「賢者の石」の7つの瓶問題を解く


これはハーマイオニーに誤りなし!の続きです.いろいろな方の意見を参考に一応決定版といえる内容にしたつもりです.

まず瓶の表記方法を以下のとおりとします.7つ並んだ瓶に向かい,左から1,2,3と番号をつけます.これを1234567と書きます.
イラクサ酒をW,毒薬をP,前進させる薬をF,退却させる薬をBとします.
瓶の配置をこの記法で書くと,例えばPWFPPWBといった具合になります.

さて,まずなぞなぞのヒントを列記します.一応日本語訳をベースとしました.

ヒント1:「毒入り瓶のある場所は いつもイラクサ酒の左」
ヒント2−1:「両端の 二つの瓶は種類が違う」
ヒント2−2:「前進したいなら」両端の「二つのどちらも友ではない」
ヒント3ー1:「7つの瓶は大きさが違う」
ヒント3−2:「小人も巨人もどちらにも 死の毒薬は入っていない」
ヒント4:「双子の薬 ちょっと見た目は違っても 左端から二番目と 右の端から二番目の
      瓶の中身は同じ味」

これらのヒントの中でヒント1とヒント4は定義があいまいです.ここで生じる疑問を列記しましょう.
ヒント1への疑問:
a.毒は3本,酒は2本ある.毒のうち2本は酒の左に置いたとして,3本目の毒はどこにおくのか?どこにおいても良いのか?
b.毒は酒の左というが,すぐ左に置かねばならないのか?一つおいて左に置いてはいけないか?
c.仮に酒を一番左端に置いたとする.そうすると,もう酒の左に毒を置くことはできない.これは許されるか?
ヒント4への疑問:
a.双子の薬というのは,酒のことか?毒は三つ子である.このヒントは「左端から二番目と右の端から二番目の瓶は酒である」と受け取って良いか?

これらの疑問になんらかの決着をつけておかないと先に進めません.私は以下のように解釈しました.
ヒント1への疑問について:
a.3本目の毒はどこにおいても良いとする.
b.すぐ左に置かねばならない.
c.酒を左端においても良い.その場合,酒の左に毒は置けないが,可とする.
ヒント4への疑問について:
a.左端から二番目と右の端から二番目の瓶は酒であっても,毒であっても可とする.
こうする理由は,酒と限定してしまうと,すぐに答えがでてしまう−つまりなぞなぞとして,面白みがないからです.

さて,これで準備が整いました.ヒントを整理して,ルールの形にまとめます.ここからは,先ほど説明した記法を使います.
ルール1:酒の直左は毒である.つまり必ずPWという並び方となる.ただし,Wは2本,Pは3本なので,1本余ったPはどこに配置しても良い.また左端にWを置くことは許される.この場合はそのWの左にPを配置する必要はない.(置けない)
ルール2:1234567の瓶配置で,1と7は異なった種類である
ルール3:1234567の瓶配置で,1と7はFではない
ルール4:1234567の瓶はどれも大きさが異なる
ルール5:1234567の瓶のうち,小人(一番小さい瓶)と巨人(一番大きい瓶)はPではない
ルール6:1234567の瓶配置で,2と6はWかあるいはPのいずれかである.

このルールを使って,解になりうる(矛盾のない)瓶配置をすべて洗い出してみます.そのために使用するルールは,ルール1,2,3,6です.ルール4と5はここでは使わず,後で使用します.
解1: PWFPPWB これは2と6をWにしたケースです
解2: PWPFPWB そのバリエーション
解3: BPWFPPW 2と6がPの場合です
解4: BPWPFPW
解5: PPWFBPW
解6: PPWBFPW
解7: BPFPWPW
解8: BPPWFPW
解9: WPWFPPB 左端にWがきた場合です
解10:WPWPFPB
解11:WPWFBPP
解12:WPWBFPP
解13:WPPWFPB
解14:WPFPWPB

これで解がすべて揃いました.ここにルール4と5を適用します.まず,小人と巨人の瓶が配置されるパターンの数はですから,21通りです.(小人と巨人の区別はしないとして−必要ないので)
小人/巨人の瓶を☆,その他の瓶を○で表記することにしましょう.配置パターンは以下のとおり.それぞれのパターンの右側に,このパターンで解があるかどうかを記載しています.
パターン1: ☆☆○○○○○ これを満たす解がない
パターン2: ☆○☆○○○○ 解が複数となる(特定できない)
パターン3: ☆○○☆○○○ 解複数
パターン4: ☆○○○☆○○ 解複数
パターン5: ☆○○○○☆○ 解なし
パターン6: ☆○○○○○☆ 解複数
パターン7: ○☆☆○○○○ 解1
パターン8: ○☆○☆○○○ 解2
パターン9: ○☆○○☆○○ 解なし
パターン10:○☆○○○☆○ 解なし
パターン11:○☆○○○○☆ 解複数
パターン12:○○☆☆○○○ 解複数
パターン13:○○☆○☆○○ 解複数
パターン14:○○☆○○☆○ 解1
パターン15:○○☆○○○☆ 解複数
パターン16:○○○☆☆○○ 解複数
パターン17:○○○☆○☆○ 解2
パターン18:○○○☆○○☆ 解複数
パターン19:○○○○☆☆○ 解なし
パターン20:○○○○☆○☆ 解複数
パターン21:○○○○○☆☆ 解複数

パターン7,14とパターン8,17の場合のみ,解が一意となり,その解はそれぞれ解1と解2です.実際に「賢者の石」でどのパターンだったかは,文中からは読みとれないですね.

結局のところ,1234567の瓶配置で,2と6に毒を置いた場合(解3から解14)では,小人/巨人の瓶をどう配置しても(どのパターンでも),解を一つにすることができません.
これはなぞなぞですから,大原則「必ず解が一つであって,それは論理的に解けなければならない」から,2と6が毒という解は否定されるわけです.

以上長々と書きましたが,どうでしょうか?