2007年(平成19年)1月16日火曜日 朝日新聞 夕刊

 ロシア・ソ連問題とは関係ない

 イワシの乱獲に対する水産行政の問題点の指摘


水産庁 イワシ「乱獲」お墨付き

 激減して今や高級魚の一角を占めるマイワシについて、水産庁が、資源保護のために設定されている「許容漁獲量」を大幅に上回る量の漁獲を認めていることが分かった。01、02年には、日本周辺のマイワシの総量を上回る量の漁獲を認めていた。実際に水揚げされた漁獲量も02、04、05年と許容量を超えており、06年も上回った。水産庁が漁業資源の「乱獲」にお墨付きを与えている状態だ。(長野剛)

許容量超す漁獲許可「安定供給のため」

 マイワシの年間漁獲量は80年代に400万トンを超え、養殖魚のえさにも使われていたが、90年代に入って激減し、05年は約2万8千トン。保護策を講じなけれは、将来的にニシンのように枯渇しかねないと、専門家の間で危機感が広がっている。
 ところが、こうした状況の中で、水産庁は「乱獲」を認めていた。
 水産庁は、日本周辺の太平洋と日本海に分布するマイワシについて、繁殖力などの生物学的根拠に基づき、安定して漁獲し続け、かつ将来的に最も多い漁獲量を得るための上限の量として許容漁獲量を算出している。日本海のマイワシについては資源量が激減したため、03年以降は「マイワシを專門にとることは避けるべきだ」などとしている。
 この許容量を参考にして、国内の漁業者に認める漁獲量を決めるが、許容量を公開した02年以降、毎年、許容量を超えている。02年には許容量2万8千トンに対し、約12倍の34万2千トンの漁獲を認めていた。
 実際の漁獲量も、02、04、05年と許容量を上回った。06年の水揚げ量も11月末現在で4万7千トンと、すでに許容量の3万8千トンを上回っている。
 01、02年には、マイワシの総量を上回る量を認めていた。水産庁によると、02年に日本周辺の海に生息していたマイワシの資源量は21万4千トン。これに対して、水産庁が認めた漁獲量は34万2千トンで、マイワシ総量の約1.6倍。01年も、資源量33万9千トンに対して38万トンだった。
 各年の資源量は、その後数年間の漁獲などから事後的に確定するが、当時は減少傾向が明らかだった。水産庁管理課の坂本幸彦班長は「外国船もマイワシはとっており、日本だけが質源が減った責任を負うわけにはいかなかったし、安定供給も必要だった。当時としては妥当な判断」と説明する。その上で「資源保護への社会的な認識が高まり、その後は漁業者に認める漁獲量を許容量に近づけている」と話す。
 漁業資源の管理に詳しい勝川俊雄・東京大助手は「90年代以降、太平洋のマイワシは適正な漁獲を守れは増える可能性が高かった。資源量が減った以上、現状に見合った規模に漁獲量を減らすべきだ」と指摘。漁業者の廃業を促す対策も検討すべきだと話している。


出典:朝日新聞縮刷版

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