千島・樺太進攻に関するソ連軍最高司令官命令
1945年8月18日〜1945年8月28日


ソ連軍総参謀長アレクサンドル・ミハイロビチ・ワシレフスキーの極東サハリン方面軍・北洋艦隊司令官あて停戦任務に関する暗号電報、第8号
   1945年8月18日発出(トロツエンコ)

 8月17日に敵の抵抗が急激に低下した中で、極東方面軍の諸部隊は、与えられた任務を継続して遂行している。その日のうちに、各方面で敵の各部隊及び小隊は降伏し、又はわが軍に軍使を派遣した。17時08分過ぎ、約2万5,000人の日本軍及び満州軍の将兵が武装解除された。各方面並びに戦線の一部では、小競り合いが行われているものの、降伏は引続きなされている。
 極東ソ連軍に与えられた任務に基づいて、以下の通り、命令する。
一、第二極東方面軍は、8月25日までにサハリン南部及び新知島に至る千島列島北部諸島の占領を完了させること。本任務を遂行するために、カムチャツカ及びサハリンにおける貴下の部隊を使用する。
二、敵の戦闘行動が停止されたすべての地域においては、ソ連軍諸部隊側からの戦闘行動を直ちに停止すること。
三、自発的に降伏した敵の将兵に対して良好な指揮をとる必要があることを、部隊に確認する。
 第八号ワシレフスキー、トロツエンコ



ソ連軍総参謀長アレクサンドル・ミハイロビチ・ワシレフスキーの極東サハリン方面軍・太平洋艦隊司令官あて暗号電報、第18号
   1945年8月19日発出(トロツエンコ)

 極東ソ連軍に与えられた任務に基づき、以下の通り、命令する。
 第一極東方面軍は、8月19日から9月1日までに、釧路市から留萌市に至る線より北の北海道の半分及び新知島に至る千島列島の南部諸島を占領する。この目的のため、太平洋艦隊の船舶及び商船隊の部隊は、8月19日から9月1日までに、第87狙撃兵団の二個狙撃師団を移動させるよう務める。また、同期間に、北海道及び千島列島に第九航空軍の戦闘機師団及び爆撃機師団の基地を移動させる。



ソ連軍のペトロバブロフスク海軍基地あて暗号電報、第11087号
   1945年8月19日発出(トロツエンコ)

一、カムチャツカ防衛区司令官と共同して、8月25日までに新知島に至る千島列島北部の島嶼を占領する。
二、抵抗の止んだ島嶼においては、直ちに戦闘行動を停止する。軍事施設を速やかに占領するために機動部隊を設ける。
  日本軍司令部と自主的に連絡を取ることを許可し、敵の受け入れと武装解除の手続きを定める。
三、自発的に降伏した将兵に対しては、良好な態度をとる。
四、海軍施設に属するものすべてを、直ちに検査する。設備及び貴重品には、歩哨を立てる。



ソ連軍総参謀長アレキサンドル・ミハイロビチ・ワシレフスキーの極東第一方面軍・極東第一一方面軍・太平洋艦隊各司令官及びアレキサンドル・A・ノビコフ空軍司令官あて暗号電報、第20号
1945年8月21日発出(トロツエンコ)

一、真岡港地区の良好な状況を利用して、直ちに、8月21日より遅くならない段階で、技術部隊を伴い第87狙繋兵団の乗船を開始する。出来るだけ速やかに、サハリン南部の大泊港及び豊原市の地域に、同兵団を終結させる。
二、太平洋艦隊司令官ユマシェフ海軍上級大将は、商船隊を必要に応じて活用し、第87狙撃兵団の輸送を主要任務と見倣すこと。第87狙撃兵団の輸送計画について、遅くとも1945年8月27日12時00分までに、暗号電報をもって本官に報告する。
三、第二極東方面軍司令官は、第一極東方面軍第87狙撃兵団の先兵の上陸を待たずに、遅くとも8月22日の朝までに大泊港及び豊原市地域を占領するために、サハリン南部から敵部隊を掃討する作戦を継続する。第87狙撃師団の部隊が同地域に進出した後は、作戦を終えた第二極東方面軍の部隊をサハリンの防衛に使用するか、又は情勢次第で、千島列島で行動中の部隊の増強のために使用する。
四、空軍総司令官ノビコフ空軍元帥と太平洋艦隊司令官ユマシェフ海軍上級大将は、貴下の部隊がサハリンを占領した後、直ちに、遅くとも8月23日までに、第九空軍及び太平洋艦隊航空部隊の主力基地をサハリンに移し、北海道北部占領に参加する準備をする。
 第九空軍と太平洋艦隊航空部隊の基地の移転、及び来たるべき航空作戦行動計画の立案に関する全般的指揮は、ノビコフ空軍元帥に委任するものとする。空軍基地の移転及び空軍の使用に関する計画は、遅くとも8月22日14時00分までに、本官に報告する。
五、太平洋艦隊司令官ユマシェフ海軍上級大将は、地上軍がサハリン及び大泊港を占領した後、最高司令官の指示を受理すると同時に、サハリン南部から北海道への上陸作戦を開始するため、必要量の軍艦及び魚雷をここに移転する。上陸作戦計画を立案する際には、少なくとも歩兵二個師団をそれぞれ二、三梯団で同時に北海道に輸送することを考慮する。
六、第一極東方面軍司令官及び太平洋艦隊司令官は、遅くとも8月22日23時OO分までに来たるべき作戦に関する提案を提出する。
七、第87狙撃兵団をサハリンの真岡地区へ輸送する作戦を直ちに開始する必要があることを、再度強調する。北海道上陸作戦の開始時期は、追って本官が指示する。本作戦における地上軍・空軍・太平洋艦隊の主要基地は、サハリンに置くこととする。 本作戦の準備期限は、1945年8月23日を最終期日とする。
  暗号電報、第20号(14726〉ワシレフスキー、トロツエンコ



ソ連軍太平洋艦隊参謀部戦闘命令、第0013/OP号
  1945年8月21日発出(ペトロバブロフスク)
一、海上では、敵は積極的な戦闘行動を行っていない。サハリンでは、北太平洋艦隊の上陸部隊は、真岡港及び真岡市を占領した。敵は抵抗を止めた。
二、真岡地区では、北太平洋艦隊が行動している。
三、任務は、真岡港に狙撃師団一個師団を揚陸させることである。
 決定 軍艦による護衛の下に、狙撃師団を輸送船で輸送すること。
 以下の通り、命令する。
A 揚陸指揮官ベスパロフ少佐は、真岡港に狙撃師団一個師団を揚陸する。ボスフォル・ビストーチタイ海峡から出発するのは、1945年8月21日14時00分とする。
B 狙撃師団司令官は、真岡港に上陸し、さらに、第一極東方面軍司令官の命令に従って行動する。
C 空軍司令官レメシコ空軍中将は、海上の移動及び上陸地点において、上陸部隊を援護する。



ソ連軍総参謀長アレキサンドル・ミハイロビチ・ワシレフスキーの海軍総司令官ニコライ・G・クズネツオフ及び太平洋艦隊司令官イバン・S・ユーマシェフあて北海道上陸作戦中止の暗号電報、第677号
  1945年8月22日発出(トロツエンコ)
二、今後、総司令部の特別の許可があるまで、わが軍の北海道上陸作戦を差し控える必要がある。第87狙撃師団の輸送は、継続する。
三、千島列島において降伏する用意があるという日本側の声明に関連して、北海道を避けて、第87狙撃兵団の先兵をサハリンから南千島諸島(国後島及び択捉島)へ輸送することができるかどうかを検討するよう、お願いする。遅くとも8月23日朝までに、この件についてどう考えるかを、本官にお知らせ願いたい。



ソ連軍太平洋艦隊司令部の千島列島駐留日本軍北方集団司令官(第九一師団長)提不來貴中将あて全日本軍への降伏命令(千島占領)の決定
1945年8月23日発出(ペトロバブロフスク)
一、ペトロバブロフスク海軍基地の艦船と部隊は、カムチャツカ防衛区軍と共同して、8月25日までに占守島を含む千島列島北部を占領する。
二、北太平洋艦隊の艦船と部隊は、極東第二方面軍の第一六軍と共同して、
(a)宗谷海峡の機雷敷設状況を調べ、水路を掃海し、大泊港に上陸部隊を揚陸し、引続き得撫島を含む千島列島の南部に上陸部隊を輸送する。
(b)引続き、小千島列島を占領するために、千島列島島嘆に作戦基地を設ける。
三、サハリン南部での戦闘行動を直接指揮し、第一六軍の部隊と連絡をとるため、野戦参謀部を伴い北太平洋艦隊司令官をソベツカヤ・ガーバニからサハリンに、飛行機で輸送する。
四、作戦の時点で、海軍基地からVMB型掃海艇四隻、海兵隊を補充するために300人の兵員を北太平洋艦隊司令官の作戦指揮下におく。
五、作戦を実施するに当たって、北太平洋艦隊の航空部隊を恵須取飛行場に着陸させる。
六、太平洋艦隊航空部隊司令官は、南サハリン及び千島列島南部島嶼での行動に関し、予備航空部隊を準備する。そのためには、海軍基地の飛行場を使用する。
七、飛行場を占領するため、択捉島に空挺部隊を降下させる。
八、第87狙撃兵団の真岡港への輸送を継続する。宗谷海峡の機雷敷設状況が厳しい場合は、千島列島南部に上陸予定の第87狙撃兵団を自動車及び鉄道によって大泊港に輸送する。第87狙撃兵団は、大泊港で乗船させ、目的地に輸送する。



ソ連極東第一一方面軍軍事評議会の千島新知島・得撫島占領命令に従うカムチャツカ防衛区司令官とペトロバブロフスク海軍基地指揮官の共同決定
   1945年8月27日成立(ペトロバブロフスク)

一、輸送船メンジンスキーから特殊部隊を伴った第三〇二狙撃連隊一個連隊を、松輸島に上陸させる。
二、警備艦ジェルジンスキーは、新知島の日本軍守備隊の存在地を強行偵察する。
三、警備艦キーロフと掃海艇第三三四号は輸送船団に同行し、得撫島偵察のため警備艦キーロフから第302狙撃連隊の一個中隊を上陸させる。
四、警備艦キーロフ及び掃海艇第333号によって護衛された輸送船メンジンスキー、レフリジェラートル第二号、及び上陸用舟艇DS-6は、新知島と得撫島の地域に直ちに赴く。輸送船モスカリボ、レフリジェラートル第二号、及び上陸用舟艇DS-6をもって新知島に部隊を上陸させる。



ソ連軍総参謀部の極東第一方面軍司令官、極東第一一方面軍司令官、及びイバン・S・ユーマシェフ海軍上級大将あて電報、第191/HSH
   1945年8月28日発出(トロツエンコ)
 カムチャツカ、サハリン、及び千島列島で行動中の軍を統一指揮の下に統合するために、以下の通り、命令する。
一、第一極東方面軍司令官は、8月30日24時00分までに到着するすべての部隊を、第一極東方面軍に引き渡すものとする。8月31日までに国後島・択捉島(千島列島南部)を占領し、確保する。
二、第二極東方面軍は、引き渡される部隊をサハリン及び千島列島に進攻させる。
 諸部隊を、以下の通り、配置する。
  第255狙撃師団カムチャツカ半島
  第101狙撃師団千島列島北部諸島。
  第87狙撃兵団の狙撃師団一個師団及び第113狙撃旅団
千島列島南部諸島。
 第87狙撃兵団のその他の狙撃師団二個師団南サハリンに方面軍部隊による戦車旅団一個旅団の増強をする。


出典)
浦野起央/編著『資料体系アジア・アフリカ国際関係政治社会史 第2巻 [第5分冊 h] 』
pp.4252〜pp4257


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