戦闘停止に関する文書
(一九四五年八月十六日)

(イ)

八月十六日　聯合國最高司令官發　（外務省正文（昭20.8.17）軍務課印刷）

日本天皇　日本政府　日本大本営　宛

日本國天皇、日本國政府及日本國大本営ハ聯合國ノ降伏條件ヲ受諾セルニ因リ聯合國最高指揮官ハ茲二日本軍二依ル戦闘ノ即時停止ヲ命ス　

右戦闘行爲停止ノ發動日及時間ヲ聯合國最高指揮官二直チニ通告スヘシ然ルトキハ聯合國諸軍ハ戦闘ノ停止ヲ命セラルヘシ

聯合國最高指揮官ハ更二日本國政府二對シ「フィリピン」「マニラ」市二在ル聯合國最高指揮官司令部二日本國天皇、日本國政府、日本国大本営ノ名二於テ降伏條件ヲ遂行スル爲必要ナル諸要求ヲ受領スルノ権限ヲ有スル代表者ヲ派遣スルコトヲ命ス

右代表者ハ到着ト共二聯合國最高指揮官ノ要求ヲ受領スルノ権限ヲ附與セル日本國天皇二依リ証明セラレタル文書ヲ聯合國最高指揮官二提示スルモノトス

右代表者ハ日本國陸軍、日本國海軍及日本國軍ヲ夫々代表スル権限アル顧問ヲ帯同スルモノトス

（口）
聯合國最高司令官「ディー・マッカーサー」元帥二封スル八月十六日附帝國政府及大本営通告（外務省正文（昭20.8.17）軍務課印刷）

瑞西國政府ヲ通シ傳達セラレタル米國政府ノ通告及東京無電局ノ受信セル「マッカーサー」元帥ノ通告ヲ夫々受領セリ　テ左ノ通通報ス

一、天皇陛下二於カセラレテハ八月十六日十六時全軍隊二對シ即時停職ノ大命ヲ發セラレタリ

ニ、右大命カ第一線二到達シ實効ヲ挙クル日時ハ左ノ如ク予見ス
　(イ)内地四十八時間
　(ロ)支那、満洲、朝鮮、南方諸地域(「ブーゲンヴィル」、「ニューギニア」「フィリピン」ヲ除ク)六日
　(ハ)「ブーゲンヴィル」八日
　(ニ)「ニューギニア」、比島ノ重要司令部ハ十二日、第一線ハ命令伝達期日ノ見透困難ナリ

三、終戦二關スル大御心及右停戦ノ大命ノ徹底ヲ期スル爲御名代ノ官ヲ関東軍、支那派遣軍及南方軍二夫々差遣セラル
　右旅程及航空機ノ型式、標識等二關シテハ追報スヘシ　テ右二對シ安導ヲ保障アリ度シ

四、八月十七日九州佐多岬ヲ出襲シ在「マニラ」「マッカーサー」司令部二向ケ軍人顧問ヲ帯同スル権限アル代表者(単数)ヲ派遣セシムヘシトノ要請二關シテハ八月十七日二我方代表者ノ飛行方ヲ取計フコトハ不可能ナルヲ以テ我方トシテ大ナル困惑ヲ感スルモノナリ
但シ直チニ必要ナル準備二着手シ出來得ル限速二右代表者ヲ派遣スルコトトスヘク「マッカーサー」元帥二右派遣期日ヲ通告スヘシ

五、今後聯合國最高司令部トノ通信連絡ハ左ノ方法に依ルコトト致シ度シ
　イ、日本側發受信者　大本営叉ハ政府
　ロ、日本側發受信局　東京局(呼出符號JEP、波長一三七四〇「キロサイクル」)
　ハ、通信方法　　　　　無線電報
　ニ、用語　　　　　　　　英語

六、「マッカーサー」元帥發通告二記載セラレタル飛行機ノ型式ハ理解シ得サルニ付右型式二關スル通告ヲ十分且明瞭二繰返ヘシ電報セラレタシ

七、「マッカーサー」元帥發出ノ通告全部ヲ受信シ居ルコトヲ確メ度キニ付本通報第五項ノ連絡通路ヲ通シ今一度右通告全部ヲ繰返ヘシ電報セラレタシ



〔備考〕連合國軍の一員たるソ連軍はこの停職交渉にかかわりなく、満洲、千島、樺太方面において戦闘を続行し、九月一日までにこれら地域の日本軍と局地的停戦協定を結び、日本軍隊を武装解除して俘虜とし、これら地域を軍事占領した。

(日本外交年表並主要文書　下)