2002年読了本リスト(毎月初め頃に更新)

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 7月 8月 9月 10月 11月 12月


 今年読んだ本のリストです。


1月の読了本
1  『幻のヴァイオリン』      アン・ライス
2  『仄暗い水の底から』      鈴木光司
3  『マタニティ&ブルー』     和田はつ子
4  『黄昏の罠』          愛川晶
5  『消える密室の殺人 猫探偵正太郎上京』
                   柴田よしき
6  『博士邸の怪事件』       浜尾四郎
7  『双頭の蛇』          今邑彩
8  『モンティニーの狼男爵』    佐藤亜紀
9  『光と影の誘惑』        貫井徳郎
10 『黒い仏』           殊能将之
11 『魔羅節』           岩井志麻子
12 『だからドロシー帰っておいで』 牧野修
13 『エディプスの市』       笠井潔
14 『模倣犯 上』         宮部みゆき
15 『模倣犯 下』         宮部みゆき

 今年もたくさん読みたいものですね。

 今年初はおなじみアン・ライス。正直言ってちょっとピンと来ず。なんで突然、ヴァイオリンが上手く弾けるようになんの? ベートーヴェン登場も、ちょっと悪のりしすぎに感じました。

 『蛇』シリーズもついに3作目、今邑彩。辛うじて一話完結の体裁をとっていた前作のスタイルも完全に放棄し、純然たる続き物へ移項した模様。おかげで今回は……なんか前ふりだけで終わっちゃった感じ……。次巻当たりで終わるとしたら、よっぽど盛り上げてくれないとここまで前ふりした意味がなくなってしまいまっせ。前作同様、途中で延々と評論が続いたのにも閉口。

 貫井徳郎『光と影の誘惑』。面白いんですが、ネタみえみえのいつものアレはちょっと飽きた。殊能『黒い仏』には大爆笑。なるほど、こりゃ問題作だ。この人の書くものは話に関係ない人物描写が面白かったりするのだが、今回もキャラの意味不明さが圧倒的。「ザ・ワールド! 時よ止まれ!」

 『ぼっけえ、きょうてえ』よりも遥かに面白かったです、『魔羅節』。短編集は各作品がバラエティ豊かでないとだれる。収録作では『きちがい日和』『おめこ電球』が特に良かった。


2月の読了本

16 『有限と微小のパン』      森博嗣
17 『妖恋花』           森真沙子
18 『ベルゼブブ』         田中啓文
19 『CROOK 3』       藤木稟
20 『鏡の中は日曜日』       殊能将之
21 『光る地獄蝶』         愛川晶
22 『死体を買う男』        歌野晶午
23 『Kーパックス』        G・ブルーワー
24 『ミステリーズ<完全版>』   山口雅也
25 『彼方の悪魔』         小池真理子
26 『スティンガー 上』      R・マキャモン
27 『スティンガー 下』      R・マキャモン
28 『殺人症候群』         貫井徳郎

 病気で寝込んでましたが、読書量は別に変わらず。なぜ?

 ようやく全部読み終わったぞ、S&Mシリーズ森博嗣。どんどん分厚くなっていたわりにはさほど手間取らずに読めました『有限と微小のパン』。ドクターMの再登場もそれなりに面白かった。

 田中啓文先生に突撃してサインをもらった『ベルゼブブ』、こんなもん水疱瘡にかかってる時に読むなんぞ、オレはどうかしておる。ううう、虫がオレの背中を這い回る……ああ気色わりい。虫なタイトルが続くぞ『光る地獄蝶』、なかなかこの作者はグロいネタを詰め込んでていい感じです。が、ちょっとキャラクターが恥ずかしいぞ。

 『鏡の中は日曜日』も面白いです。アンチ名探偵小説とでもいうのか、全然活躍しない主人公とともに名探偵の要素を解体していく様は受け手にとってはある意味ショッキング……なのか? まさかね。ちっとも嫌味なとこがなく、書き込みと芸の細かさで『名探偵の掟』なんかよりは遥かに出来がいい。

 どうもここ最近の二作は乗れないんだねえ貫井徳郎『殺人症候群』。これだけテーマが重厚になると、罪には報いが下る予定調和ぶりがちょっと受け付けない。小説的必然だから別にいいんですけど、あまり構造が見えてしまうのも考えものですね。途中のいつものトリックは、延々キャラのバックボーンを「読まされている」気分になるのを解消するのには一役買ってます。


3月の読了本

29 『グッドラック 戦闘妖精雪風』 神林長平
30 『R-0 Bete noire』       柴田よしき
31 『ブレイン・チャイルド』    J・ソール
32 『刻Y卵』           東海洋士
33 『七週間の闇』         愛川晶
34 『SFバカ本 天然パラダイス篇』アンソロジー
35 『家康暗殺 謎の織部茶碗』   森真沙子
36 『水の翼』           小池真理子
37 『CROOK 4』       藤木稟
38 『転生』            貫井徳郎
39 『したたるものにつけられて』  小林恭二
40 『死の教訓 上』        J・ディーヴァー
41 『死の教訓 下』        J・ディーヴァー
42 『ルチフェロ』         篠田真由美
43 『伊賀の聴恋器』        山田風太郎
44 『眩暈』            島田荘司

 ラスト一行では完全に泣いてしまった『グッドラック』、いいなあ、雪風は。アニメ化されるそうですが、メカ好きにはたまらんですよこれは。メイヴのデザインはちょっと無骨っぽくて……ああ〜かっこいい。

 実は和田はつ子『木乃伊仏』の元ネタ(つうかパクり元)だったらしい『ブレイン・チャイルド』。中盤まではダラダラしてましたが、人が一人死ぬと一気にテンポアップ。しかしどっちみちバカネタ設定なのだが、それでもやはりオリジナルの方が面白いんだな。こっちの方が書き込まれてて、作家としての力量の差は歴然か。

 肌触りが伊藤潤二のホラー漫画を思い起こさせる『したたるものにつけられて』。疾走感がたまりませんよ、これは。怪奇小説は短編がやっぱり面白いなあ。

 その他、色々読んだような気はしますが、どの作品も同じ作家なら他のあの作品の方が出来がいいよ〜ってなものばかり。まあこういう月もありますなあ。


4月の読了本

45 『蘆屋家の崩壊』        津原泰水
46 『僕を殺した女』        北川歩実
47 『闇の惨劇』          J・ソール
48 『自動車社会学のすすめ』    島田荘司
49 『RIKO 女神の永遠』    柴田よしき
50 『グローリアーナ』       M・ムアコック
51 『日本国の逆襲』        小林恭二
52 『男たちのための寓話』     石上三登志
53 『月のない夜に』        竹河聖
54 『CROOK 5』       藤木稟
55 『ifの迷宮』         柄刀一
56 『化身』            愛川晶

 ついに気ままな読書三昧の日々ともおさらばか……。

 『蘆屋家の崩壊』は大ヒット。怪奇小説として実に密度の濃い空間を生み出し、読者をその世界に引きずり込む。この濃密さの前には倉阪鬼一郎の切れ味も、一歩を譲らざるをえないか。

 初読み北川歩実。こういうひねってひねってひねりまくった本格ものは、いくら無茶な設定でも読んでて楽しいものです。ただ主人公の身体性を描くところで、良く描けてるとことそうでないとこ、ミステリ的展開のために意図的にレベルをずらして書き分けてるような気がするが気のせいか? 苦手なんですよね、トリックに奉仕するための設定や文章って。結局、僕は本格ミステリファンにはなりきれないのかも知れない。

 かつて白き狼エルリックや緋色の公子コルムの活躍に胸を熱くした者にとっては、実に懐かしかった『グローリアーナ』。いえね、先に挙げたシリーズとは全然肌合いも何も違うんですけど、「クシオムバーグ」とかそういう単語が出てくるだけで、ああ、もうファンにはたまらん! 適当なエログロさも素晴らしい。

 めでたく完結『CROOK』。どうも最後まで資料の内容をそのまま登場人物に喋らしてるような密度の薄さは変わらず。ヒロインの造型はアンチヒーロー的で(ヒロインはヒーローにはなれないがアンチヒーローにはなれる、という説を石上三登志の向こうを張って構築できないか)鳥肌もののかっこよさなのだが、書き込みの薄さがぶち壊しにしている。あ〜あ〜これ一冊にまとめてさ〜もっと練り込んでさ〜時間かけてちゃんと文章書いてくれたらな〜。面白い題材なのに……。藤木稟仕事しすぎ! このままでは探偵朱雀が最後の砦になってしまうぞ……。


5月の読了本

57 『化粧坂』           森真沙子
58 『バベル消滅』         飛鳥部勝則
59 『嗅覚異常』          北川歩実
60 『恐怖配達人』         小池真理子
61 『血の十二幻想』        アンソロジー
62 『失踪者』           折原一
63 『世界の終わり、あるいは始まり』歌野晶午
64 『陰陽師鬼一法眼 切千役の巻』 藤木稟
65 『スパイラル2 鋼鉄番長の密室』城平京
66 『傀儡后』           牧野修

 何とか二桁はキープ。

 初読み飛鳥部勝則。しかし著者近影の勘違いしたナルシシズムが不気味だ(人のこと言えるんか)。本そのものも低調。主人公の警備員のプッツンが熱かったぐらいで、あとは退屈。こんなのトリックって言うのかね。

 またも贈呈本をもらってしまった『スパイラル』。今回も結構面白かった。個人的には前作の方が好きですが。アームチェアってネタが面白ければ面白いほどもったいないって気分になっちゃうのよ。

 相変わらず世界観が秀逸な牧野修。ちょっと登場人物が多過ぎな感じですが。『呪禁官』みたいな半端に爽やかな話は嫌いなので、今作の快速球ぶりは楽しめました。


6月の読了本

67 『長靴をはいた犬』       山田正紀
68 『樒/榁』           殊能将之
69 『あたしのマブイ見ませんでしたか』
                   池上永一
70 『金のゆりかご』        北川歩実
71 『砂漠の薔薇』         飛鳥部勝則
72 『バカラ』           服部真澄
73 『館という名の楽園で』     歌野晶午

 終わった……。まじでたったこんだけっすか……。

 『金のゆりかご』にはバカウケ。これはエドワード・ノートンではないですか。とにかくラスト近くの逆転逆転また逆転は、新本格ならではですなあ。後味の悪さも最高ですね。

 『バカラ』、久々の新作ですがまずまず。小説として上手くなっているのですが、題材が地味になっているという、オレ的にちょっともったいない感じ。昔みたいなスパイものは書かないのかね。


7月の読了本

74 『暗い森の少女』        J・ソール
75 『紫のアリス』         柴田よしき
76 『うわさ』           小池真理子
77 『海の仮面』          愛川晶
78 『猿の証言』          北川歩実
79 『ラブ・ミー・プリーズ−侵蝕−』和田はつ子
80 『殺人鬼の放課後』       アンソロジー
81 『樹海伝説』          折原一
82 『燃えよ!! スタントマン』  谷垣健治

 う〜んう〜ん、全然進まないよ〜。

 今回もヤバすぎる『猿の証言』。途中が誰やらが誰と浮気して、誰やらが誰と再婚して……と非常にうざったかったが、後半は逆転に継ぐ逆転で、さらにラストは度胆を抜かれる後味の悪さ。ぎえ〜よくこんな事を考え付くもんだ、ひでえ話だ……と思ってたら、ラスト1ページでさらにもう一度ひっくり返り悪夢のような真相が! 最後の「猿の証言」にはもう……なんというか……。

 ドニー・イエンの生の姿に触れられる『燃えよ!! スタントマン』は香港のアクション映画ファンにはオススメの一冊。感動しました。


8月の読了本

83 『パンドラ、真紅の夢』     アン・ライス
84 『棲家』            明野照葉
85 『青い館の崩壊』        倉阪鬼一郎
86 『双面の天使』         小池真理子
87 『バラバの方を』        飛鳥部勝則
88 『妖霊星』           瀬川ことび
89 『模造人格』          北川歩実

 今月も全然進みませんでした。とほほほほ。

 『棲家』はけっこう面白かった。落ち二つはちょっと過剰だと思うんですけど。二冊読んでいまいちだった飛鳥部勝則も今作はヒット。なんだ? 極真空手と少林寺拳法とカール・ゴッチの弟子って……?


9月の読了本

90 『恋霊館事件』         谺健二
91 『最後の記憶』         綾辻行人
92 『アンハッピードッグス』    近藤史恵
93 『朗読者』           ベルンハルト・シュリンク
94 『十二宮12幻想』       アンソロジー
95 『闇の教室』          J・ソール
96 『鬼の探偵小説』        田中啓文
97 『闇の音』           明野照葉

 やっぱり今月も全然進みませんでした。とほほほほ。もう集中力がないですよ。

 綾辻くんひさびさの新作もいまいち。展開もややマンネリ化し、彼の作品を読み慣れていれば苦もなくオチが読めるだろう。あまりおなじみのものばかり読むのも良くないなあ。その点『鬼の探偵小説』はいつものエログロ抜きで、実に良かった。まあ短編だとエログロ書く分量もないんでしょうねえ。

 この作家二冊目『闇の音』もいい感じに嫌な気分になれ、素晴らしかった。こいつは今後どんどん読みたいものです。


10月の読了本


98 『よもつひらさか』       今邑彩
99 『おぞけ』           アンソロジー
100『ルール』           古処誠二
101『黒猫遁走曲』         服部まゆみ
102『闇のなかの巡礼』       森真沙子
103 『舌づけ』           アンソロジー
104『木曜組曲』          恩田陸
105『泣かない女』         小池真理子
106『鏡の奥の他人』        愛川晶
107『13』            古川日出男
108『硝子のドレス』        北川歩実
109『イリーガル・エイリアン』   R・J・ソウヤー
110『内宇宙への旅』        倉阪鬼一郎
111『青葉の頃は終わった』     近藤史恵

 旅行に往ったので、旅先でガンガン読了。好調です。

 いささか期待外れだったのが『ルール』。本格ミステリなら状況を書き込む事で間が持つが、そうでないものを書くにはいかにも力量不足。状況の悲惨さは伝わるが、作中の仕掛けが眼目ならあまりに安易。

 『木曜組曲』は作者の中ではほぼベスト。読んでも嫌な気分にならんし。ただ映画はどうか。飯食ってだらだら喋ってるだけの話だが、映像だけで描ききれるか。センスが問われる。

 『13』は年間通してほぼ最高の一本ではなかろうか。圧倒的な書き込みと文章力、こちらのイマジネーション不足も軽く蹴散らす完成度。凄すぎる。おまけに熱い。映画ネタも最高。オレも『ブラッドフォビア』みてえぜ。

 これまた後味の悪さが最悪な『硝子のドレス』。思わず活字から目をそらして行間を読んでしまったではないか。特にシリコンが……ああ……。


11月の読了本

112 『地球儀のスライス』     森博嗣
113 『ゆきどまり』        アンソロジー
114 『透明な一日』        北川歩実
115 『庭師』           高瀬美恵
116 『コールドスリープ』     飯田譲治・梓河人
117 『イノセント』        図子慧
118 『青い虚空』         ジェフリー・ディーヴァー
119 『さむけ』          アンソロジー
120 『命日』           小池真理子

 またもとのペースに逆戻りである。

 最悪系の話かと思いきや、ラストで突如逆転、ちょっと泣けるいいお話になってしまった『透明な一日』。北川歩実のくせに(笑)。相変わらず人物像は薄いし、ラストまでなんの情念も伝わってこないところが、まあ欠点か。

 ひさびさの図子慧『イノセント』、面白いと言えば面白いのだが、やや散漫な印象。人工知能があまり話に関係ないのがなんとも……。


12月の読了本

121 『静かな黄昏の国』      篠田節子
122 『ほおずき地獄』       近藤史恵
123 『真実の絆』         北川歩実
124 『7』            瀬川ことび
125 『会いたかった人』      小池真理子
126 『メドゥサ、鏡をごらん』   井上夢人
127 『十の恐怖』         アンソロジー
128 『椿姫』           和田はつ子
129 『赤き死の炎馬』       霞流一

 篠田節子、相変わらずの音楽ネタが熱い。最近の地味作品もまあ面白いんですが、やっぱりこっちの方がいいなあ。物足りない面もありますが。

 シリーズ二作目の近藤史恵、これは熱い! 落ちの付け方もかなり最高。時代劇っぽいムードもいいです。江戸時代のロリコン……面白すぎるね