ケグ詰め


1.洗浄・殺菌・濯ぎ

これまでビンに詰めていた代わりに、今度はケグに詰めることになります。ビン詰めではなく、ケグ詰めということになるわけです。ビンと同じ様にケグを洗い、殺菌する必要がありますが、私は殺菌には塩素剤を用いています。もちろん塩素系の漂白剤でもかまいません。なお、塩素はステンレスには良くないのですが、濃度が高くなく短時間なら問題は少ないと私は割り切っています。殺菌には塩素濃度が100-200ppmもあれば充分で、ケグの全容量が20Lとすると、200ppmで約4gの塩素が必要になります。私の使っているのは6%の塩素剤ですから、60ml程でこの濃度になります。水を半分ほどケグに入れ、塩素剤を追加してさらに水を満杯にして、ケグの蓋をします。ディップチューブ内には空気が溜まっているでしょうから、ポペットバルブの先を押して空気を抜き、ディップチューブの中も殺菌するようにしてください。その後15分ほど置いて殺菌は完了です。

殺菌を終えたらケグをお湯で濯ぎます。塩素系漂白剤の場合、界面活性剤が入っていますので念入りに濯いでください。殺菌用の塩素剤にはこれは入っていませんが、塩素がのこっていると味に悪影響を与えることがありますので、この場合もある程度念入りに濯いでください。濯ぎを終えたらケグをさかさまに立て、中の水を切ります。ビンと違って簡単に倒立させることができるのも、ケグの利点のひとつです。

2.ケグ詰め

濯ぎと水切りの終ったケグの蓋をし、レギュレイタからのガスラインを繋ぎます。レギュレイタでガス圧を0.5kgf/cm2程度に調整し、ガスラインのバルブを開きガスをケグ内に通します。5秒ほどガスを通したらケグのレリーフバルブを開いて、ケグ内のガスを解放します。これを都合3回ほど行えば、空気より重い炭酸ガスが下に溜まりますので、空気を追いだして替わりに炭酸ガスを充満させることができます。こうしておけば、ふたを開けても中ヘの空気が入り込むの可能性を減らすことができます。

続いてケグのふたを取り外し、発酵容器からビールをオリ引きして移します。ビールの液面は、少なくともケグ内のガス用のディップチューブより下にないといけません。これより多く入れるとビールがレギュレイタに逆流し、レギュレイタを壊してしまいますので、注意して下さい。なおチェックバルブが付いていると、万が一この状態になってもケグが壊れるのを防ぐことができます。ケグにビールを移し終えたら蓋をし、0.5kgf/cm2ほどのガス圧をかけます。これによって蓋が密着し、空気の流入を防ぐことができます。このとき蓋が傾いていたりすると、上手く密閉されずにガスが漏れますので、そういう時は蓋を取り付け直してみてください。

2.カーボネーション(泡入れ)

ケグ詰めしたビールに炭酸を含ませるには二つの方法があります。ひとつは大きな瓶にケグを見立てる方法。もうひとつは force carbonation という方法です。ここではより便利な後者について述べましょう。この方法ではケグにガス圧をかけておき、その圧力で炭酸ガスをビールに溶け込ませます。carbonationを訳せば炭酸含有化などになるのでしょうが、どうもなじみにくいので"泡入れ"という言葉をこの記事では使います。

泡入れするためのガスの圧力をどの程度の強さににするかは、ビールの液温と望む炭酸の量に依ります。温度が低いときはガスが溶けやすく、高いときは溶けにくくなります。ですからビールの温度が高いほど高いガス圧をかける必要があります。また泡を強くしたければ、ガス圧を上げねばなりません。そしてこれらビール温度、炭酸含有量とガス圧の関係をあらわしているのが以下の表です。この表を参照すれば簡単にかけるべきガス圧を知ることができます。

                   必要ガスボリューム
 温度 2.00 2.10 2.20 2.30 2.40 2.50 2.60 2.70 2.80 2.90 3.00
 ----------------------------------------------------------
  0℃ 0.25 0.31 0.38 0.45 0.52 0.58 0.65 0.72 0.78 0.85 0.92(kgf/cm2)
  1℃ 0.30 0.37 0.44 0.51 0.58 0.65 0.72 0.79 0.85 0.92 0.99
  2℃ 0.35 0.42 0.50 0.57 0.64 0.71 0.78 0.85 0.93 1.00 1.07
  3℃ 0.41 0.48 0.56 0.63 0.70 0.78 0.85 0.92 1.00 1.07 1.14
  4℃ 0.46 0.54 0.61 0.69 0.77 0.84 0.92 0.99 1.07 1.15 1.22
  5℃ 0.52 0.59 0.67 0.75 0.83 0.91 0.99 1.06 1.14 1.22 1.30
  6℃ 0.57 0.65 0.73 0.81 0.89 0.97 1.06 1.14 1.22 1.30 1.38
  7℃ 0.63 0.71 0.79 0.88 0.96 1.04 1.12 1.21 1.29 1.37 1.45
  8℃ 0.68 0.77 0.85 0.94 1.02 1.11 1.19 1.28 1.36 1.45 1.53
  9℃ 0.74 0.83 0.92 1.00 1.09 1.18 1.26 1.35 1.44 1.53 1.61
 10℃ 0.80 0.89 0.98 1.07 1.16 1.25 1.34 1.42 1.51 1.60 1.69
 11℃ 0.86 0.95 1.04 1.13 1.22 1.32 1.41 1.50 1.59 1.68 1.77
 12℃ 0.92 1.01 1.10 1.20 1.29 1.39 1.48 1.57 1.67 1.76 1.85
 13℃ 0.98 1.07 1.17 1.26 1.36 1.46 1.55 1.65 1.74 1.84 1.93
 14℃ 1.04 1.13 1.23 1.33 1.43 1.53 1.62 1.72 1.82 1.92 2.02
 15℃ 1.10 1.20 1.30 1.40 1.50 1.60 1.70 1.80 1.90 2.00 2.10
 16℃ 1.16 1.26 1.36 1.46 1.57 1.67 1.77 1.88 1.98 2.08 2.18
 17℃ 1.22 1.32 1.43 1.53 1.64 1.74 1.85 1.95 2.06 2.16 2.27
 18℃ 1.28 1.39 1.49 1.60 1.71 1.82 1.92 2.03 2.14 2.24 2.35
 19℃ 1.34 1.45 1.56 1.67 1.78 1.89 2.00 2.11 2.22 2.33 2.43
 20℃ 1.41 1.52 1.63 1.74 1.85 1.96 2.07 2.19 2.30 2.41 2.52
 21℃ 1.47 1.58 1.70 1.81 1.92 2.04 2.15 2.26 2.38 2.49 2.60
 22℃ 1.53 1.65 1.77 1.88 2.00 2.11 2.23 2.34 2.46 2.58 2.69
 23℃ 1.60 1.72 1.83 1.95 2.07 2.19 2.31 2.42 2.54 2.66 2.78
 24℃ 1.66 1.78 1.90 2.02 2.14 2.27 2.39 2.51 2.63 2.75 2.87
 25℃ 1.73 1.85 1.97 2.10 2.22 2.34 2.46 2.59 2.71 2.83 2.95
 26℃ 1.79 1.92 2.04 2.17 2.29 2.42 2.54 2.67 2.79 2.92 3.04
 27℃ 1.86 1.99 2.12 2.24 2.37 2.50 2.62 2.75 2.88 3.00 3.13
 28℃ 1.93 2.06 2.19 2.32 2.45 2.58 2.70 2.83 2.96 3.09 3.22
 29℃ 2.00 2.13 2.26 2.39 2.52 2.65 2.79 2.92 3.05 3.18 3.31
 30℃ 2.06 2.20 2.33 2.47 2.60 2.73 2.87 3.00 3.13 3.27 3.40
		

ガスボリューム量は、多くのビールは 2.2-2.6、英国風の炭酸の弱いビールは 1.5-1.8、炭酸の強いワイツエン等は 2.8-3.0 程度です。これを参考に炭酸量を決めれば、加えるガス圧はビールの液温で決まります。例えば求めるガスボリュームを 2.4 とすれば、ビールの液温が10℃なら、加えるガス圧は 1.16(kgf/cm2) となります。

加えるガス圧を決めたら、ケグとレギュレイタをつなぎレギュレイタのガス圧を調整します。ボールバルブを開くとガスが流れ込みますが、数分経つとケグとレギュレイタのガス圧が平衡して流入が止まります。そのまま5日程度置いておいてください。これでもう飲めるようになります。もし泡が足りないと思ったら圧を上げてさらに数日おけば良いでしょう。泡入れが済んだら、ガスラインはケグから外しておいてかまいません。

5日も待てない人はケグを揺すってガスを溶け込ませるという手もあります。この場合ケグ内のビールがレギュレイタに流れ込む恐れがありますから、チェックバルブは必須です。私の場合はケグを横に倒して前後に激しく転がしています。揺するたびにガスが流れ込み、ビールに溶け込んでゆきます。そしてそのうち(十数分程度後)いくら揺すってもガスが溶け込まなくなりますが、そうなったらケグ内のビールはフルに泡が入っていることになります。つまり、飲むことができるのです。

※米国では圧力の単位がPSI(Ponds par Square Inches)です。これをkgf/cm2に直すには、14で割ると大体合致します。


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