にすることのできるもの。他に、フランス語のABCの発音をまねできるようなアルファベットのボタンのついているもの。お母ちゃんはフランス語は全然わからないが、そういったおもちゃでネイティブの発音をきいて育つと、将来外国語を勉強するときに発音がよくなるときいたことがあるからだ。お父ちゃんはそういうあほなことを本気にしているお母ちゃんのことをいつもばかにするのだが。うちの家族の旅行中の買い物の基本は、「日本で買えばとても高価だけど現地では安価なもの、もしくは日本に帰ったら買えないもの」である。積み木のおもちゃは前者に、フランス語のABCのおもちゃは後者にあてはまるので、お父ちゃんもしぶしぶ購入を認めてくれた。
さて、この日どうしても買わなければならないお買い物の一つは、ごまちのミルクであった。ごまちのミルク。。。それはお母ちゃんが責任を持って全日程分を持ち込んだはずだった。それこそごまちの生命線。。。しかし、お母ちゃんの読みが甘かった。ごまちは普段保育園に行っているので、平日丸一日ごまちをみたことのほとんどなかったお母ちゃんはごまちの日中のミルク消費量を甘くみていたのだ。かくして、3日目にしてごまちのミルクの残量は心もとなくなってきたのだった。
ごまち、ごめん。
しかし結果的にはごまちにベルギー製のミルクを飲ませるという、なかなか体験できない経験をすることになった。まず、ベルギーではミルクはどこで売っているかを調べなければならなかった。これは意外に簡単にわかった。おもちゃ屋さんのおばちゃんにきいたのだ。
ベルギーでもミルクは薬屋さんで買うものらしい。薬屋さんは緑色の十字のマークが目印だそうだ。
かくして、我々は高級ブティックが建ち並ぶルイーズ通りで、ミルクのために薬屋さん探しをすることになった。といってもこれも意外に簡単にみつかった。普通にぶらぶら歩いていたら、ちゃんと緑色の十字マークのお店がみつかったのだ。
ベルギーの薬屋さんは、日本のドラッグストアと異なり、普通の小売店といった印象。しかし、この旅行中に薬屋さんに寄ったのはその一回きりだったので、それが標準的な薬屋さんだったかどうかは定かではない。よく、外国に行くと靴屋さんに違和感をおぼえることがある。それは、店頭には、デザインをみるだけの靴がならべられているだけで、品数が少なく閑散とした印象があるからだ。実際に試しに履いてみたい場合には店員さんに頼んで自分のサイズの靴を店の奥からだしてきてもらうわけだから決して品揃えに問題があるわけではない。同じように、その薬屋さんもやや棚の上の品物が少ない印象だった。日本では調剤薬局で同じ用な棚をみたことがある。調剤薬局でミルクを売っているというのはあまり見たことがないが。
とにかく、その薬局の白衣をきたおじいさんのような薬剤師さんにミルクがあるかどうかをたずねた。ある、という。英語がかろうじて通じるおじいさんでよかった。しかし、ほしい種類のミルクをはっきり伝えられるほどの英語力はこちらの方に乏しかったので、結構冷や汗ものだった。5ヶ月で、母乳との混合ではなくミルクオンリーで、まだほとんど離乳食を食べていない。と伝えた。
おじいさん薬剤師さんは、ふむふむとうなずきながらそれらの情報をきき、もっともらしく、「それならばSTEP2のミルクだ。」と重々しくミルクのパックを手にとって。それを見て、お母ちゃんはとりあえずはほっとした。というのは、ものすごいどでかいパックを予想していたからだ。おじいさんが手にとったのは、日本の洗剤のような大きさの紙パックだった。
日本ではミルク、とフォローアップミルクの2種類しかないミルクだが、なぜかベルギーではSTEP5まであった。とにかく、ごまちはSTEP2に相当するらしかった。
そしてあやふやな英語で交渉し、使い方もおじいさんの片言の英語とお母ちゃんの怪しげなヒアリングで何とか理解したつもりになって購入した。実際にパックの説明書きにはフラマン語とフランス語、ドイツ語しかなかった。説明書きの絵をみると、紙のパックは専用の容器に入れて湿気らないようにするものらしい。おじいさんはそんなことは言っていなかったが、旅行者だというのは一目瞭然だったので、その容器はすすめなかったのだろう。中には小さい計量スプーンがついていた。日本のミルクよりもずっと少ない粉の量でミルクを作ることができた。
とりあえずミルクを確保できたのでお母ちゃんとしてはほっとした。しかしなかなかそれを使う勇気がもてず(だってあやしげな英語どうしで購入したのだもの)、実際に使い始めたのはとうとう日本製のミルクが完全に枯渇した5日目くらいからだった。
お父ちゃんもお母ちゃんも基本的には、「現地の赤ちゃんも元気に育っているのだから」何も全部日本製である必要はないし、すべての赤ちゃん用の製品は現地調達可能だと思っている。むしろ、ミルクは、現地のものを知る機会ができてよかったとすら思ったぐらいだ。
しかし、ごまちの反応は意外に正直だった。
最初、「おや?いつものと違うな。」という顔をしながら飲んでいたが、別段変わった様子もなかった。よくミルクのメーカーが変わっただけでも飲まなくなる赤ちゃんがいるという話をきいたことがあるが、ごまちはとりあえず口にいれられたものは何でも食べる子だ。味が違うのは微妙に感じたとしてもあまり気にもとめずにごくごく飲んでいた。
舶来モノによわいお母ちゃんもとりあえず、ごまちのミルクを味見してみた。なんだか脂っこい感じがした。日本のミルクは、もっとさっぱりして塩味が濃い気がする。こんな小さいうちから味の好みもわびさびになっているのかしら?とおかしかった。西洋人のミルクは将来こってりステーキに対応できる胃袋を養成するのに
適しているものかもしれない。
というより、多分、さっぱり味の食事をする日本人のお母さんの母乳に似せて作ったミルクと、油とバターたっぷりの食事をする西洋人のお母さんの母乳に似せて作ったミルクとで差があるのかもしれないと思った。実際、まだお母ちゃんも母乳が細々とながら出ていたころ、味を見比べてみたことがある。日本の乳業会社は本当によく努力していると感心したほど味が似ていた。(最も似ていたのは、○永乳業だったと記憶している。)
さて、ごまちは6日目ぐらいから頑なな便秘をしはじめた。といっても2日ぐらいでないということは赤ちゃんにはよくあることだし気にもとめていなかった。ごまちは割と便通のよい子なので、さすがに3日目になると心配したが、まあ、そんなにあせることもないろうと思っていた。
また後述するが、ごまちの便はころころの超硬い便になっていた。ごまちは肛門が痛くて泣き叫んだ、ということがわかったのは帰国直前のことだった。
その原因がミルクだけのせいとはいわないが、どうもあの、こってり味のミルクはあやしいとお父ちゃんと語り合ったのだ。
ところで、ルイーズ通りを歩いていると、3輪のベビーカーをよくみかけた。大きい車輪が前に1個、後ろに2個ついている。アルミでできているようにみえるフレームは銀色に光って軽くて丈夫そうにみえる。しかもそこはハイソなルイーズ通り。おしゃれでお金持ちそうな人達が、かわいく着飾った赤ちゃんをのせて闊歩する姿はとてもステキにみえた。
お父ちゃんはしめたとばかりにお母ちゃんに商品説明をしはじめた。お父ちゃんの人をその気にさせる能力には卓越したものがある。「君はお店の人か?」と疑いたくなるほど、ぺらぺらと品物を説明しはじめる。お母ちゃんはのせられやすい性格のため、ついついそれにのせられてしまったこと数知れず。この日もそうだった。お父ちゃんは実はずっと前、イギリスに居た時からその3輪ベビーカーに目をつけていたそうだ。ごまちがB型ベビーカーに乗れるぐらい大きくなったら買おうと思っていたらしい。しかもそんなことはおくびにも出さず、お母ちゃんがその気になるのを待っていたようだ。
確かにこのベビーカーはかっこいい。