大陸命第千三百二十六号〜第千三百四十一号 

大陸命とは天皇の陸軍に対する統帥命令。大本営で立案され、参謀総長から天皇に上奏され、天皇の裁可を受けた後、各指揮官に伝達される。

昭和20年5月、日本軍は対ソ連戦に向けて、戦争準備を行った。ここに示す大陸命は、対ソ連戦の作戦準備命令。



(旧字を新字に変え、カタカナをひらがなに変えた)


大陸命第千三百二十六号
  命  令

一 大本営の企図は本土に侵寇する敵軍を撃滅して其非望を破砕するに在り

二 第五方面軍司令官は敵の北東方面に対する空海基地の推進を破砕すると共に日本海に対する敵の策動を防圧するに努め以て本土決戦の遂行を容易ならしむへし    
 任務達成の為準拠すへき要綱左の如し

(一)戦備の重点を北海道本島に保持し来攻する敵を撃破して敵空海基地の推進を破砕する千島列島及南樺太の各要域を確保す
(二)宗谷海峡及津軽海峡各沿岸の要域を確保すると共に海軍に協力し以て日本海に対する敵の策動を防圧するに努む
(三)自戦自活態勢を急速強化す

三 第五方面軍司令官は別紙「対米作戦中蘇国の参戦せる場合に於ける北東方面対蘇作戦計画要領」に基き対蘇作戦準備を実施すへし

四 第五方面軍の作戦地域、大陸命千三百二号に基く陸海軍の指揮関係並大陸命千八十四号に基く北海道本島及千島列島方面の直接防衛作戦に関し第十二航空艦隊司令長官を指揮すること故の如し

五 第五方面軍司令官は 任務達成の為所要に応し第一総軍司令官、航空総軍司令官及関係海軍指揮官と協同し且相互協議し所要の部隊を第一総軍地域に派遣し又其指揮関係を律することを得

六 細項に関しては参謀総長をして指示せしむ

   昭和二十年五月九日
奉勅伝宣  参謀総長 梅津美治郎

 第五方面軍司令官  樋口季一郎殿
 第一総軍司令官    杉山 元殿
 航室総軍司令官   河辺正三殿


別紙
  対米作戦中蘇国参戦せる場合に於ける北東方面対蘇作戦計画要領

   第一 作戦方針
来攻する敵を撃破して北東方面皇土の要域を確保す

   第二 作戦指導要領
一 樺太に在りては作戦の重点を対蘇作戦に指向し来攻する敵を撃破して南部樺太の要域を確保す
二 千島列島及宗谷海峡は依然其要域を確保して米蘇の遮断に努む
三 蘇軍の北海道来攻に方りては情況に即応し随処に敵を撃破するに務め以て北海道の要域を確保す

       注)関連:大陸指第2515,2525,2538号


大陸命第千三百三十九号
  命  令

一 大本営は鮮満二於ける対米作戦及対蘇作戦準備の強化を企図す
二 第十七方面軍司令官は中、南鮮に侵冠する敵を撃滅すへし
三 関東軍総司令官は現任務を遂行する外来攻する米軍を撃滅すると共に北鮮に於ける対蘇作戦準備を実施すへし
 之か為所要の隷下、指揮下部隊を北鮮に配置し且北鮮に於ける対蘇作戦準備及対米作戦に関し朝鮮軍管匠司令官を指揮すへし
四 朝鮮軍管区司令官は北鮮防衛等に関し前項に振り配置せらるる部隊を其作戦準備遂行に支障無き範囲に於て指揮すへし
五 細項に関しては参謀総長をして指示せしむ

   昭和二十年五月三十日
奉勅伝宣  参謀総長梅津美治郎

  関東軍総司令官   山田乙三殿
  第十七方面軍司令官 上月良夫殿
  朝鮮軍管画司令官  上月良夫殿

       注)関連:大陸指第2494、2515、2521、2525、2538号


大陸命第千三百四十号
  命 令

一 関東軍総司令官は別冊、「満鮮方面対蘇作戦計画要領」に準拠し対蘇作戦準備を実施すへし
二 細項並作戦計画に伴ふ兵站、交通等に関しては参謀総長をして指示せしむ

   昭和二十年五月三十日
奉勅伝宣  参謀総長 梅津美治郎

  関東軍総司令官 山田乙三殿

       注)関連:大陸指第2508、2522、2523号
(別冊欠)


大陸命第千三百四十一号
  命 令

一 支那派遣軍総司令官は現任務を遂行するの外所要の対蘇作戦準備を実施すへし
二 細項に関しては参謀総長をして指示せしむ

   昭和二十年五月三十日
奉勅伝宣   参謀総長 梅津美治郎

  支那派遣軍総司令官 岡村寧次殿

       注)関連:大陸指第2523号


出典:「大本営陸軍部」 大陸命・大陸指 総集成 第10巻 昭和20年
    森松俊夫/監修 エムティ出版 (1994)


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