参議院 予算委員会 - 10号  昭和35年03月08日
 内閣総理大臣  岸  信介君

(省略)

国務大臣(岸信介君) 日華条約のこの条項によりましては、経済条項等は、現に支配しておるところでなければ実際適用を受けないと思います。また先ほど申しましたように、戦争終結というようなことを規定しておるということは中国大陸において戦争が行なわれたわけでありますから、そういう点において、現に支配しておるところだけの戦争終結ということは本来意味をなさないことでありますから、そういうような条項を含んでいるわけでございます。ただ、この領土権の問題に関しましては、先ほど荒木委員も当時の外務大臣の答弁をお読みになりましたように、両方の政府の主張は、全中国に対してお互いがその何を主張し合っている、こういうことであります。その間の領域がどういうふうになっているのだということを他からかれこれ言うことは、今おっしゃる通り内政干渉だと思います。そういうことを私が言っておるわけではないのでありまして、日本としてはサンフランシスコ条約によって放棄しておる何であるから、これがどこに帰属するかということについて発言の何らの権利をもっておるわけでもないし、またそのことを言おうとしておるわけでもございません。われわれが放棄しておるその帰属は、サンフランシスコ条約に署名したところの連合軍側において決定する。ただこれの領土の、戦争終結後における帰属をカイロ宣言においてきめており、またそれを内容としておるこのポツダム宣言というものを日本が受諾しておる限りにおきまして、いわゆる当時の表現もいろいろありますけれども、結局、広い意味における中国に属するということを連合国との間において話し合ったカイロ宣言というものを、日本としては承知しておるわけでありますから、これに異議を唱えるとかどうするかということは、これはできないことであります。本来これはどこに属するかということは、日本が解釈すべき何らの権利も私は持っておることじゃないと思います。ただ、今言った中国との間に、今申したようなカイロ宣言等がございますから、それを承知しておる。それに対してわれわれがそれを否認する、それに対して異議を言うというような立場にない。結果としてそういうふうな解釈問題について先ほどから申し上げておる。日本がこれはどこに帰属するのだというようなことを言うような何らの権利もない、そういう立場にもないのであります。またそういうことを政府としてしようというわけでもございません。ただ解釈問題として今言ったような関係から、中国に帰属するということを日本としては承知しておるということでございます。しこうして日華条約を結びましたときにおいて、この日本との間の平和条約、戦争終結をさせる平和条約を結び、将来友好関係を続けていくというこの条約締結にあたりまして、その範囲がどこに及ぶのだということになりますというと、条項によって、今申しましたように戦争終結の問題であるとか、経済関係の問題であるというようなことで、適当に解釈していくよりほかない、かように考えているわけでございます


(省略)



北方領土問題の先頭ページへ   北方領土問題関連資料のページへ