ケグの再生(分解・洗浄・部品交換・組み立て)


ケグを買ったなら、最初に洗浄してください。たとえ新品でも埃などがついているでしょうから、少しは洗わなくてはいけません。中古の場合はなおさらで、「店から買ったならきれいなはず」と考えてはいけません。中古のケグをどのくらいきれいにして売っているかは、その店の考え方によりますし、殆どの店は、買った人間がもう一度洗浄するのを前提として売っています。酒屋のビールビンと同じと考えてください。酒屋からビールビンを買ってきて、そのまま洗わずに使うというのは、無謀と言うものです。

中古のケグを手にしたら、まず外側を洗いましょう。おそらく「汚い」はずですので、洗剤とお湯でゴシゴシあらいます。蓋の部分に付いている様々な部品(プラグやバルブ類)やその周りも、たわし等で洗ってきれいにします。

次にプレッシャレリーフバルブのプルリングを引き、ケグ内の圧力を抜いてください。お湯で外側を洗えばその温度で中の空気が膨張して圧力が高まりますし、店によっては炭酸ガスが入ったままのケグを送ってくることもありますので、必ずガス抜きをします。内圧が高いままケグの蓋を無理に開けると危険です。蓋を開ける前はガス抜きをすることを習慣にしてください。

蓋に付いている大きなノブを反転させると、蓋のロックが外れます。蓋がケグに張り付いている場合は押し下げると外れます。もし外れないならガス圧が全部抜けていない可能性がありますから、再度ガス抜きを行ってみてください。

蓋をケグから外したら中を見てみましょう。最悪の場合、元々入っていたジュースの類が中に残っていて、ちょっと驚きます。こういうケグの場合、お店は殆ど手間をかけていませんので、使えるまでにするには買った側の努力がかなり必要です。おそらく安かったんでしょうが、安いのにはそれなりの理由があるのです。これと逆にきれいに洗ってあるようなら、それは売った店がそれなりの手間をかけているということです。ですから、値段は少し高くても我慢しなくてはいけません。汚いくせに高かったら、それは最悪ですから別の店をさがした方が良いかもしれません。

さて観察が済んだら、ケグの中に熱いお湯を数リットル入れて蓋をし、激しくシェイクします。そして再び蓋をあけお湯を棄てます。これを都合何回か繰り返し、おおざっぱにきれいにしてください。中にこびりついたりしている汚れがあれば、ナイロンスポンジなどでこすって落とします。

次にケグを分解します。まず蓋を外し、その蓋についている大きなオーリングと、プレッシャレリーフバルブを外します。このバルブは、バルブに付いているプルリングを反時計方向にひねれば外せます。つづいてガスとビールのプラグを外しますが、12ポイントの深型ソケットレンチを使えば楽に外せます。レンチの径は7/8"か13/16"ですが、それに近いメートルサイズのレンチでも外せないことはありません。モンキーレンチなどでも外せるのですが、ケグに傷などをつける恐れもありますので、できればソケットレンチを使ってください。

プラグを外したら、それを分解します。プラグの中にはバネ圧で開閉するバルブ(ポペットバルブ)がありますが、それを取り外します。ケグからプラグを外しただけで取り出せるポペットバルブもありますが、はまり込んでいて外れない物もあります。そういう場合は、プラグを机などの平らな面に置き、プラグのてっぺんに見えるバルブの先を+ドライバ等で静かに押しこんでください。ある程度まで押し込むと中のバルブが外れます。蓋やプラグ等、外した部品類は紛失しないように、また後で洗いやすいように、熱い湯を入れたボウル等に入れておきます。

ケグのプラグが付いていたところに、ディップチューブが付いています。これもとりはずしてください。双方のチューブにはゴムのオーリングが付いていますが、これも抜き取って、プラグと同じに湯に浸けておきます。また短い方のディップチューブも浸けておきましょう。長い方はとりあえずケグの中に入れ、ケグにも熱いお湯を張って一晩浸け置きしてください。もし洗濯ソーダ(炭酸ソーダ。試薬屋で買えます)を持っているなら、50mlほどこの湯に溶かしておくと、より効果的に汚れを除去できます。

次の日ケグの中のお湯を棄て軽く濯いだ後、50mlほどの塩素系漂白剤と水を満たします。その後2時間ほど置いて(余り長い間浸けておくと、塩素でステンレスを痛めますので2時間程度にします)中身を棄て、ケグの中をスポンジ等で磨きます。磨き終えたら中に熱湯を1リットルほど入れて濯ぎます。この濯ぎは数回行って完全に界面活性剤を取り除いてください。塩素系漂白剤の代わりに第三燐酸塩(TSP)を70mlほど使うとさらに効果的な除去が可能ですが、燐を含む薬剤ですので環境面を考慮する方は、使用しない方が良いでしょう。なおこれを使う場合は水ではなく熱いお湯で行うと効果的です。第三燐酸塩は試薬を扱う店から500gが1000円程度で買えます。いずれにしろケグの内部をとにかくきれいにするということが必要なのです。ケグから外した蓋その他の部品も、同じように洗浄してください。ディップチューブの中も洗った方が良いでしょう。

ケグを分解すればわかるのですが、ケグにはゴムのガスケット類がかなりついています。プラグのオーリング2個、蓋の大きなオーリングが一個。そしてディップチューブについている小さなオーリングが2個ついています。これらは大概元々入っていた炭酸飲料の匂いを吸収しており、その匂いは容易には取れませんので、多くの店ではオーリングを交換してケグを売っています。まれにオーリングも交換していない場合がありますが、その場合は自分で交換してください。オーリングの小さなものは、水道用品売り場等で同じ様なサイズの物を売っていますので、それを買ってきて交換すれば良いでしょう。しかし蓋に使う大きなオーリングは同じサイズの物は中々見つからないので、ケグを買った店から買っておくのが正解です。

オーリングは交換しますが(もしくは店で交換済み)、ポペットバルブや圧力調整バルブはどうすれば良いでしょうか。これらにもゴムが使われていますので、やはりそれなりに匂いを吸収しています。当然これも交換した方が良いのですが、かなり費用がかかります(ポペット2個+圧力バルブで$10を超えます)ので、躊躇してしまいます。そのためか米国でもこれらを交換するのは、痛んで漏れが止まらなくなった場合だけの様です。あまり気にせずに使って良いのかも知れません。どうしても気になるという方は、熱湯等に数日から数週間浸けてみてください。完全には取れませんが、かなり匂いは減ると思います。

部品を交換したら、再度ケグを組み立ててください。この時ガスイン側とリキッドアウト側のプラグは、その径が微妙に違いますので、注意して取り付けてください。プラグのナット部分が12角か、6角でも側面に刻みが入っている方がガスライン用のプラグです。このとき中のポペットバルブが傾いていると漏れますので、きちんとは正立する様に取り付けてください。

組み立てが済んだら、中に熱湯を2リットルほど入れ蓋をしてケグを激しく振ります。その後しばらく静置し、再度蓋をあけてみてください。ケグの中の匂いを嗅いで、また中のお湯を少々口に含んでみて、変な匂いや元々入っていた飲料の匂いがするようなら洗浄不足と思われます。再度ケグを洗浄してください。面倒と思われるかも知れませんが、その変な匂いのついたビールを飲みたくなければ、やはりきちんと洗ってください。変な匂いもしないし完璧にきれいだと納得できたら、お湯を棄てた後さかさまにして乾かしましょう。このとき新聞紙等を下に敷いておくとケグから出た水を吸収してくれて具合が良いです。暖かい時期なら一日くらいで、そうでないときでも数日で乾くと思います。

乾いたケグに炭酸ガスラインをつなぎ、1キロ程度のガス圧を加えてみてガス漏れを点検します。蓋が傾いていると容易にガスが漏れますので、そういう場合は蓋を再度取り付け直してください。またプラグのポペットバルブからもよくガスが漏れます。ちゃんとまっすぐに入っているのに漏れる様でしたら、爪楊枝や爪の先でバルブのセンタを少しいじってみてください。大抵の場合漏れは止まります。しかしどうしても止まらない時は、プラグを分解しバルブのゴム部分にシリコンスプレーを塗ります。もちろんこのシリコンスプレーは無色無臭で食品添加可能な物である必要があります。それが無いときは食用油を極薄く塗っても効果がありますが、ゴムに油ですからあまり良くないのは確かです。あくまでも個人の責任で行ってください。

以上でケグの再生は完了です。あとは使う時に殺菌して使うのはビンと同じです。なお、ケグを使わずにおく時は、パッキンのゴムが変形するのを避けるために、蓋を取り外しプラグ部分もネジを緩めておくと良い様です。そして中に埃などが入らないようにビニール袋をかぶせておいてください。

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