オーディオは楽し〜青春編


-その2-

今回はテープデッキのお話。

何かを録音するという作業は小学校時代から好きでした。
テレビで歌番組やっているとそのテレビの前にテープレコーダーを持っていって録音したものです。
「いしだあゆみ、じゅんとネネ、小柳ルミ子、ピーター、渚ゆう子」...当然テレビの音をマイクで拾うので周囲で音がしてはいけません。
家族には「沈黙」を強要します。
この頃のレコーダーはオープンリール...と言っても「ガシャンガシャン」とレバーを回して操作するモノラルの前時代的物品でした。
カセットは次の時代に登場するニューアイテムです。
カセットが登場した時はあのスマートさに驚愕いたしました。

そんなカセットレコーダーがついに我が家にやってきます。
National社のラジカセ。
当然モノラルです。
でもマイクを使わずにラジオから直接録音できるのだ!!
そんな今や当たり前のことに感動する時代でした。
考えようによってはすごく幸せな時代であったかも知れません。
日曜朝のラジオ番組で歌謡曲のベスト10みたいなのがありました。
ロイ・ジェームスさんの司会です。
それから中学時代は平日夜やっていた「欽ちゃんのドーンといってみよう!!」(テレビでなく最初はラジオだったのです)。
これらには大変お世話になりました。

そしてマイクに向かって自分の演奏などを録音してみたりもします。
例えば音楽の教科書に出ているリコーダーの二重奏の1パートを録音し、それを聴きながらもう一方のパートを吹いて楽しむ「一人二重奏」。
さらにそれらを重ねて録音(いわゆるピンポン録音)して「一人四重奏」などまでやっていました。
昭和40年代から多重録音をして楽しむ最先端マルチトラック少年だったのです。

というわけでその後買った初のステレオテープデッキはSony社の通称「カセットデンスケ」でした。
録音好きの私なのでここばかりは大奮発です。
一度友人と連れだって電車の音を録りに行きました。
ステレオマイクを知り合いから借りてヘッドホンをして肩から提げたデンスケで録るのですよ。
サイコーにカッコイイです。
大人の本物の生録ファンは迫力あるSLの音などを録るのが常でしたが、私たちはそんな遠くに行けないので、家から自転車で15分くらい走ったところにある私鉄の線路でした。
線路の継ぎ目と自分たちの位置関係をいろいろ工夫ながら何回も録り直します。
もう気持ちはプロのレコーディングエンジニアです。
「もう少し線路に近づいた方がいいぞ」「あの踏切の音をうまく取り込もう」「各駅と快速じゃ音が全然違うぞ」...何時間やっていたか覚えてません。
しかし家に帰ってから聴いたその音はあまりにも貧弱で情けないものでした。
「な、なんだ?」現場のヘッドホンではその場の雰囲気もあってそれなりに聞こえていたのに、部屋の中ではSLの様な迫力など何もなく、ただ目の前を私鉄が走るむなしさ...。
5分も聴いてられない内容でしたね。音楽以外の生録はこれが最初で最後になります。

さて、いよいよ純粋オーディオの話に戻ります。
前回、カタログを見て楽しんだ話を書きましたが、テープデッキはオーディオ製品カタログの中でも王様のような存在でした。
そう、10inchのオープンリールデッキです。
あの存在感は並のものではありません。
4チャンネルのものは大きなメーターが4つも並んでいます。
さすがにカタログでは動くところが見えませんが、わざとシャッタースピードを遅くして、まるでリールが高速で走るスポーツカーのタイヤのようにぶれて写っているものがありました。

「うお〜!!凄い!!」

別に早く回転したからどうだというモノではないし、逆にスポーツカーのタイヤみたいに回られたら困っちゃうと思うのですが、高級オープンリールデッキに手が出ない中学生には感動そのものです。
細かな金額まで記憶していませんが、たぶん大人の人の一ヶ月分の給料より高いものも多かったでしょう。
そんなのは100%無理なので結局は前述の「デンスケ」に落ち着きました。でもデンスケ君は私が持つお安いコンポ群の中では超高級品でした。

さて、生録を失敗した少年はいよいよエアーチェックの世界に入ります。
あっ、もちろん日曜朝の歌謡ベスト10や「欽ドン」もエアーチェックではあるわけですが、AMとは比べものにならないFM放送の高音質で本物の音楽放送を録る訳なので、録る時の緊張感も大変なものです。
カセットテープのランクもノーマルからクロームテープ、フェリクロームテープなどさまざまでしたが、音楽を録るには良いテープでなければならないと考えていた少年はノーマルテープ2本買うよりクロームテープ1本の道を選びます。

さあ、明日の夜は「ニニ・ロッソ Live in Japan」、ニニ・ロッソ氏のファンであった私には大変貴重なライヴ放送です(確か生放送)。
しかし、ここで大問題が発生してしまいます。
暇があればオーディオのセッティングをいろいろと変えて楽しんでいた事がその大問題を生むことになろうとは...。

(2004.03.07記)

arioso

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