−こいばな番外編第12話−
DF-1011 シックス:センス ノイズ 対策
2012.6.17 UP
さてライダーの皆様、三協特殊無線社よりDF-1011(他、後継機種DF-2022等*)
なるバイクライフを快適にする商品が販売されています。
(*現在DF-1011は生産終了し市場在庫のみのようで、継続生産を希望します)
この製品、要は「音声Mixingアンプ」でして、ヘルメットに装着したヘッドセット
(スピーカー&マイク)に無線機の他、携帯電話,ナビ,パッセンジャーヘッドセット,
iPod等の音楽プレーヤーを同時接続する目的で使用するものです。
この製品の使用で先ず生じたのが、ヘッドセットに飛び込んで来る様々なノイズ。
その他気付いたいくつかの不具合。
宮城GLクラブでも最近先輩二人が購入したのですが、館主(当Webマスター自称)
同様に苦心しそうな様子でしたので、対策のノウハウをここでまとめて紹介させて
頂くことにしました。 Mさん、Wさん、参考にどうぞ。
−ノイズ対策の発端−
館主のバイクはGL1500 '89年式… もう23年前のスーパー旧車。
壊れたパーツを注文してもパーツが無い事が多くなった今日この頃。
電装系もここかしこ接触不安定で先日もヒューズの接触不具合でオーディオが
鳴らなくなるトラブルが生じたばかり。
こんなポンコツ車なので、FMトランスミッターでも取り付けようものならオルタ
ネーターノイズ(エンジンの回転に合わせてパチパチヒュンヒュン聞こえるアレ)
等が音楽に混じり捲くりで聞くに堪えない事態に(泣)。
クラブの会長の経験によれば、電子機器を増設する都度GND経由でノイズが
増えるものらしい。(「グランドループノイズ」と言うらしい)
あちこち配線の接触不安定が生じているポンコツバイクであれば尚更ノイズが
発生し易いかも知れない。
確かに、タイヤで地面と絶縁された、ボディを仮アースにして成り立っている車載
電子機器。15年程前、仕事上民生機器部門からから車載電装部門に転属した
際にその電源系の条件の過酷さに驚いた記憶が。(笑)
館主2年程前にKTELのヘッドセット&ハンディ無線機を搭載してクラブの先輩と
やっと走行中に意思疎通が可能になったと喜んでいた、迄は良かったのだが…
Webで見掛けたDF-1011の機能に一目惚れして搭載した途端、ヘッドセットを介し
聞こえて来るようになった様々なノイズ…
会長の言う通り、「機器が増えればノイズが増える」の法則。
…
さて、前振りはこの位にして、DF-1011の使用で生じた様々なノイズ問題をどのように
解消したか、以下で紹介させて頂きましょう。
−発生したノイズの種類と発生源−
館主のポンコツGLで生じたノイズ、及び推定されるノイズの原因は以下の通り
でした。
1.トランシーバー受信時(待ち受け時)に聞こえて来るノイズ
1)オルタネーターノイズ
エンジンのプラグ系から出る、エンジン回転音と供に生じるノイズ。
アクセルを開ける度にパチパチヒュンヒュンと聞こえ、エンジンを切れば
聞こえません。
原因は多分すっかりくたびれたエンジン。プラグ系の配線も緩み捲くりで
ノイズ絶好調なんでしょう。(笑)
2)ウインカーリレー音
方向指示器を点ける度、ウインカーの点滅に合わせて「パッツンパッツン」
と聞こえるノイズ。
原因は、リレーの接点で生じるスパークを配線が拾ってしまったもののよう
です。
3)ナビの音声ガイド出力から回ってくる異常音。「ミー…ピッピッ…」
ナビの電源ケーブルを抜いてバッテリー駆動にすると聞こえなくなるので、
いわゆるグランドループノイズのようです。
4)ドライブレコーダーから発生するノイズ。
ドライブレコーダーの電源の位置を他の機器から遠ざけるとノイズの大きさが
変わるので、電源からノイズを飛ばしているようです。
DF-1011の電源や本体に近づけると「ピリピリピリ…」と昔のモデムやFAXのような
音がします。
3)4)から、GPS機能が搭載された機器はノイズの発生源になり易く、DF-1011に
取っても天敵のようです。
5)ホワイトノイズ
DF-1011本体から発生する、ボリュームを最大に上げると聞こえて来る
「サー」と言う音。(実使用上の問題無し)
これは仕様です。
但しバイクに乗って聞く分には周囲の風切り音の方が大きいので気になる
程ではありません。
「サー」音が聞こえる程ボリュームを上げると却って無線の受話音で耳が痛く
なります。この辺、実際に使って見ればお解りになると思います。
ボリュームを普通にしていれば聞こえない音と考えて良いでしょう。
尚、三協特殊無線の情報によれば、後継機種DF-2022ではホワイトノイズが
改善されているとの事でした。
2.トランシーバー送信時、相手に聞こえるノイズ
1)オルタネーター音
とにかく会話と同レベルの大きさのノイズでした。常に「キュルキュル
キュル…」とエンジンの回転に合わせて鳴り、受信する側はたまったものでは
ありません。…「知らぬは本人ばかり」で、暫く先輩方に迷惑を掛け続けて
いました。(汗)
送信ノイズの原因は2つありました。
1つは、DF-1011用ノイズフィルター付き電源(NF-708)がノイズを除去し切れ
なかったこと。
電源(NF-708)を外してDF-1011を電池駆動にすると送信ノイズはピタリと
止みました。(後述)
これはノイズフィルターのせいでは無く、ノイズフィルターの性能以上にノイズ
が酷い環境である事を示すものです。
流石20年以上前のポンコツ、頑固なノイズの巣窟車と言って良いでしょう。
もう1つはナビからのグランドループノイズ。オルタネーターノイズをナビが
拾ってしまっているようでした。
ナビの音声ケーブルを抜くとノイズはピタリと止みました。
−ノイズ対策とその効果−
1.改善後のノイズ発生状況
現在の状況は、
・送信ノイズは完治しました。
・受信待ち受け時のノイズもほぼ解消しました。
ドライブレコーダーの電源から生じるピ−ヒャラ音のみ、ホワイトノイズが
聞こえる程ボリュームを上げた時に僅かに聞こえてくる、程度となりました。
−2012年6月18日追記−
ドライブレコーダー電源へのノイズフィルターの追加によって、上記ピーヒャラ音も
改善され、現在何も不満はありません。(後述)
以上の通り、個人的に実用上の問題は無くなりました。
2.改善実施内容
納得の行くノイズ対策ができた、現在の電源系の回路図を以下に示します。
青字の箇所がノイズ改善のポイントです。
上記回路にいたるまでの紆余曲折は色々ありましたが、最終的にこの回路仕様で
落ち着きました。
1)改善ポイント@ノイズフィルターの追加
ACC電源にオーディオテクニカ社製ノイズフィルター「AT-NF12A」を採用。
http://www.audio-technica.co.jp/products/caracc/at-nf12a.html
これの追加で頑固だった受信待ち受け時のオルタネーター音は沈黙。
少しは聞こえているのかも知れませんが、外部から聞こえるエンジン音なのか
オルタネーター音なのか実際もう判りません。
このノイズフィルターは外装が金属製である事が除去効果が高い秘訣の一つ、
…なのかも知れません。
他に試した2社のプラスチックケース入りのノイズフィルター(名前は伏せます)
は少なくとも館主のポンコツ車ではあまり効果がありませんでした。
2)改善ポイントAノイズフィルター付電源(DF-1011用)の交換
DF-1011用電源をNF-708からNF-126に変更しました。
NF-126は、「NF-708でノイズが取り切れない時」に効果がある上位電源です。
お値段も708の3倍程となっておりますが、それに見合う価値はあるようです。
電源交換によって、送信ノイズが皆無になりました。
(但しナビから回り込むノイズに対してはあまり効果が無く、ナビ側の改善と合せ技
が必要でした。)
−通常電源NF-708− −上位電源NF-126−
3)改善ポイントB グランドループノイズ防止2連トランスのナビ出力追加
こちらのライダーの方の愛車FJR1300で同じ問題が起こっていたようで、私も
見習わせて頂きました。
http://www.emuya.com/index.shtml
FJR1300コンテンツ中、「ナビ→FTMのノイズ退治」の項を参照下さい。
Sansuiのトランス「ST-71」2個の簡単な回路をかませると、あれ程頑固だった
ナビ音声出力ラインに起因した受信ノイズと送信ノイズの双方が完治しました。
これは凄い。
尚、トランスをかます事で若干音声は小さくなるはずなのですが、少なくとも
DF-1011の「ナビ」入力端子では音量の差は生じませんでした。
蛇足ですが、「AUDIO」端子にトランスをかますと音量が小さめに変化する
事が確認でき、この辺はDF-1011の内部仕様によるものかと思われます。
以下写真は館主自作のトランス回路。
絶縁テープでぐるぐる巻きした上に電磁波吸収テープを巻いて省スペース
を図りました。嘘です、単にケースに入れるのが面倒だっただけです。
4)改善ポイントC 電磁波吸収テープの貼り付け
・ノイズの影響を受けそうな配線に電磁波吸収テープを巻き付けました。
・ドライブレコーダー用電源に同様の処置を施しました。
・ドライブレコーダー用の電源をグローブ収納BOX内で無く、グローブポケット
(後述)に移動して、DF-1011用電源から離しました。
これによって、ウィンカーリレーのパッツンパッツン音が聞こえなくなりました。
また、ドライブレコーダーの電源から発生していたノイズを殆ど押さえ込めました。
5)その他、配線にフェライトコアの追加
これは、正直気休めです。
フェライトコアは館主のポンコツ車上で殆ど効果がありませんでした。
いや、正直全く無かったように思います。(汗)
試行錯誤で付けてみたものの効果が無く、折角買ったのだからとの思いで
残しているだけです。
これで効果が現われる方もいらっしゃるかも知れないと思いまして、一応紹介
のみさせて頂きます。
以上1)〜5)の処置を施した配線状態は以下の写真の通り。
ギボシ端子で各電源を交換可能にしています。
尚、ノイズ低減,信頼性上の観点から、ギボシ端子は少し高くとも金メッキ製にする
事をお薦めします。ギボシとコードをカシメる道具はオートバックスで入手でき、
扱いも難しくないのでお試しあれ。
可能であればカシメ部分に半田を流し込み、接続の信頼性を上げましょう。
−2012年6月18日追加−
6)その他、ドライブレコーダー用ノイズフィルター追加(右下追加写真参照)
ドライブレコーダーのノイズを除去する為電源ノイズフィルター AT-NF400を
ドライブレコーダーの電源前段にかましました。(上述の回路図参照)
これで小さなノイズ音(ピーヒャラ音)はホワイトノイズの下に隠れました。
(「サー」音がレベルそのまま「サラサラ」音に変わりました。もう何も言う事有りません)
-2012年6月20日追記−
上記改善後、ノイズフィルター AT-NF400をグローブボックス内に収納し直したところ
ドライブレコーダーのノイズがまた少し復活し出しました。
調べたところ、原因は「AT-NF400をDF-1011にくっつけ過ぎ」。
ノイズフィルターもノイズ発生源になり得ると言う事ですね。
AT-NF400の位置をグローブボックス内でDF-1011から少し離すようにレイアウトを
変更して収納し直したところ、元のノイズレスの良好状態が復帰しました。
全く、ノイズ対策は試行錯誤ですね。(笑)
以上が館主の試行錯誤で効果があったノイズ対策となります。
−DF-1011トラブル事例−
1.φ2.5mmジャック使用上の注意
DF-1011の携帯電話,ナビ入力がφ2.5mmのメスジャックとなっています。
ナビ音声出力ジャックは大概φ3.5mm仕様のようでして、途中で変換する必要が
あるでしょう。
ここで注意しなければいけないのは、市販のφ2.5mmオスジャックだとDF-1011の
コネクター挿入部の段差が邪魔をして正しく挿し切れず接触不具合が生じる
恐れがある、と言う事です。
ナビのグランドループノイズが解消したはずなのにまたナビからノイズが入る
ようになり、調べたところジャック勘合部の接触不具合だった(=別原因)、と言う
経験が館主にありまして、皆様も同じ不具合が生じないよう紹介しておきます。
KTEL社製ケーブルDF-1011KN(推奨) 市販のφ2.5mmオス(浮き不具合)
ケースと干渉せず ケースと干渉し、挿入不完全発生
2.DIN8ピンコネクターの応力印加(使い方の問題)
トランシーバーと接続するDIN8ピンコネクター。接続相手にKTEL社製のケーブル
(KT032等)が使用されると、イレギュラーな応力がコネクター部に印加によって
GNDの接触不具合が生じる恐れがあります。
これによって無線機が常時送信状態になる、又はチャンネル切り替えができない
等の症状が生じます。
接触不具合の発生メカニズムは以下資料の通り。
同じDIN8ピンと言えど微妙にGND端子部の形状が異なる事に起因するもの
です。
但し、上記不具合はあくまで使う側の問題でして、コネクター接続部にイレギュラーな
応力を加えられ続けるような想定外の環境で使用し続ける事で起こり得るものです。
館主はGL1500のグローブボックスにDF-1011を入れて使用ており、コネクターに応力が
加わるような収納をしていた為に上記のような接触不具合が生じていました。
尚、三協特殊無線社からの回答によれば、市場で同様な接触不具合事例の報告は
無いとの事でした。
この事例は通常の使用状態で起こるものでは無く、あくまで想定外の使用環境での
端子接合のロバストネス(頑健度)の違いを示すものです。
皆様も本事例に限らず、ケーブル類には無理なストレスを加えたりしないよう、ご注意
下さい。
ちなみに、館主はKTEL社製ケーブルの干渉部を削る加工を行う事で使用環境上の
問題を回避しました。(以下写真、自己責任)
表カバーを切って部分剥きし、端子干渉部をカッターで切除処置
以下は主にGL1500オーナー対象の参考情報となります。
1.DF-1011グローブポックス収納方法
館主はDF-1011と電源、ノイズフィルター、ナビ用グランドループ防止
トランスの収納にカウル左側のグローブボックスを利用しています。
今まで物入れに使用していた収納BOXが無くなる為、代わりに
ポケットカバーが物入れになる「ダブルAdd-Apoポケット」なる便利
グッズを使用しています。
これはトンボイさんのオンラインショップで購入できます。
左写真、グローブボックスカバーの違い(左:純正,右:ダブルAdd-Apoポケット)
2.ドライブレコーダー Mio Mivue 128取付方法(実際の走行動画はこちら)
@付属のシガーライタープラグ(電源)を解体し、+12VとGNDの2本のコードを
引き出し、アクセサリー電源との接続用にギボシ端子等の加工を施します。
解体は至って簡単、差込口のリングを外してケースを左右に引くとカパッと
分かれて中身(電源基板Assy)が出て来ます。(左下写真)
A付属の防水カバーは元来電池を入れた状態で使用するもので、カバーを
被せた状態で付属の電源コードを挿す事はできません。
そこで、電源接続ジャック部にカッターで必要最低限の切れ目を入れて電源
コードを差し込めるようにします。(右下写真)
元々これはドライブレコーダーを採用した神奈川県警の白バイをヒントに
したものです。(同ドライブレコーダーを使用している模様:検索すれば当該の
白バイ写真を確認できます。)
スクリーンが大きいGL1500であれば、まずこの取り付けでコネクター根元部が
雨に濡れる事は無いでしょう。
Bその他、ドライブレコーダーやナビ等を取り付けるのに便利なのは、
ハンドルマウントバーです。ハンドルマウントバーは、ハンドルの左右間をブリッヂ
する一本棒で、機器の取り付けに困るGLには打って付けです。
(下写真、ハンドルマウントバー使用例。携帯電話ホルダー、ナビ、ペットボトル
ホルダー、ドライブレコーダー、ipodホルダー、ETCの計6点が装備されています)
ハンドルマウントバーはタナカオートセンターで入手可能です。
(同形状でGL1500用とGL1800用の2種あるので注意)
−あとがき−
1.DF−1011で感じた利点
・音声関連の機器がすっきり一つに統合されるのがとにかくありがたいです。
・パッセンジャー(後部座席搭乗者)と走行中普通に会話できて楽しいです。
後継機種DF-2022でこの機能が廃止されたのは残念。
DF-3033はFTM10シリーズ専用接続となってしまって機器の選択肢が狭まり、
方向性として疑問。故に、個人的にはDF-1011が最高です。
・携帯電話の受話音が大きく明瞭。わざわざ別機器の携帯電話用アンプを
買う事はありません。
・個人的に使う必要は無いのですが、AUDIO入力、音量十分で音質も十分で
あること、オーディオが無い通常のバイクはiPod+ステレオヘッドセットで重宝
しそうです。
2.不満点
・ナビの音量、もう少し大きい方が良いです。ナビ側で音量を調節できるの
ですし。当方使用のナビ、Mio Move C523だと走行中ちょっともの足りません。
(三協特殊無線社と掛け合う事で調整は可能かも知れません。以前無線の
音量をもう少し大きくできないか確認した結果「ノイズも増幅されるのでお薦め
できないが対応可能」との回答事例あり。→音量は十分と判り、見送り)
以上、当初クラブの先輩に伝えるつもりでいた情報ですが、これを機にDF-1011を
取り付けるライダーが増えてくれればと思いまして、コンテンツとしてUPする事と
しました。
最後に。
クラブの先輩二人は現在サイドカーにDF-1011のコードを延長して奥様との会話
を楽しんでいます。このような使い方もあるのですね。(笑)
先輩二人供未だ電源を入手していないので現在グランドループノイズは無いよう
ですが、…何がしかノイズの問題がこれから起こる、ように思えます。(笑)
ここのコンテンツを参考にしてあらかた回避できる事を館主期待しています。
また、私が経験した当コンテンツの情報が先輩ばかりで無く、他の皆様の参考にも
なってくれれば幸いです。
ではでは皆様、末永く楽しいバイクライフをお過ごし下さいますよう。
−by 館主−
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