チラーの写真

カウンターフロー型ワートチラー

(Counter Flow Wort Chiller)

1.はじめに
煮込みを終えたワートは、発酵可能な温度までできるだけ速く冷やす必要があります。この記事はワートを急速に冷却するための装置(チラー)の制作記事です。
2.構造
チラーの概念図 ここで制作しているのは、カウンターフロー型と呼ばれるタイプの装置で、冷却液(水)と被冷却液(ワート)を逆方向に流して熱交換をし、冷却を行うものです。カウンターフロー型にも種々の形態があるのですが、一番制作しやすく効果も期待できる二重ホース型のものを今回は制作しました。具体的な構造としては、散水用のホースの中に銅管を通し、その銅管の外側(ホース内)に水を流しながら、銅管中を水とは逆方向にワートを通す構造になっています。真っすぐなままですと場所をとりますので、コイル状にして使います。
3.制作
このチラーは Andrew T Lynch さんの記事(Drew's Counterflow Wort Chiller Design)に基づいて作成しました。Lynchさん、本ページ作成の許可をいただき、どうもありがとうございました。
(1) 部品リスト
呼び径1/2"銅管 30mm長にカットしたもの   2本
呼び径1/2"銅管 40mm長にカットしたもの   4本
呼び径1/2"銅管キャップ                  2個
呼び径1/2"銅管TEE(Tの字型の分岐パイプ) 2個
外径3/8"焼きなまし軟銅管                7m
内径15mmの水道ホース                    10m
ホースバンド                            4個
束線バンド(ZIP TIE)                     適当数
銅管用半田+フラックス
		
(注)
呼び径とは配管材料の径の呼称値です。配管用と空調用では呼び径と実寸値の対応が違います。配管用の場合は呼び径よりも実寸の方が太く、空調の場合は呼びと実寸は同じです。今回の部品リストは配管用の呼び径で示してありますので、1/2"の銅管といいましても、実際の外径は5/8"あります。配管材料屋さんはその辺はわかっておりますので、配管用に1/2"の銅管と言えば、ちゃんと外径は5/8"の管を売ってくれるでしょう。なお、焼きなまし軟銅管は実寸で外径が3/8"の物です。

Lynchさん本来の設計ではコイルの長さは50'となっていましたが、今回はその半分より短い長さにしています。小さくしたかったのと、ワートの流量を多くしたかった為ですが、当然冷却性能は落ちています。
(2) 組み立て
( 1)30mm長の1/2"銅管をTEEの片側に差し込み半田付け。
( 2)TEEの反対側と中央に、40mm長の1/2"銅管を同じ様に差し込んで半田付け。
( 3)3/8"の穴を開けたキャップを短い方の銅管にかぶせて半田付け。
( 4)このT部品を二組作成します。
( 5)3/8"−7mの銅管を真っ直ぐに伸ばし、15mm径のホースに差し入れる。
( 6)ホースの両端に銅管を出した上で、先ほど組み立てたT部品がうまく収まるように、ホースを切って長さを調節。
( 7)TEE部品のキャップ部分に3/8"銅管を通し、キャップの反対側の銅管をホースに通してクランプでかしめる。
( 8)キャップの穴と3/8"銅管の隙間を半田付け。
( 9)適当な円筒(鍋等)に巻き付けてコイル状にする。
(10)コイルがぐらつかないよう束線バンドで固定。
(11)導水と排水に適当な長さに切った15mmホースを、それぞれT部品の中央の銅管に通しクランプでかしめる。もっとも、これらのホースは使うたびに取り付けた方が、場所を取らなくて良い。ホース用のクイックディスコネクタなどを付けるとなお使い良くなる。 チラーの組み立て図
4.使用方法
(1)殺菌
私は圧力釜の蒸気を通してチラーを殺菌していますが、熱湯を通して殺菌するというのも一般的な方法です。
(2)接続
図のように接続しますが、ラッキングホースは当然煮込み鍋からの熱いワートを通すことになります。そのため通常のビニールホースだとふにゃふにゃになりますので、糸入りのホースを使うと良いようです。また同様の理由で、ラッキングケーンは銅やステンレス製のものでなければなりません。チラーを作った残りの銅管を適当に曲げれば、ケーンを作ることができます。図中のTRUBとは煮込みで出るオリ粕のことであり、遠心分離(Whirlpool)によって図のように鍋の底中央に集めることができます。
チラーの使い方
(3)サイホンの開始
まずチラーに冷却水を通しておき、その後サイホンでワートを通しますが、チラー内のスペースが多いため、単に口で吸うだけではうまくサイホンできないかも知れません。ワートの出口からケーンまであらかじめ水を満たすなどして、サイホンの開始を容易にした方が良いでしょう。
(4)使った後
必ずお湯を通して中のカス等を取り除いておいてください。また酢を通しておくと内部の銅が磨かれるので良いとの話もあります。何回かに一度は管内を掃除する必要があるのでしょうが、今のところ良い方法が見付かりません。ステンレスワイヤに小さなブラシなどを付け、それを使っての掃除が良いのではと想像しています。
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Original chiller was designed by Andrew T Lynch.
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