衆議院 平和条約及び日米安全保… 昭和26年10月24日

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○佐竹(晴)委員 
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 そこで、平和、安保両条約の二つにわたります総論的なものはこれだけにいたしまして、これより平和条約関係について承りたいと思います。まず第一は、平和条約に関し一番問題となるものは、何といつても領土の問題であると存じます。総理大臣は、領土に関してはポツダム宣言八項に原則が定められておつて、日本に帰属する諸小島は米英等の決定するところであつて、無条件降伏をした日本としては、これに対し何とも言う権利はないとおつしやつたようでありますが、その通りに相違ないでございましようか。ここにいま一度お確かめいたしておきたいと存じます。

○吉田国務大臣 無条件降伏をした以上は、連合国の決定にまつ以外に方法はないと思います。

○佐竹(晴)委員 総理大臣は、日本が無条件降伏をしたのだから、何とも言うことができないと言われるのでありますが、しかしポツダム宣言十三項によれば、「吾等ハ日本国政府が直ニ全日本軍隊ノ無条件降伏ヲ宣言シ甘右行動二於ヶル同政府ノ誠意二付適当且充分ナル保障ヲ提供センコトヲ同政府ニ対シ要求ス」とございます。降伏文書を見ても、「下名ハ」「一切ノ日本国軍隊及日本国ノ支配下二在ル一切ノ軍隊ノ聯合国に対スル無条件降伏ヲ布告ス」とあります。さらに「一切ノ軍隊の指揮官二対シ自身及其ノ支配下ニ在ル一切ノ軍隊が無条件二降伏スベキ旨ノ命令ヲ直二発スルコトヲ命ズ」と明記いたしております。無条件に降伏いたしましたのは日本国軍隊であつて、民主的国民ないし政府ではない。軍隊は無条件に降伏して消えてなくなりました。国民ないし政府は、ポツダム宣言の定むる条件に従つて生存し、なお活動いたしております。さればこそ、国民は選挙するの権利を有し、国会議員も選出し、国会を形成し、憲法を制定し、法律をつくり、予算を組み、自由にやつて参りました。政府またおのおの組織を整備して、その意思に従つて行政をして参りました。いかに連合軍がこうありたいといつも、日本の各機関が予算を組まず、法律をつくらなければ、何ともすることができなかつたことは申し上げるまでもありません。政府が動かない限り、日本の政務はどうにもならなかつたことももちろんであります。この間むろん連合国総司令官の命令に従わなければなりませんでありましたけれども、これはポツダム宣言による条件を受諾したからであります。結局国民ないし政府が無条件降伏をしたというのではなく、ポツダム宣言という条件を無条件に承認をしたものといわざるを得ません。もしそうでなしに、われわれが無条件降伏をして、何の発言権がなかつたということになれば、講和を結ぶ権利もなかつたでありましよう。イタリアのごとく天くだり講和をのむのはかなかつたと存じます。しかし日本が今回講和会議に臨んで発言権を認められ、調印するといなとの自由を持ち、今やここに批准の前提たる両条約の承認を求むるところの国会が開かれております。われわれはその賛否いずれに決定しようとも、その自由を持つております。もし無条件で降伏して何の発言権もなくなつたといたすならば、このような権利が講和条約発効前に、一体だれから与えられたものでありましよう。また何年何月何日与えられたのでありましよう、これを解するに苦しむと存じます。従つて私は今回の条約の締結にあたつて、ポツダム宣言という条件の範囲において発言権があるものと存じますが、いかがでございましよう。

○西村(熊)政府委員 日本は連合国がポツダム宣言という形で提示いたしました戦争終結の条件を無条件で受けて終戦いたしたのであります。無条件降伏というのは、戦勝国が提示した条件に何ら条件をつけずして降伏したという意味であります。その当時、政府、大本営連合会議においてポツダム宣言に対して種々の条件を付してこれを受諾したいという議があつたことは、佐竹委員よく御存じのことだと思います。ただ連合国が戦争指導方針として、無条件降伏というものを強く主張しておりました情勢から考えまして、日本全体といたしましては、何ら条件を付さないで、先方の提示した条件を受けたのであります。それが無条件降伏をしたという意味でございます。むろん先方が提示したポツダム宣言の中には条件がございます。その条件の一として、日本の領土の範囲は連合国できめるという一項がございます。その条項に従つて、連合国が日本の領土について最終的な決定を与えるまで、日本といたしましては、あらゆる角度から日本の要請、国民感情その他が連合国によつて考慮に入れられるよう努力いたすことは当然でございますし、また政府といたしましては、十分その責務を尽したと存じております。しかしその結果、平和条約におきまして、連合国が最終的決定をいたしました以上は、条件をつけないでポツダム宣言を受諾した以上、日本としては男らしくこれを受けるものであるというのが、総理の考え方だと存じます。

○佐竹(晴)委員 言葉のあやはどうありましようとも、ポツダム宣言という条件を無条件で承認をいたしましたことは、ただいま西村条約局長のはつきり認められるところであります。よつて私はここで承りたいのは、平和条約第二条(C)に、千島列島、南樺太の放棄を書いてあります。同三条に北緯二十九度以南の琉球諸島及び小笠原列島等を信託統治に置くという米国の国連に対するいかなる提案にも同意する旨の規定がございます。これはいかなる根拠に基くものでございますか、千島及び南樺太の放棄は、おそらくヤルタ協定に基いたものではないかと想像されますが、ヤルタ協定は日本を拘束する力のございませんことは、過日すでに御説明を承りました。また国際法上何らの効力を有するものでないということも、われわれは信じております。ポツダム宣言においては、「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」と書いてあるが、ヤルタ協定には触れておりません。この協定に基いて主権の放棄をするというがごときは、とうてい首肯し得ないところであります。さらに北緯二十九度以南の琉流、小笠原列島等が、もし信託統治に付せられるとすれば、いわゆる潜在主権が残るといたしましても、いわゆる表現された主権はなくなりまして、ほとんど主権放棄と同様の結果になりますことも、これは争いがありません。ポツダム宣言のどこかの条項に、こういうことをやつてもよろしいという根拠がなければならないと思いますが、どの条項に基いたもものでございましよう。あるいは言うでしよう。無条件に降伏したのだから、日本に帰属する諸小島は米英等の決定するところに任ずるよりほかにはないという議論も繰返されるかもわかりません。しかしこれは無条件に降伏したから何でも向うの言う通りにならなければならぬというのでなしに、ただいま局長のお答えの通り、向うの提示した条件を無条件に承認したというのであり、その条件のいずれに当るかということをここに検討しなければなりません。総理大臣の御所見を承りたい。

○西村(熊)政府委員 御指摘の点は、ポツダム宣言に、連合国は積極的に北海道、本州、四国、九州の四つの大きな島は日本の領土として残すということと同時に、その他の範囲は連合国できめるといつているわけであります。それを日本政府といたしましては、何ら条件をつけないで、これをお受けいたしております以上は一国民感情といたしましては、いかに苦しいことがありましても、最終的決定を下された以上は、涙をのんでこれを受けざるを得ないということでございます

○佐竹(晴)委員 だんだん御説明を聞いておると、まるきり日本が何か征服されて向うの言う通り、ただ盲従的に従わなければならぬ今度の条約はあたかもそんな条約であるかのごとき印象を受ける。当会議においてかくのごとき印象を受けながら諭議を進めて行かなければならぬということに、私どもははなはだしく遺憾を感じます。千島、樺太の放棄、北緯二十九度以南の諸島の信託統治はポツダム宣言八項によつてやれるといたしましても、同項に基いたものといたしまするならば、同項の条件を守らなければならぬことは当然であります。今ポツダム宣言八項をごらん願えばわかる。冒頭に何と書いてあるか、「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」と書いてある。カイロ宣言によれば、同盟国は自由国のためには何らの利得を求めず、また領土横張の念も有しないと書いてある。いささかも棄合国側において国の主権の及ぶ範囲を横張することを求めようといたしておりませんことは明らかであります。それなら、カイロ宣言では何を求めておるか。それはその項の次にこう書いてある。同盟国の目的は一九一四年の第一次戦争の開始以後に日本が奪取し、または占領した太平洋におけるすべての島を日本から剥奪すること、並びに満州、台湾及び膨湖島のような日本国が清国人から窃取したすべての地域を中華民国に返還するということにある。また日本国は暴力及び強欲舛より日本が略取したすべての地域から駆逐せらるべしというのであります。ところが千島のうち、いわゆる南千島でありますところの択捉、国後等は徳川初代のころより日本人が領土し、いまだかつて他国人によつて支配せられたことのないことは申し上げるまでもありません。歯舞、色丹は北海道の一部でありますこともここで論じ尽されました。南嘩太は明治八年の交換条約によつて千島と交換をし、一九〇四年ポーツマス条約で再びわが国の領有となつたものです。いずれも一九一四年第一次世界戦争開始後日本が奪取したものでも、また窃取したものでもございません。いわんや暴力及び強欲によつて略取したものでは断じてありません。北緯二十九度以南の琉球、小笠原諸島もまた歴史的に見ても、民族的に見ても、日本の固有の領土であつて、カイロ宣言にいわれる奪取したものでも、窃取したものでもなければ、暴力によつて略取したものでもありません。従つて「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」という以上、この条項に何ら関係のない千島、樺太の主権を放棄し、北緯二十九度以南の諸島を信託統治に委すべき何らの理由もないことは言をまちません。はたしてしかりといたしますならば、今回の平和条約二条(C)及び第三条のごときは、右カイロ宣言を蹟躙したものというべく……。
    〔発言する者あり〕

○田中委員長 静粛に。

○佐竹(晴)委員 日本としては、その条項の履行を求める権利があるものと言わなければならないと存じます。もつともポツダム宣言、前段の「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」というのと、後段の一「又日本国ノ主権ハ」云々「吾等ノ決定スル諸小島二局限セラルベシ」というこの文字は、おのおの独立的存在を有しておつて、後段には前段のポツダム宣言の条項はかかつていないと言うのでありましよう。それは文理解釈といたしましてそう言うのでありましよう。しかし前段において「「カイ口」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」と規定をいたしており、そのカイロ宣言においては、はつきり領土の横張はしないと誓約をし、返還を求むるものは一九一四年以来の日本に奪取せられたもの、暴力によつて略取せられた島々に限ると明示しているのでありますから、日本はこの条件をのんで、この条件に従つて、これを受諾したのであります。よつて、その後段における「吾等ノ決定スル諸小島」とは、この条件にそむいてかつてほうだいにきめ得るものとは考えられません。カイロ宣言というわくを承諾し、カイロ宣言の条件に従つて降伏をいたしました以上、米英の決定はこのカイロ宣言の条件の範囲においてすべきは当然である。決定すべき諸小島もいわゆるカイロ宣言の定むる条件に従つて、その範囲内において決定すべきことは向うさんも条件として提示し、われわれもこれを承認した以上当然である。今回の平和条約第二条(C)及び第三条はこの範囲を逸脱するものと考えますが、どうでありましようか。

○草葉政府委員 御質問の点につきましては、ごもつもな点も多々あると思います。また今までも再三これは各委員から十分論議されました点でございまして、それで先ほど条約局長からも申し上げましたように、ポツダム宣言を受諾して、そのポツダム宣言によりまして、四つの島に局限される。その結果において男らしく、今度の平和条約における第二条の領土という点について受諾し、これに対しまして総理は特にサンフランシスコ会議におきまして、決して千島、樺太は略奪したものでも何でもない、お話の通りに昔から、ずつと以前から、日本の歴史上からも地理的関係からも、経済的関係からも、日本領土であつた。何ら国際条約の上にも問題が起らなかつた点をじゆんじゆんと申しておられるのであります。十分この点は佐竹委員も御承知だと存じます。従いまして、今回の平和条約におきまする条項に対しましては、日本の立場の心持は総理から十分伝えながら、この条約に署名した次第でございます。

○佐竹(晴)委員 お答えでは何らの根拠も示されませんでした。要するに私はポツダム宣言第八項の解釈を求めているのです、ポツダム宣言は一つの条件として提示された、その条件をわれわれは承認したのであります。従つてその範囲内において向うさんも義務がある、われわれもまた義務があると同時に権利がある。ところがその条項に違反しているのじやないかというのです。違反しておらないという論拠をあげて御説明あつて初めて答弁になります。答弁をなしておりません。しかし私は時間がございませんので、論議を繰返すことを省略いたしまして、さらに進めて参ります。今回の条約第二条(C)、第三条のごとき規定が許されるということになれば、それ自体カイロ宣言違反ではないかと私は考えます。すなわちカイロ宣言では、奪つたものは返せというのです。戦争の結果譲り受けたものを返せというのでありますが、それなら米英等連合国が、今回の戦争の結果、日本本来の領土であつた島々まで権利を放棄させ、連合国の権力内におき、あるいは信託統治にするということは、逆に日本に力を加えて、その頭上を奪うものではないでありましようか。カイロ宣言でもつて、日本が力を加えて奪つたものはいけないから返せという口の下で、今度は逆に向うさんが、日本へ力を加えて、日本の固有の領土を奪おうとするがごときは、まつたくそれ自体カイロ宣言違反ではないでありましようか。かくのごとく、われわれに対し奪つたものは返せと言つておいて、今度は逆にわれわれに力を加えて奪うがごときは、国際正義の観念に照して許され得べきことでありましようか、承りたいと思います。

○草葉政府委員 ポツダム宣言にいたしましても、カイロ宣言にいたしましても、これはいわゆる関係国の宣言でございます。ことにポツダム宣言は、その宣言を信じて日本は無条件降伏をいたしたのであります。従いまして、そういう立場から日本が権利があると強く主張するという意味ではなしに、このポツダム宣言を信じた上においての行動をして参つたのであります。

○佐竹(晴)委員 ポツダム宣言が宣言であることについては、これは間違いありません。しかしこちらが受諾をしましたならば、相互の間にその受諾関係において条約同様の効力を生ずることも、これは疑いありません。両者を拘束するものであるか拘束しないものであるかということについて、この席で論議を尽した。しかして政府も両者を拘束すると言つておる。向うさんも義務がある、こちらも義務がある、だから総理大臣は忠実にその義務を履行した。よつて向うさんも、日本が民主化されたから講和を結ばなければならぬとおつしやつた。問題の修損はこの「宣言の二つです。一部かつてにいいところのみをとつて他を捨てるわけには参りません。不利益なところも受入れなければなりません。してみれば、ただいまのごとく力を加えて戦争の結果とつたものは、たとい講和条約の結果とつたものでも、これを返せとおつしやる。それなのに今度向うさんがわれわれに力を加えてとつて行こうとする。これが国際正義の観念に照して許されるかというのであります。これに対し今度は条約できめるからかまわない、日本が受諾したんじやないかというかもしれない。それならば前の台湾だつて、樺太だつて、ちやんと両者の間に対等の関係において承諾の上にものをきめて取引をしたのである。われわれのやつたことはいけない、向うさんなら何をやつてもいいという、そういつた理念は、この委員会においては通りません。しかし私は論議を避けましてさらに進めて参ります。
 総理大臣は本会議の演説において、トルーマン大統領は歓迎の辞で、この平和条約は過去を振り返るものではなく、将来を望むものであると述べたと言い、またダレス代表は復讐の平和ではなく、正義の平和であると述べた旨を明らかにされました。他面ダレス氏が、今回の講和は和解と信頼の講和であるとおつしやつたことは周知の事実であります。ところが、ここにまことに遺憾に考えまもことは、ただいま申し上げました通り、今回の条約の基礎となつておりますポツダム宣言八項には、カイロ宣言が履行せらるべくとあります。カイロ宣言は、申すまでもなく戦争終末期における深刻なる敵対的うず巻の中に、日本に武力を示して無条件降伏を求めたそれであります。カイロ宣言は日本に対する憎悪感を極度に現わしまして、日本を仮借なく制圧出しなければならぬということを宣言したものでございます。この原則をもつて講和の内容とするということは、過去を振り返るものであり、また復讐の平和とも解せられるおそれがあります。和解と併願の講和ということに曇りを覚えざるを得ないのであります。ことにカイロ宣言には、すでに述べた通り、台湾、澎湖島のごとき、日本国が中国人より窃取したる一切の地域を中華民国が回復するにありといつておる。また日本国は、暴力及び強欲によつて日本国が略取いたしました地域から駆逐せらるべしとああります。日本を窃盗の強盗のといつておられますが、しかし台湾は一八九五年下関条約によつて、また樺太は一九〇四年ポーツマス条約で、しかもこのときは米国の大統領のルーズベルトの仲裁で割譲を受けたのであつて、もし独立国家間の任意の条約でとりきめたものまで、これを無視するということになつたならば、今日国際法上尊重されているところの条約というものは、一片のほごとなりまして、世界秩序は保たれません。のみならず、その条約によつて合法的に譲り受けたものまでも、強盗だの窃取だのということになつたならば、今日の世界の大国で、強窃盗でない国がはたしていくらあるでありましようか。ある大国のごときは、百年間に百回の戦争をやつて、領土が百倍になつたというておる。その国の人々が、この宣言を基調とする条約を結んで、和解と信頼の条約であるといつても、それは筋が通りません。私は当初、おそらくこういつたような宣言とか何とかいつたようなものは一切抜きにし、ほんとうに今度は一切の過去のそういつたものにこだわらず、新しい条約が結ばれたものと考えておりました。それなら、自由に総理がどうきめましようとも、世界の客観情勢がこうだというならば、われわれも納得いたします。ところが本会議においても、あるいは当席においても、ポツダム宣言八項によつてきめた、こうだと打出されておりますので、しからば八項に何と書いてあるか、カイロ宣言は履行せらるべくと書いてある。カイロ宣言には何と書いてあるか、日本を強窃盗呼ばわりをしておるということになつてまいります。私は国民感情を刺戦するような、こういつたことをそのままにしておいて、ほんとうに日米立ち上つて共同の防衛をしようというのでは、遺憾な点が出て来るのではないかということを憂えます。こういう点については、少くとも誤解を解き、日本国家及び国民の面目を失墜しないような適当な方法が講ぜらるべきものであると考えます。講和会議の途中において、総理はいかなる態度に出られたでありましようか。また将来において何かこれを適当に処理するお考えがございましようか。たとえば別途、あるいはこの講和条約発効の日において、なるほどポツダム宣言八項に書いてあるところのカイロ宣言の中には、こういう文句をうたつておるけれども、今日においては決してそういつたようなことは考えていない、あるいは条約は尊重すべきもので窃盗だの強盗だのということを引用する意味ではないということをうたつて、こういつた感情を刺激しない適当な方法を講じて、友好善隣の事実を示さぬ限り、ポツダム宣言八項だ、カイロ宣言だといつてわれわれに押しかぶせて来るのでは、国民は承服することができないと思います。この点に対しまして、総理大臣といたしましては適当な方策をお持ちでございましようか、承りたいと存じます。

○草葉政府委員 御質問のように、サンフランシスコ会議におきまして、トルーマン大統領の演説もありました。またトルーマン大統領は、もう真珠湾攻撃などというものは、それは忘れることはできないけれども、そういう過去のことは言うまいじやないか、そうして新しい日本の建設のために全力を尽してお互いに進むようにしよう、こういう意味であつたと私は解釈いたしておるのであります。従いまして今回の平和条約は、これはダレスさんも申しましたように、すべての国が百パーセント満足の行く条約には行かないかもしれないが、しかし戦争の跡始末としては、おそらくこれ以上には考えられないものではないかという点におきまして、旧殻から脱しまして、新しい日本の踏出しとして、私どもはこの平和条約を喜んで迎えた次第でございます。

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