Cyber Japanesque


ほっと一息つける、ビジュアルな雑誌達。見応え読み応えあるマガジンは、新幹線の中であろうと、自室であろうと、瞬時に異次元に誘う。

そんな和風を取り扱った雑誌達を紹介します


★★★★★ ”Pen” 5/1 「男の京都 〜一見さんお断りのルールに学ぶ」 TBSブリタニカ 

 北欧ファッションやライフスタイルを基本に据える独自路線の雑誌”Pen”が、ついに日本のテーマを扱いました。切り口はずばりお茶屋を中心とする“大人の京都”。白いすっきりとした空間に都をどりのポスターがかかる御茶屋の入り口、そして夜の街に佇む舞妓さんを配した表紙はセンス良し。なぜか、和風テーマを主にしながら最終号は北欧をテーマにした雑誌”太陽”との呼応を感じる。

 ページを繰ると裏表紙はPRADAの海辺の晴やかな3人の男女。うーん、この落差はなかなか心地良いぞ。そしてページをさらに繰ると、いよいよ特集ページへ。おっといきなり見開きでの“一力”の芸妓さんが金屏風でお出迎えです。次ページには「一見さんお断りを突破する方法は?」と普通の人でも頼りにできる紹介者の情報です。

 ちなみに、1.京都伝統技芸振興財団(075-761-5587)、2.おおきに財団友の会(075-561-3860)、3.京都倶楽部、などの紹介システムがあるそう。

 いよいよ、忠臣蔵でもでてきた”一力茶屋”へ。

 「男にとっては、一力に出入りできるだけで、ひとつのステイタスだ。へたなプレゼンテーションより、一力に客を連れて行くだけで、株は上がる。’いつもご贔屓に’の女将のひとことは、夢の世界への招待状であると同時に、リアルな信頼を保証する決定的なセリフであることを知るべきだ。・・・」 うーむ、殺し文句ですね。

 「実際一力の座敷は大変シンプルにできており、余計なしつらえはない。芸妓の存在も、芸と会話のためにそこに居るわけであって、逆にいうとそれ以上のことはないのは当たり前。客も楽しく盛りあがって、きれいに飲んで、さっと帰る。」うーむ、このシンプルさも良いね。

 女将の言葉。「一見さんお断りというとキツイようすけど、おもてなしできるお人数には限りがおすし、祇園町300年を越す伝統文化として守るためにも、このことをご理解下さる方と息の長いお付き合いを、ということなんどす。」こうポリシーがはっきりしていると、気持ち良いですね。迎合しがちなこの世の中、応援したくなります。

 吉兆のHPなんかも実はあるのですね。なかなかこだわりが伺えます。

 ということで、祗園、宮川町、先斗町、上七軒・・・と料亭からお茶屋バーまで、その思想と文化の紹介が、程好く硬質な文章でなされるのが心地よい。この盛りだくさんの内容で500円とは、頭が下がります。男、女にかかわらず、一家に一冊、永久保存版でございまする。


★★★☆☆ いい人生の遊楽誌 ”オブラ” 講談社

 明確に50代をターゲットにした雑誌。”サライ”に端を発し、“一個人”、”男の隠家”と続いたところで、いよいよ大出版社が団塊の世代を狙って発行。いや私はまだ30代なのですが、これが男性一般誌の中ではなかなかおもしろく読めたのです。

 まず特徴は、女・服・車のうち、女は篠山紀信が萬田久子を撮っているのみで、服と車についてばっさりと切り落としているところが潔い。車はカローラのタイアップ企画が、あったか。ここは改善点か。せめてVOLVOぐらいにしてほしいか。でも、この姿勢は良いね。

 二点目は、”楽問のススメ”というタイトルで、広く浅く興味を気づかせることを中心に、記事が短くまとまっている点か。当然自分の詳しい分野に対しては非常に物足りなさを抱く事は否めないが、忙しく趣味も無く働き続けてふと我にかえる団塊の世代の人には良いか。コピーライターの仲畑貴志の“骨董とは怪しの世界をじっくりとみつめる深い旅”という企画も良いし、“男の始まりは実は50の顔である”と50代の本音をのせるのも強気と弱気が混在していて良い。

 三点目は、篠山紀信が”日本温泉写真館 女湯”と称し、萬田久子の着物姿・入浴姿を撮っているのが美しい。そうですよ、私はこういう女性のしっとりとした姿が美しいと思い、写真に残したいと思っていたのですよ。”蓬莱”で撮っていると言うのが、いかにも篠山らしく計算しつくされており、ちょっと気にはなるが、拒むことはできない。

 不毛に近かった男性誌の中では良いと思うが、しかし30代で50代向けの雑誌を気に入ってしまう私って・・・(笑)。まあ、普通の人より20年はやく粋や色香のあることを悟る事ができるのだろうと割りきって楽しむとするか。

 


★★☆☆☆ 「私は日本の女です!」 FRAU 1/9号 講談社

 Frauに連続で玉三郎さんが載ると聴いており、その二回目は「和風」特集とのことで期待したが、少々がっかり。いえ、”ザ・歌舞伎座”の特集は良かったのだが、”小泉今日子+渡邊サブロオ 新日本美探訪”という特集が・・・。小泉今日子の肌の色が少々黒ずんでおり、化粧も随分とケバイのである。わざと不健康そうな青とオレンジのアイシャドーやマスカラを塗り、赤のホットパンツ、黄色いワンピース、紫のソックス・・・それに京都の町屋の趣のあるたたずまいを背景に持ってきても全然似合わないのである。昔は小泉今日子にも輝いているオーラはあったと思うのだが。近々「風花」という相米監督の映画で行き場の無い風俗嬢役を演ずるはずだが、まるでそのイメージ。Frauというのは20代後半から30代後半をターゲットとする雑誌だと思うが、他の”Cat Blues”という、都はるみに黒いドレスを着させた廃墟の写真も、写真が醜いのである。うーむ、雑誌編集者の感性を大いに疑う2つの最悪の×企画であった。

 さて気を取り直してみると、”ザ・歌舞伎座”という特集は○。1/10に発売される篠山紀信の「ザ・歌舞伎座」という写真集からの抜粋と玉三郎さんの歌舞伎紹介文で構成されている。「歌舞伎の舞台って、サービス精神にあふれているというか、それこそ裸こそ見せないけれども、もう犯罪という犯罪は演目のテーマとしてやってきているし、姦通もあるし、それがエキサイティングでないわけはないですよね・・・」というようなざっくばらんな語り。おお、玉三郎が歌舞伎に目覚めたは子供の頃、歌衛門さんの「籠釣瓶」であり、玉三郎の原点らしい。この作品は明治になってから書かれているので、色・怪・裏切り等の要素が全て入っており、かつ古典様式としてもきちんとできていると、玉さんも語っている。カルメンもファム・ファタールになぞらえている。籠釣瓶は、昨年12月に玉三郎と勘九郎の舞台を観て以来、私が絶賛しているので、玉三郎の原点と聞き、妙な符合がうれしい。篠山紀信の写真は、突き放したクールさがあるので好き嫌いの別れるところだが、さすがにとても上手いです。玉三郎のようなクールさ・高貴さとは合っているかも。佐藤友紀さんという方の紹介文もなかなか良いが、1/10発売の写真集(3,000円)は大いに期待できそう。

 他には、テニスプレーヤーの伊達公子さんの京都案内が、自然で肩肘張らず良いぞ。以前住んでいたと言う京都に対する愛情溢れております。小泉今日子より伊達公子さんの方が、女性として美しいし数倍美しく感じるのは、私だけであろうか・・・・。


★★★☆☆ 「おとなのOFF」 日経トレンディ12月号別冊 日経ホーム出版 

 桃色のキモノを召した祇園の佳つ乃さんのしっとりとした写真が目に飛び込み、思わず手に取ってしまう。(単純ですな・・・笑)。

 切り口はおもしろいぞ。「愛する人との宿」という企画では、二人で訪れ10万円以内で住む最高の宿を探す。加えて、”ふたりで本当に泊まって選んだ”ということで、1回目に男の記者と女のカメラマンが普通の客を装い訪れ、2回目に趣旨を話し取材。なかなか凝っていますな。箱根の奈良屋旅館、熱海の蓬莱、湯河原の石葉、城崎の西村屋本館、なんかが並ぶ。”離れ”のある旅館もいいですな。私もしっぽりと泊まってみたいもの。いったい、誰とだろう(苦笑)。

 と冗談はさておいて、ここは「New 50's」というサイトも立ち上げているので、本格的に熟年層を狙って雑誌の投入を図って行く模様。”遊びをせんとや生まれけむ”という言葉は、心のつぼをつきますね。その第一弾として、この「おとなのOFF」は発刊されたようである。他のテーマも「こわくない鮨の名店」という事で、味や店の紹介の他に、きちんと総費用も載せていたり、「カジノ in ラスベガス」という事で、ブラックジャックやスロットマシーンなどの初心者向けの遊び方まで載せたり。要するに、遊び心は持っているが、40代まで高度成長期を真面目に過ごし、家族の為に働き、遊ぶ暇の無かった男性への、遊び入門誌 熟年向けのHow to 本というべき内容である。

 しかし、裏を返せば、もっと若い世代の男性にとっては、別に50代になるまで待つ必要は無く、上質の遊びの入門書として参考にすれば良いだろう。子供っぽい遊びや風潮が氾濫する中で、おもしろい豊かな大人の遊びを、熟年以上に独占させておくては無い。私達も、楽しめば良いのである。そういう意味では、今後もこの手の雑誌やムックに期待します。

 残念なのは、広告が完全に大衆なのですよね。もう少し向上心ある事物を扱った広告を載せられなかったのですかね。車もカローラですものね。ジャガーやアルファロメオとは言いませんが、ここらへんはGQやBRUTUSを見習って欲しいもの。でも、この日経の大衆感が、部数を売る秘訣か・・・!?


[Cyber Japanesque Home]      01/06/25 04:01