今回の仕事は
艇そのものではなく、パーツの設計、製作です。
今年の春の国際ボートショーに、堀内浩太郎氏設計、金井紀彦氏製作の2馬力水中翼船が出品されました。
このボートは、2馬力の船外機で13ktの速度を出しましたが、さらに速度を20ktまで上げたいとのことで、ヤマハ発動機マリンエンジン事業部に相談が持ち込まれました。
人力ボートに馬力が近いことから、当工房に打診があり、水中翼とストラット、プロペラ部分のお手伝いさせていただくことになりました。まず全体の抵抗とプロペラの計算を行ない、可能性があることが確認され、設計
製作に取りかかりました。
ストラット(支柱)はSAF2507というスーパー二相系ステンレスで、3mm厚を2.2mmから1.5mmのテーパーに削り
円弧状に曲げて溶接したものです。内部には冷却水用のパイプが入っています。ロワーケースはA5056の削り出し(外注品)です。
(金属加工は
河合鉄工所の設備をお借りしました。ご協力ありがとうございました。)
水中翼はスーパーフェニックスの100mタイムトライアル用の予備のもので、カーボンUDプリプレグの整形品です。元の翼型はASM-LRN-A10ですが、水中翼の荷重が半分になり、このボートの最高速時の揚力係数ではドラッグバケットから外れて抵抗が大きくなるため、翼型をSD6060改(E222に酷似)に変更しました。
プロペラもストラットと同じ材質で、糸巻き状に旋削したボスに
厚さをテーパーに削った板を溶接し、展開形に切り抜いた後、ブレードをねじって各半径のピッチに合わせ、その後
断面を翼型に削って作りました(D=320mm P=360mm)