かえるの足
さてそうこうするうちに、日も暮れかけてきた。 ブリュージュの街をうろうろ歩き回っているうちに、とうとうかえるの足 のお店が発見できた。お父ちゃんもお母ちゃんもあまりにも量の多い昼御飯が まだ喉までつかえていて、全く食欲はなかったのだが、発見してしまった以上、 味わうしかない。というわけで、いざ、かえるの足に挑戦。
ディナーには中途半端な時間だったので、簡単にすませようと思ってそのレストラン
にはいったが、結局おいしそうなメニューにつられてついついたのみすぎてしまった
ようだ。思い出すだけでもお腹が苦しい。 さて、その内容とは。
かえるの足の唐揚げ
うさぎの足の煮物
鴨のシチュー
かえるの足は、超リアル。みただけでうげっと思ったけど、そんなことでは
お父ちゃんの奥さんはつとまらない。学生時代にかえるの足をつるして電気 刺激を与える実験をしたことを忘れるようにつとめ、ぐっと目をつぶって
かじりついた。目の前ではお父ちゃんが大喜びでむしゃむしゃかぶりついている。
そのお味はというと。意外に淡泊。鳥のささみのような味。一匹の肉の量が 少ないので、周囲のかりかりの部分とにんにくたっぷりのオリーブオイルがしみ
こんでちょうどいいお味。多分、この外観でさえなければ「おいしいおいしい」
といっていくつも食べたことだろう。フランス革命の時に亡命したお貴族様達は
食べ物がなくなってこのようなものを食していらっしゃったのだろうな、と思い
をはせることに努め、お父ちゃんの手前、2〜3本口にしたがそれが限界であった。
食べている間はおいしいのだが、その外観が邪魔をしてなかなか次に手をだ すことができなかった。お父ちゃん、ごめん。
うさぎの足も初めて食べる。これも淡泊な味だが、その分ソースがこってり
していてちょうどよくいただけた。プルーンがまぶしてある。日本で食べる 肉料理にフルーツが沿えてあってもあまりおいしいとは思わないのだが、
ヨーロッパでは肉にフルーツは普通の組み合わせのようで、よく見かける。 そして、それが、「さすが肉のことを知り尽くしている」と思わせる程良い
調和なのだ。甘いがやや酸味のきいたプルーンは、食欲をそそり肉をもりもり
食べるのに効果的であった。
といいつつ、ことのときお母ちゃんの胃ははちきれんばかり。堪能するには
ほど遠い状況だった。
鴨肉のシチューは、見た目よりもさっぱり。パンにからめて食べるのも
よかった。しかーし、残念ながら、お母ちゃんにはこの記憶があまりない。 お腹いっぱい状態だったのに加えて、ごまちがうえうえ泣き始めたからだ。
ごまちが泣くことは時間経過からある程度予想されていた。ちょうどミルクの 時間だったからだ。ごまちが起きたら飲ませるためにあらかじめ用意しておいた ほ乳瓶にミルクをつくってごまちの口にねじ込むだけでよいはずだった。
ところがこのときごまちはほ乳瓶を口に入れられてすぐにまたいっそう大きな声 で泣き始めたのだ。レストランの中はやや早めの夕食を食べる人で 少しずつ混み始めてきたところ。大騒ぎのごまちはとても迷惑だろう。 冷や汗をかきながらも、なぜ大好きなミルクを飲まないのかわからず一瞬あせって おろおろしてしまった。そういう時お父ちゃんは冷静だ。「そのほ乳瓶の臭いが 嫌なのではないか?」言われてみれば、来るときの飛行機の中でしばらく放って おいてかびさせてしまったものを使っていた。 きちんと消毒したから使えるつもりになっていたけど、ごまちはその消毒薬 の臭いが嫌だったようだ。とにかく飲まないので仕方なく新しいものをつくり かえる間、お店には迷惑になるので、お父ちゃんにごまちを連れて外に出ていて もらった。とにかく今思い出しても恥ずかしい一件だ。なぜならごまちを無用に 泣かせてしまったこと。それから、周囲の人にだいぶん迷惑をかけてしまった こと。
それでもしっかりかえるの足は堪能したしうさぎの肉もおいしかった。今度ブリュージュを訪れる時にはゆっくりとお食事を楽しみたいな。そのころにはごまちの弟か妹がいるといいのだけれど。あ、そうしたら更に落ち着いて食事できなくなるか。。。
この日は実はブリュージュは早めに切り上げて、アントワープまで足をのばす予定だった。
しかし、この時点ですでに夕方5時を軽く過ぎていた。この家族の計画にありがちなことだが、アントワープをあきらめ、ブリュッセルに早めに戻ってゆっくりすることとした。
と決めたら逆にのんびりしてしまい、ブリュージュの駅に向かう道すがらついつい寄り道をたくさんしてしまった。
きれいな組み木細工のお店。お父ちゃんはそういった細かい細工がしてある精密なおもちゃが大好き。ハンドクラフトでできたとてもきれいな燭台やくるみ割人形などがおいてあった。
ついついいろいろながめているうちに、木こりの人形を購入してしまった。お香をたくとその煙が木こりの口に加えたパイプからでてくるようになっている。よく出来た人形だった。
お父ちゃんは大好きな仕掛け人形が買えたので、ちょっと出費がかさんだことを気にしながらも満足そうだった。それでお母ちゃんも少しうれしくなった。
駅からは一直線にブリュッセルへ。結局疲れ果ててしまって、お父ちゃんの、「夕食を食べにでようよ」という言葉に反応できず、お母ちゃんは宿に直行することを選んでしまった。
3人の中で最も元気だったのは意外にもごまちだった。