設備


1.ケグの構造
5ガロンケグの写真

ケグ詰めをするには何は無くともケグが必要になります。このケグは先に述べたとおり炭酸飲料用の容器であり、右の写真の様な外見をしています。サイズは5ガロンもしくは3ガロンが標準的なのですが、入手し易いのは5ガロンのケグです。写真も5ガロンの物ですが、3ガロンだと背がもう少し低くなります。

ケグの上面には楕円形の大きな蓋があり、レバーでロックできるようになっています。この大きな蓋がある点がビール用のケグとは大きな違いであり、中に手やブラシを突っ込んで洗うことができるのです。ケグとこの蓋との間には大きなオーリングが付いていて、これで密閉するようになっていますが、これだけでシールするわけではなく、ケグ内部に圧力がある程度かかることによってこの蓋が押し上げられ、その結果きちんと密閉される様になっています。この構造上ロックレバーを解除しただけでは蓋は取れませんので、まずケグ内部のガスを抜いてからロックレバーを解除して蓋を取り外します。ガスを抜きには、次に述べるプレッシャレリーフバルブを用います。

蓋の中央にはプルリングの付いた小さなバルブが付いています。これをプレッシャレリーフバルブと言い、ケグの内圧が危険なレベルまで増加すると自然に開いて中の圧力を開放するようになっています。またプルリングを引くことで、手動でガスを抜くこともできます。ケグの内圧を調整したり、先に述べたように蓋を開ける際にガスを抜く時などは、このリングを引いてガスを抜くことになります。なおケグによってはこのバルブが付いていない物がありますが、その場合はガスイン側のプラグ内のポペットバルブを開いてガスを抜きます。


ケグの部品(蓋、ポペットバルブ、プラグ

ケグの上面には蓋と取っ手以外に、二つの出っ張りが付いています。これをタンクプラグと呼んでいますが、片方がガスインプラグ、そしてもう片方がリキッドプラグです。通常はイン側になんらかの目印(プラグの近くの取っ手に丸い印が付いていたり、INと書いていたりする)がついています。このプラグにはそれぞれガスを入れたり、中の液体を取り出すために金具をつなぐのですが、金具にベアリングの玉の様なボールが内臓されていて、それの押し下げでロックするボールロック式と、プラグ自体に突起があり、金具の穴にその突起を引っかけてロックするピンロック式の2種類に大きく別れます。

基本的にはどちらのタイプでも良いのですが、入手し易いのはボールロック式であり、また価格も総じて安い様です。ただしピンロック式はすこし寸胴でケグの背が低くなっていますので、場合によってはそちらの方が合うこともあるでしょう。いずれにしろ、金具等も2種類必要になりますから、2種類のケグをを混在して保有するのでは無く、好みの方ひと種類だけを持つのが賢いと言えます。

プラグの径はイン・アウトとも同じように見えるのですが、実は若干ガスイン側の方が細く、ガス用のコネクタをリキッド側にむりやりねじ込むと、外れなくなってしまいます。そこでボールロック式の場合、イン側のプラグの取り付けネジが12角のナットになっていたり、リキッド側と同じく6角ナットの場合でも、ナットの側面に切り込みが入っていて、リキッド側のナットとあきらかに区別できる様になっています。またピンロック式の場合は、ピンの数がインとアウトでは違っていますので、間違うことはありません。

プラグを取り外すと、中にチューブが入っています。リキッド側のチューブはケグの底近くまであり、液を無駄無く取り出せる様になっています。またガス側は液が満杯でも届かない様に、短いものになっています。この2本のチューブをディップチューブといいますが、通常はステンレス製です。まれに(特にガス側が多い)プラスチック製のチューブが付いていることがありますが、プラスチックは匂いを吸収しますので、元々入っていた炭酸飲料の匂いが染み付いている場合が多いようです。そのような時は取り替える必要があります。購入する時はこの点も留意する必要があるでしょう。もっとも、新品を買うという人は気にする必要は無いですね。

プラグの上側には、孫悟空の金環よろしくオーリングがはまっています。また2本のディップチューブは、プラグに入る側の先端が広がっており、その下にもオーリングが付いてます。いずれもプラグや金具、そしてタンクとの密閉性を保つための物ですから、ガスや液が漏れる場合は交換する必要があります。

プラグの中にはばね仕掛けの小さなバルブが組み込まれており、これをポペットバルブと言います。このバルブは金具を付けると開き、金具を外すと自動的に閉じる様になっています。タンクの上面にこの金具の頭部が覗いて見えますが、この部分を金具の中にある突起が押し下げることによってバルブが開く様になっているのです。もし買ったケグにプレッシャレリーフバルブが無い時は、ガスイン側(リキッド側を押すと液が飛び出すのでご注意)のプラグにあるバルブの頭を押して、ケグの中のガスを抜くことになります。

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2.ケグの入手

ケグを安価に入手するには、現在のところ米国の自家醸造店から海外通販するのが一番簡単な様です。東急ハンズなどでかなりの値段で売られているそうですが、そのお金があればまとまった数のケグを通販で買うことができます。新品で1本$100前後。中古なら$25−$35程度で買えます。薄いステンレス製なのでそれほど重くは無く、船便であれば送料もそれほど負担にはならないでしょう。

通販が嫌だと言う方は日本での入手先を探すことになります。先に述べた東急ハンズ以外でも、日本でもコーラ等の業務用流通に同様のケグが使われているので、入手は不可能では無いはずです。しかし私が問い合わせた限りでは入手困難でした。また業務用焼酎の流通にも使われているとの情報があるのですが、ケグだけの入手ができるかは不明です。もし入手のルートをご存知の方がおられましたら、私までご一報いただければ幸いです。

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3.CO2タンク
CO2タンク

ケグの次に用意しないといけないのが炭酸ガスのタンクです。酒屋さんが居酒屋等に貸出している、緑色で「液化炭酸ガス」と大書きしてあるあのタンクです。保証金を払って大きな酒屋さんからレンタルすることが可能です。費用は3千円程度でしょう。問い合わせてみてください。レンタルを受けた場合は、空になったら別のタンクを持ってきてもらい、代わりに空のタンクを返すことになります。

自分で用意するという方は、特殊ガスを扱う店等に頼めば取り寄せてもらえます。また最近では水草の為に使う方も多い様ですので、熱帯魚店等もねらい目でしょう。ただし自分で保有する場合は、タンクの定期点検費用も自分で負担することになります。高圧のタンクですので3年毎の定期的な検診が義務づけられています。この結果充填に出した際、既に前回の点検から3年を過ぎていた場合は強制的に点検が入ります。その検査にパスしなければタンクは穴をあけられて廃棄ということになりますが、めでたくパスすると充填してもらえます。なお、5キロのタンクで1本1万2千円程度します。

レンタルの場合は、点検といった面倒なことは店側がやってくれますので気にしなくて良いでしょう。ただしあまりに使用充填頻度が少ない場合、店としては商売上のうまみが少ないので良い顔してくれないかも知れません。その辺は親切な酒屋を見つけて解決してください。

米国の自家醸造店のカタログにもタンクは載っていますが、国内では充填できるかは不明です。先に述べた検査も受けないといけませんので、かなり面倒なことになります。無理して輸入する利点は特に無いでしょう。

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4.レギュレイタ(圧力調整器)
CO2ガスレギュレータ

私の経験で一番入手困ったのがこのレギュレイタです。ガス屋さんなどで炭酸ガス用のレギュレイタを買おうとすると、数万円と言われることがあります。最低2万は見た方が良いでしょう。そこで私は安い酸素用のレギュレイタを流用していたのですが、なぜかすぐに壊れました。炭酸ガスを通したせいなのかは未だ不明ですが、やはり別種のガスを通すのは問題がある様ですし、メーカーも保証してくれません。

米国の自家醸造店のカタログでは$50前後でこの品があるのですが、不幸なことに日本のタンクにはネジが合いません。日本のタンクのネジはミリですが、米国のタンクはインチなのです。米国製のレギュレイタのナットだけをミリサイズの物に交換するという反則技もあるのですが、ナット自体の入手が問題です。またその他色々リスクもありますので誰にもお勧めできる手ではありません。それでも幸か不幸か、私には壊れた酸素用レギュレイタがありましたので、それについていたナットを取り出して、米国から買ったレギュレイタに取り付けています。しかし日本の高圧ガス関連の法律では、米国のレギュレイタを使うこと自体が違法なことかも知れません。行う方は御自身の責任で行ってください。

では日本では高価な炭酸ガス用のレギュレイタを買うしかないのでしょうか。色々手を尽くした結果、親切なガス器具屋さんがある品をみつけてくれました。物としてはコーラやビール等のサーバーに付く品だそうで、1万6千円で入手することができました。ユタカエンジニアリングと言うところの物でした。写真はそのレギュレイターです。

必要なレギュレイタの条件としては、(1)CO2ガス用であること、(2)二次圧は0〜3kgf程度まで可変で使えること、(3)二次側の圧力を確認できるゲージが付いている、(4)二次側を遮断できるバルブがある、などでしょう。二次圧の目盛りが付いたダイアル式のレギュレイタであれば、(3)の二次圧ゲージは不要かも知れませんが、やはり何らかの手(例えばホースの途中に圧力ゲージを取り付ける)で二次圧を計れる様にした方が良いでしょう。また(4)のバルブは必須ではありませんが、あると操作性が増しますので、付いていないレギュレイタを使う時は、エアー工具の売り場あたりから探してきて取り付けておくと良いでしょう。

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5.接続金具
ディスコネクタの写真

ケグのプラグに差し込む金具を、クイックディスコネクタと言います。自分で買ったケグのプラグに合う物を、海外通販してください。ボールロック式のケグを買ったなら、当然ボールロック式のコネクタを買う必要があります。コネクタにはステンレス製とプラスチック製がありますが、ステンレス製は殆ど見かけませんし、プラスチック製でも何の不都合もありませんので、プラスチック製で良いでしょう。それよりも、後々の事を考えてイン・アウトとも数個ずつ購入しておくのが良いと思います。コネクタは$5程度で買うことができます。

コネクタとホースとの接続部分は、あらかじめタケノコになっているもの(barbed)と、フレアーナットをねじ込める様に、ネジがついている物があります。フレアーナット式の場合コネクタだけではホースを接続できませんので、別にフレアーナットとそれに合うタケノコ(多くはセットで販売しており、flare nut & stem、swivel nut & stem, swivel nut & barb 等と表現されている)を買う必要があります。ただしフレアーナット式だとコネクタからホース部分を簡単に取り外せるので、使い勝手が良いのも事実です。写真の物はフレアーナット式の物です。

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5.タップ(蛇口)
ピクニックフォーセット(タップ)の写真 タップ

ケグからのビールを注ぐ物がタップ(tap)です。フォーセット(faucet)とも言います。ビアバーなんかに行くと、タワーの先に黒い引き倒し式のレバーが付いたタップが付いていますが、クロームフォーセット等の名で自家醸造店のカタログに載っています。これはタップ部分だけで、タワーは付いてきませんが、数十ドルという値段です。ちなみにタワーはDraft Towerなどという名でカタログに載っており、タップも込みの値段($150超)になっています。もっともタワーを扱っている店は極端に少ないので、お目にかかれないかも知れません。これらの高級な品以外にピクニックフォーセットとか、スクイーズフォーセットという名の物も見かけます。これはプラスチック製の安価な品で、$5程度で買うことができます。最初はこの安いのでも充分でしょう。

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5.ホースとクランプ

ケグシステムを作るには、炭酸ガス用とビール用の2種類のホースが必要です。炭酸ガス用は特に圧力がかかりますので、耐圧性ホースを使う必要があります。ホームセンタのエアーツール売り場等に置いてありますので、レギュレイタのホース接続部分と、クイックディスコネクタのタケノコ部分の径に合う内径のホースを探してください。コネクタとレギュレイタで合うホースの内径が大きく異なる場合は、径を変換するための異径ニプルなどを用意して繋ぎます。またホースをかしめるためのクランプも必要になります。針金で縛っただけ、等の安易な接続では簡単に外れてくれますので、多少高くても品質の良いクランプを使ってください。

ビール側に使うのはビニルホースが適当です。ビールを注ぐタップと、ビール側のコネクタのタケノコに合う内径の物を用意しますが、私は内径4mmという細いチューブを使っています。細いチューブを使うのは、後述の「ノーフォームライン」のページで述べているとおりの理由によります。この場合当然内径が細いのでホースをそのまま繋ぐことはできません。そこでこれも異型ニプルなどを用意して繋ぐことになります。またビールラインでもガスラインと同様、しっかりとしたクランプでホースを固定してください。この部分が緩いと、知らず知らずのうちにビールがそこから漏れ、床をビール浸しにすることになります。

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6.バルブ類

レギュレイタからケグへ行くガスラインの間に、ガスを遮断するバルブがあるとガス圧の調整が楽になります。バルブを閉めた状態でレギュレイタの二次圧を調節し、その後バルブを開放する様にすれば、ケグには調整済みの適正な圧力を掛けることができるわけです。レギュレイタによってはあらかじめ付いているものもありますが、無い場合は、エアーツールの売り場にあるボールバルブ等を買ってきて付けておくと良いでしょう。

このバルブの他に、ビールがレギュレイタに逆流するのを防止するための、チェックバルブ(単方弁)を付けておくとなお良いでしょう。その名のとおり片側方向にしか流れない為、何らかの原因でビールがレギュレイタに流れ込むのを防ぐことができます。ビールがレギュレイタに流れ込むと、レギュレイタは壊れてしまう場合が多いのです。またタンクの弁を開いたまま、誤って倒してしまうと、液化炭酸ガスが気化せず液体のままレギュレイタに流れ込む可能性があり、これによってもレギュレイタが壊れることがあります。タンクは倒れない様にチェ−ンで吊るなどしておくなど、なんらかの転倒防止策が必要です。


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