他車との比較 その1

コルベットvs国産2.5リッター4ドアセダン

 国産の一般的サイズの車と比較してみよう。コルベットが大柄で低燃費だという誤ったイメージが払拭できると思う。

 今回戦う相手はマツダのミレニアという少々マイナーな車だ。グレードは25MSという2.5リッターDOHC 24VALVE(N.A),4ATのFF車だ。別にわざとマイナー車種を選択したわけではない。身近にある車種を選んだだけなので悪しからず。また、4ドアセダンと比較するのも少々無理があるが、巷に走っている普通の車と比較する方がその差が分かりやすいと思う。セド・グロ・マーク2レベルと思っていただければ良い。



第一回戦 寸法・重量

 

コルベット

ミレニア

全長(mm)

4706

4825

−119

全幅(mm)

1753

1770

−17

全高(mm)

1220

1395

−175

ホイールベース(mm)

2489

2745

−256

トレッド(前)(mm)

1491

1530

−39

トレッド(後)(mm)

1511

1530

−19

最低地上高(mm)

110

140

−30

車両重量(kg)

1480

1440

+40

 表をご覧になって分かると思うが、殆どの数値がミレニアを下回っている。コルベットは見た目以上にコンパクトなのだ。特にホイールベースは25cm強も短い。それ故、取り回しも軽快で、クイックなハンドリングが楽しめるのだ。

コルベットはコンパクト

ミレニア

 同一スケールで横方向から撮影した物だ。コルベットが非常にコンパクトであることがうかがえる。コルベットの運転席は、ミレニアのリアシート辺りにあるところは注目!!

前方投影面積

 写真を見ての通り、前方投影面積が小さいことがよくわかる。しかし、その派手なデザインによりcd値はさほど良くない(当時は平均レベルだったか?)。よって両者の空気抵抗はほぼ互角と言えるだろう。ミレニアのcd=0.29に対し、コルベットは0.443とかなり上回っている。このミレニアのcd=0.29という値は驚異的数値だと言えよう。よく実験されてデザインされたことが伺える。cd=0.29と言う値は、最新のC5コルベットでようやく実現した数値だ。しかも、現存のアメ車で最も小さい値なのである。フェラーリのマラネロでもcd=0.33程である。あのピニンファリーナが千数百時間にも及ぶ風洞実験を繰り返してやっと得た値を、4ドアセダンでいとも簡単に凌いでしまっている。この値だから、国産車の高性能さの一端が伺える。このあたりは日本のメーカーでないと実現しないであろうと評価できる。
 最近の車は、フロントウインドウを極端にスラントさせる傾向が強いが、実はある程度角度を立てても空気抵抗でロスすることはほとんど無い。格好悪いということで国産デザイナーは採用しようとしない。スラントされた車は、見た目だけでデザインされるので、視界の悪化と乗降性の悪化を招いている。
 また、コルベットのサイドミラーは車幅からはみ出していないので、実際の車幅を比較した場合20cm以上も小さいのだ。



第二回戦 足周り

 

コルベット

ミレニア

サスペンション(前)

ダブルウィッシュボーン
+コイルスプリング

マルチリンク
+コイルスプリング

サスペンション(後)

トレーリングアーム
+横置きリーフスプリング

マルチリンク
+コイルスプリング

ショックアブソーバー(前後)

ド・カルボンタイプ

テレスコピック

スタビライザー(前後)

トーションバー(後ろオプション)

トーションバー(前のみ)

ブレーキ(前)

対向4ポッド・Vディスク

2ポッド・Vディスク

ブレーキ(後)

対向4ポッド・Vディスク

1ポッド・ソリッドディスク

タイヤ(前後)

225/70R15

205/65R15

ホイール(前後)

15*8J

15*6J

 足周りを最新国産と比較するのは少々酷だが、当時はアメ車唯一の4輪独立懸架であった。足周りは国産には敵わないだろう。特にサスペンションは最先端だ。マルチリンクは日本の独壇場だ。
 車とは少々世界が異なるが、バイクの世界でヤマハのモトクロッサーに採用されたモノクロスと呼ばれる1本サスから、サスペンション革命が巻き起こったと言っても良いだろう。カンチレバー式のスイングアームに取り付けられた1本サスは、よりレイオフして取り付けられるため理想的なプログレッシブ効果を生みだした。サスがフレーム内部に配置され、外から見えにくかったためモノクロスがデビューしたときは「このバイクはサスペンションが付いていない!」と皆驚愕したものだ。プログレッシブ効果としなやかさを追求するため、このモノクロスからマルチリンクサスへと進化していくのだった。
 少々話が横道にそれたが、バイクのマルチリンクが、しなやかさと硬さを同時に求めるように進化したのと同様に、車のマルチリンクはあらゆる加重入力に対して、常に正しいアライメントを確保できるように進化していった。
 ちなみに、量産車のアーム類にアルミを使用したのはC4コルベットが世界初であり、鍛造品を用いたのもコルベットが世界初であった。
 ブレーキはスポーツカーらしく4輪対向4ポットのベンチレーテッドディスクだ。しかし、その設計は古く、キャリパーは鉄で出来ていたりして時代を感じさせる。ストッピングパワーに不満を感じることは無い。
 タイヤも70扁平と時代を感じさせる物だが、発売当時60扁平のタイヤなど殆ど世の中に出回っていなかったように記憶している。フェラーリ365BBでさえも70扁平の筈だ。
 ホイールも15インチと言うと、当時はレーシング仕様と言っても良い物だ。13,14インチが当たり前だった。
 このように、足周りに関しては時代の流れに逆らうことが出来ないため、少々プアーに感じられるかも知れない。対向4ポットキャリパーを装備する車は一部のスポーツカーに限られる。ちょっと自慢できる部分でもある。



第三回戦 エンジン

 

コルベット

ミレニア

種類

水冷V型8気筒OHV16バルブ

水冷V型6気筒DOHC24バルブ

内径*行程(mm)

101.6*88.4

84.5*74.2

総排気量(cc)

5733

2496

圧縮比

8.2

10.0

最高出力(ps/rpm)

190/4200

200/6500

最大トルク(kg-m/rpm)

38.7/1600

22.8/4800

燃料供給装置

キャブレター

電子制御燃料噴射装置

燃料及び燃料タンク容量

無鉛レギュラー・90

無鉛プレミアム・68

 オイルショックの影響で最高出力190psとプアーだが、僅か1600回転で40kg近いトルクを発生するのはさすがである。これらの数値はノーマルのカタログスペックだ。私のコルベットはアルミヘッド化するなどして圧縮比も上がっておりパワーアップしてあるのだ。
 コルベットはOHVエンジンで「ダサイ」と思われるかも知れない。本当にダサイのだろうか? V型でDOHCを構成するとカムは4系統必要になる。単純にOHVの4倍のフリクションが発生している事になる。カムの回転マスも無視できない。少なからずハンドリングに影響を及ぼす。ラグジュアリーカーにDOHCなど絶対に必要ないのである。購入した何%の人が、4800回転もの最大トルク発生回転域を使用するだろうか?メーカーにリサーチしてもらいたいものだ。
 このように、一見ダサイOHVであるが非常に軽く作れ、ヘッドが低い分低重心化にも貢献する。最新のC5コルベットが未だOHVを採用しているのが良い例だ。
 回転馬力を得て、パワーとメカニズムで消費者を騙しているエンジンと、本物の腹の底から湧き出るパワーを持ったエンジンと、あなたはどちらを選ぶ?



第四回戦 燃費

 

コルベット

ミレニア

市街地

4〜5km/L

6〜7km/L

高速

7〜8km/L

9〜10km/L

 アメ車であるが故、まず槍玉に挙がるのが燃費のことであろう。表は、一般市街地と高速道路を走って、満タン法によって算出した物である。
 排気量は2倍以上なのにも拘わらず、遜色無いことが分かる。3速ATでもこれだけ走るのだ。一方、ミレニアは無駄にDOHCなど採用するためエンジン重量増とフリクションの増加を招いた結果でもある。
 このように、一昔前のアメ車はリッター100mなどという噂は、単なるデマであったことが考察できる。今のキャディラックなどはリッター15km近くも走ってしまう。今や国産車の方が燃費が悪い場合が多いのだ。

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