現在、日本政府は、北方領土要求の最大の根拠に「固有の領土」をあげる。「固有の領土」とは、一度も外国の領土になったことがない日本の領土と説明している。しかし、固有の領土は、国際法上の用語ではなく、人により場合により適宜意味が帰られて使われるため、日本政府の固有の領土論は諸外国の理解を得られていない。

 日本の国会においても、野党委員により、樺太は日本の固有の領土と主張されたことがあった。


昭和26年10月25日 衆議院 平和条約及び日米安全保障委員会

○西村栄一 委員
 私は日本社会党を代表いたしまして、講和條約並びに日米安全保障條約に対しまして、わが党の態度を表明いたしたいと存ずるのであります。
 まず第一に、講和條約に対する態度であります、本條約は和解と信頼の原則に基き、平等なる平和條約と言われておるのでありますが、しかしながらその内容を検討いたしますれば、領土條項、賠償條項あるいは政治経済の條項については、わが国の完全独立と、自立経済の達成を妨げ、国民生活を窮迫に陥れるところの不平等なる條件、すなわち敗戰国の屈辱的な條約であることは、何人も否定と得ないのであります。それゆえにわが国は、ここにおいてこのたび失われたるわが国の固有の領土である千島、南樺太、沖縄及び小笠原、その他の日本領土の失地回復に全力を注ぐとともに、国民生活を圧迫し、日本の経済自立を妨ぐるところの賠償條項並びに政治経済條項の改訂運動を展開し、もつて完全独立と日本経済の自立達成をはからねばならぬと確信いたしまするが、この諸目的を達成するためにも、かつ被占領国民たる地位よりも、たとい危険と窮迫が前途に横たわるということを考えましても、国家を独立せしめ、日本民族の発展と国家の再建を、みずからの創意と努力によつて達成せしむるという完全独立の契機といたしまして、今日のこの講和條約に対しつまして、社会党は以上の條件を付して賛成いたすものであります。(拍手)


昭和28年07月03日 衆議院 予算委員会

○小平忠 委員
 平和条約についての見解は、国会においての多数の賛成のもとにあれは通過したものであるとおつしやつておりますが、私はこの平和条約について根本的にやはり問題になりますのは領土問題だと思います。これは直接平和条約の条章云々、その点については明瞭になつていると思いますが、現にわが国固有の領土であります南樺太、千島あるいは琉球、小笠原等の問題でありますが、これがきわめて重要な問題として今後幾多の解決をただちにしなければならぬ。あれはとりもなおさず安保条約でもなければ、行政協定でもございません。平和条約のいわゆる基本的な重要な条章であります。こういう点について外務大臣は今日の段階、国民のこれだけの要請があるにもかかわらず、それでも平和条約はきわめて平等なるものであるとお考えになりますか。



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