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Caro Diario(親愛なる日記)

この映画はイタリアはもちろんフランスでもヒットしたらしい。
カンヌ映画祭で監督賞をとったし、フランスのカイエ・デュ・シネマ誌ではベスト映画に選ばれている。
だから、日本でも扱いが前作に比べ大きかった。大きな映画館でロードショウ公開され、初日はほぼ満席状態。(東京)
わたしはひいきにしていたため何度か行ってしまったが、日本でヒットしたとはいえなかったようだ。
というのは、ビデオが発売されていないからだ。これだけ大々的に公開したのだから・・・と期待していたのだが。

さて、前置きはこのくらいにして、本編である。

わたしはこの映画をとてもおもしろいと思っている。好きな映画である。
3部構成になっており、どれも視点がそれぞれではあるがモレッティらしさがでている。
しかしながら前作までさんざん見せつけられてきた変人ミケーレは出てこない。
ミケーレの原型といえるモレッティ本人が、たぶん本物とあまり変わらず出ている。
多少は靴フェチなところを見せたり、映画評の事で文句をいいにもいくが、かなりトーンは抑え目だ。
2話めの「島めぐり」などは、ほとんど脇役になってしまっている。
そして3話めは実話に基づいているせいか淡々としている。これはみんな病み上がりのせいなのか?
このような雰囲気は誰もが楽しめる映画になっている。そう思ったのだが・・・。

1話め「ベスパ」はローマをベスパでめぐる話である。
夏のローマには人がいない、といわれても観光地ローマのことだからいるところにはいそうだが
このフィルムを観るとほんとうに人がいない。地元の生活圏にはほんとうに誰もいないのだろう。
自由自在に乗り回している様子はきもちがいい。
そしてローマのガイドブックには決して載らないタイプの場所を案内してくれている。
家を見るのが好きだ、とモレッティは言うが、ほんとうに家というのは生活感を忍ばせていておもしろい。
この映画を観て改めて家並みに注目するようになった。
「踊りたい!ジェニファービールスが憧れなんだ!」というモレッティは特にいい表情である。
わたしがこの映画で覚えた台詞は「come invidio!」(うらやましい!)である。
そして好きなシーンも、ラテンバンドと歌いステップを踏むシーンである。彼が踊るのも歌うのも好きだから。
美しい厚手のノートに記される日記を再現し、繰り広げられる景色はどれも美しい。
多彩な音楽にのせて彼のローマ好きの一端を共感することのできるフィルムである。

2話め「島めぐり」は風の諸島とよばれる島々を巡る話である。
島というのは個性の出やすいところであろう。
彼が友人と船で巡るのはどこも個性的な島々である。
しかしそれを織り交ぜながら全体を通して語られるのは友人のテレビについてのこだわりである。
モレッティじしんはテレビ好きなのではないかと思う。たぶん一般イタリア人も。
テレビというのは見なくてもいいものかもしれないが、見始めると延々と見てしまう恐れのあるものだ。
モレッティが頼まれてアメリカ人に英語で尋ねるシーン、
サリーナ島で公衆電話で幾人もが子供に手を焼いているシーン、
そしてはじめの方でモレッティがバールでTVを見ながら踊るシーン、
以上が笑い所であり、好きなシーンでもある。

3話め「医者めぐり」は実体験に基づいている。
冒頭でのシーンはドキュメントのようである。
医者に渡された薬の処方箋をきちんととってあるところが彼らしいと思った。
とにかく医者によって見立ても処方も違うというのが恐ろしい。
指定される薬の量もかなり多すぎる。こんなものなのだろうか。
特に皮膚病ということがそうなった原因であろうが、たぶん日本でもこんなことはありうるだろう。
精神的なもの、そういわれてモレッティは腹を立てる。あたりまえである。
最終的によい結果となったからいいようなものの、本当につらい日々を送ったのだと同情してしまう。
それにしても、どんな薬も風呂もマッサージも鍼治療もみんな効かなかったなんて、そんな病もあるのだ。
とにかく、無事生還してくれたモレッティに心から拍手を送りたい。Bravo!


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