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◆ 偶成天 舞踏レッスンについて ◆

(更新 1/8, 2018)

舞踏レッスンやワークショップへの参加を考えている方へ

2018年、平成30年となりました。
これまでの舞踏レッスンやワークショップの経験に基づいて、今年は「舞踏セラピー」の方向でレッスンを実施します。これまで「舞踏セラピー」という言葉はあまり使わないできたのですが、あらたにそうした内容で進めていくことにしたものです。詳しくは「舞踏レッスン」のコーナーをご覧下さい。

なお、竹内実花は9月上旬まで海外のため、今年前半は森田一踏によるレッスンのみとなります。舞姫・竹内実花の評判は、舞踏レッスンにおいても同様に高いので残念ですが、致し方ありません。
なお、今年のレッスンについては下記の内容もぜひお読みください。
森田一踏 (2018, 1/8)



 初めて舞踏のレッスンに参加した…という人が毎回のようにいます。特にダンスの経験もない方も含まれていますが、皆さん「面白かった」「心身の感覚が深まった」「いろいろな動きが出てきて驚いた」「決まった通りに踊る必要がないのが新鮮だった」…などの感想を伝えてくれます。 
 
 竹内実花BUTOH研究所のスタジオ「ぐう」でのレッスンですが、なんと!畳敷きのスタジオでのレッスンです。低い姿勢だけではなく、寝転がるような動きや横になってのレッスンも数多くあるので、床がピータイルやフローリングだと冬は冷たいし堅いし、膝や腰を簡単に痛めてしまいます。ということで、薄手の畳敷きのスタジオでのレッスンとなります。
 
 毎回、海外からの参加者がいて、異口同音に「畳敷き!!」と驚きます。その後で「畳敷きの練習場を帰国してから作りたい」「畳を持って帰りたい(持って帰らないで自分で買ってくださいね)」となります。実は、その畳はだいぶ柔らかくなっているので、バランスをとるのが少し難しいのですが、柔らかいので畳というか地面・大地の突っ伏した姿勢や寝転がる動き、例えば、30数年前、若々しい山海塾が「卯熱(うねつ)」などの公演で見せた「ぐずぐす起き」などのレッスンには最適なのです。これは元々、野口体操からきていますが、山海塾はそうした野口体操的な動きをかつてはずいぶん取り入れていましたね。
 
 舞踏…と聞くと、かつては野蛮で暴力的なグループもありましたが、私のところは女性舞踏家・竹内実花の美的センスも関わり、かなり、のんびりとレッスンしています。ルールは「自分や周りの人を身体的にも心理的にも傷つけないこと。周りの物を壊さないこと」…だけです。レッスンそのものも無理強いはしません。自分の判断でどれだけがんばってもかまいませんが、それもこのルール内で、ということです。竹内実花はニコニコ微笑みながら「それでは、人魚腹筋をしましょう」と言います(例の「人魚姫」の公演で披露したアレです)。腹筋がすぐに攣る(つる)きついレッスンですが、ニコニコして続けます。
 
できても良いですが、自分の限界を体感することも稽古の大事なポイントです。ルールから「怪我をしないこと」が大事だと分かるように、怪我をしないしさせたりもしません。怪我をすると稽古ができなくなります。これはまずいし、怪我をすると身体感覚が甘いことが露呈するので、怪我はしないようにレッスンします。

 最近は私も年をとったので、感情的に過激なこともだいぶ少なくなりましたが、本人が望むならばそうした領域もアリです。このあたりは、舞踏セラピーへと連なる展開となりますが、そうしたことが必要な場合と、必要な人にはそのように進めていきます。
 
 私も竹内実花も精神科ディケアなどでの指導経験が長いので、舞踏に限らずアートということが場合によっては心理的に危険なことがあることを知っています。そこから出てきたのが上のルールという訳です。
 
 
 というわけで…。  
少し日常から離れて、自分自身の身体、そして内面に沿って、体験を深めてみたい方は是非、参加してもらえればと思います。舞踏ということの深さと広さを体験して、自分自身の生き方や感性の幅を広げてもらえればと思っています。
 
 
舞踏・偶成天 森田一踏・竹内実花 




以下は資料として掲載しています:(3/31, 2013)



舞踏ワークショップ雑感:森田一踏

今年(2013年)は三月に8日間の集中舞踏ワークショップを実施してしまった。
これまで12月から三月までの雪のある時期にワークショップを開いたことがなかった。理由は単純で、吹雪や豪雪などで航空便のみならずJRを含む陸路が遮断して、千歳空港には飛行機は降りられず、降りても鉄道や高速道路が寸断されて札幌まで来ることができない…。温暖化による異常気象は凄まじいと思うが、今年は特にひどく、一月から二月にかけては、数百便が欠航、数万人が影響を受けたようだ。

そういう時期の三月になぜワークショップを実施したか? 理由は簡単だ。三月に集中舞踏ワークショップを開いて欲しいという要望が海外の参加者から寄せられたからである。また、三月ならば降雪や豪雪による影響はまだ少ないという読みもあった。
集中舞踏ワークショップは一日6時間。今回は八日間。定員は8名である。海外からのエントリーと国内からの参加者を入れると定員以上になることが多い。なぜ8名と少ないのかって? マスプロな指導はしたくないことと、スタジオがこじんまりしているためである。広々とした空間と比べると、比較的狭い空間の方が心身への集中の度合が深く、舞踏の身心訓練には良いことも多い。
ちなみに海外からのエントリーのうち、今回はイギリスからの申込が仕事の関係でキャンセル、ノルウェーなどの北欧からの二人が事情により来られないということで、4-5名程度のワークショップとなった。この程度の人数だとほとんど個人指導に近いのがさらに良い。

舞踏はすでにBUTOHとして海外で展開されていて、今はスペイン、南米とロシアなどで急速に広がっている。2010年までにアメリカ・ヨーロッパでの展開はおおむね一段落した感じもある。そのため、ヨーロッパなどからの参加者は、旧来の伝統的な舞踏の内容はもちろんとして、その理論的な背景をアートのみならず、身体心理的アプローチとして関心を持っていることが多い。また、それぞれの国の文化や歴史や身体的特徴に基づいて、自らのBUTOHを作り出そうとする流れが強いため、昔の稽古をただ繰り返すだけのレッスンでは飽き足らない参加者が多いのも時代の推移だと感じる。

今回の海外からの参加者はいずれも国内で知られている大方の舞踏家のレッスンを経験済みの者だった。そういう剛の者に来てもらえると実に面白いのだが、それは、それぞれの舞踏家のところで体験した内容が彼らにとってどういうように受け取られたか、こちらが学ぶ機会になるためである。大昔に山海塾・蝉丸さんのワークショップに参加し、アスベスト館では元藤さんにずいぶんお世話になったが、最近は東京や大阪などの舞踏家とはほとんどつきあいがない。元々、つきあいが悪い人間であるが、海外のイベントに呼ばれてそこで日本人の舞踏家に会う程度というわけで、蝦夷地に生まれ育った者としてはまあ普通のことといえる。

海外からの参加者について、これまでの傾向として非常にはっきりしてきたのは、「文化的身体的な違いに基づく問題点について、英語でのコミュニケーション不足のために誤解されていることが多い」ということである。彼らの多くは極めて細かな体験や感想をもっているが、その多くにきちんと英語で回答されることが少ない…ということである。単純な誤解にしても、舞踏の細かなことについても情報不足の状態のまま放置されているといっていい。
こちらのワークショップに来ようとすると「なんで札幌まで行くの?」と質問されたという参加者も多い。その答えは非常にはっきりしている。私のところではできるだけ正確に英語で舞踏および舞踏的身心訓練の説明をするから、である。

もう一つは、私が舞踏家・ダンスセラピスト・身体心理研究者という三つの顔をもつということ、竹内実花は舞踏家・ダンスセラピストとして精神科領域でも指導しているという、舞踏・身体・心理に関する専門家だということである。海外からの参加者の多くが、すでに単なるパフォーマーとして来日するのではなく、自分自身でBUTOH活動を展開することや新たな作品を作り出すことや、研究を含む様々な専門領域をもっているためである。

わざわざ札幌まで足を伸ばしてもらっている以上、それぞれの国に戻ったらその国の文化・歴史などに根ざしたBUTOHを新たに展開して欲しいと私は本気で思っている。それも現代的な舞踏ではなく、北の豪雪と寒さの中で営んできた「暗黒なる舞踏」を、である。今年で舞踏活動25周年の私は、これまでの経験を次の人たちに伝えて行けたらと願っていて、それが国内の参加者であれ海外からの参加者であれ、わざわざ来てくれる人は大歓迎である。一日6時間の集中訓練は、指導する私の身心にはかなりきつくなってきていることは確かであるが、まだしばらくは頑張りたいと思う。

そうそう、竹内実花のレッスンについて一言。今回もたった1分程度のレッスンで参加者の立ち方を一挙に変え、身長がそれぞれ1-2センチ高くなった。アレクサンダー・テクニックなどでもそういうことが起きるが、竹内実花は身体面および心理面についてのプロであることを一言書いておきたいと思う。 [竹内実花ボディラーニング・セラピー] 

ということで、今回も実に濃いワークショップとなり大変に満足している。次回の集中ワークショップは夏休み、八月、九月に企画しているところである。
(3/31, 2013)

舞踏身体訓練:森田一踏

早いものであっという間に年の瀬。
今年(2012年)は随分忙しい年で、身体訓練もなかなかする時間がとれないという状態でした。情けない…。
ただ、その分、稽古に通ってくる舞踏の生徒さんを見る力が育ったように思います。例のミラー・ニューロンの話につながりますが、見ているだけでもその人の身心の状態が身映しのように伝わってくる感覚は以前よりも明確になったように感じます。その分、自分の身体はそういうようには向かわない…自分の身体はこういう具合に動きたがっている…。そうした感覚が以前よりも明確にもてることは収穫だといえます。

そういう視点でテレビの中で繰り広げられている「ダンス」、もちろん素敵なものも刺激的なものもたくさんあるわけですが、舞踏という所に長年居たため、随分と違和感があるものです。
  • ダンスはおおかた正面志向性にからめとられている。「前」にしか関心が向かないので、身体が表と裏しかない煎餅みたいに平たくなって踊っている。

  • 動いているときに目線がテレビカメラ側に居るだろう振り付け師に向かっているような具合に、頭と目線の動きが固まっている。
  •   
  • 動きの中に没頭することが少なく、頭の中に残っている振り付けの順に動作しようとしていて、身体が放置されるところが見える。

    これは批判というよりも単なる感想ですね。そうした世界があるわけなのでそれはそういうことで。ただし、舞踏だったらそういうことではないなあ…という感慨です。なので、この三つの状態に陥る踊りはそこが気になって見てもあまり楽しくないですね。若い人が必死に「バトル」しているときなどは、そうしたことを全部ぶっ飛ばして踊る瞬間があって、それなりに迫力があるけれどもね。
(12/31, 2012)
 
舞踏レッスン:森田一踏

 最近の舞踏レッスンには、ダンサーやパフォーマーの方はもちろんですが、そうしたフィールドには限定されない様々な方が参加しています。日常的な生活や仕事などのストレスの中で見失われていること…。多くの方は、舞踏的な身心訓練を通じて得られる身体的な気づきによって、身心のバランスを回復することや、生き生きした手応えを取り戻すことに取り組もうとしています。
 舞踏そのものは人前で踊る身体的パフォーマンスの一つですが、決まった振り付けや動きを見せるものではありません。どちらかというと、自分でも気がつかない新しい身体的な出来事や新たな発見に没頭するもの…というと分かりやすいでしょうか。「自分探しの身体的バージョン」というと少し軽すぎますが、ニュアンスは近いものがあります。
  • 決まり切った振り付けはありません。
  • 音楽のリズムに合わせて踊ったりしません。
  • 曲のリズムをカウントしたりしません。
  • 偶成天のレッスンでは、身心に過剰な負荷をかけることはしません。
 数十年の昔の舞踏グループは、心身ともに過激なトレーニングを行うことが多かったのですが、偶成天の舞踏レッスンでは、「舞踏セラピー Butoh therapy」「純正な動き authentic choreography」を二つの柱として行っているので、本人がそうした強い動きを望む場合はともかく、こちらからそうした負担を強要することはありません。
 
 それには二つ理由があります。一つは、身心の微細な感覚と微細な動きへの感度を増すことを重要視していること、二つ目には、年齢や性別や体力や体験や筋力など、一人一人の身心の個別性と特異性を重視しているためです。
 
 身心の個別性から、ふいに本人も考えたことのないような動きや反応が発生します。強いものだったり緩慢な動きだったり、どうしてそうなるかは分からないけれども、カラダは例えばねじれや伸びや屈曲などをしたがるものだと気がつきます。そうした体験の中から広い意味での「その人なりのおどり」が立ち現れていくこと…。偶成天の舞踏レッスンの基本はそこにあります。
 ダンサーとしてそれなりの活動歴のある方が、舞踏レッスンの中で初めて、振り付けに関わらない身体のあり方や動きを発見することがあります。通常のダンスや踊りの枠組みから逸脱しているのが舞踏であり、そうした舞踏レッスンだからこそ起きることです。
 
 軽い気持ちで来てもらうようなカルチャーセンター的なレッスンではありませんし、その逆の過酷な身心訓練を組み込んでいるわけではありません。しかし、様々な身心エクササイズを行う中で、状況によっては身心の深い地層を経巡る体験となることがあります。こうした展開が「舞踏セラピー」と呼ばれる過程に含まれていることを知っておいてもらえればと思います。
 
 単なる体操やスポーツやダンスではどうにもならないカラダの蠢きや何か…。そうしたことに出くわしたときは、舞踏レッスンを考えてみると良いかもしれません。こうしたレッスンには国内からだけではなく、海外20ヶ国ほどの様々な国から様々な経歴の方が参加しています。(10/2, 2011)
   
舞踏レッスン:竹内実花

(以下は10/2, 2012年の記述です)

10/15-16の土日、札幌にて「にんぎょひめ」(舞踏と読み語り)の再演があります。その稽古などで竹内実花は多忙のため、このコーナーの原稿はまだ入っていませんので、森田一踏から、今回の再演について書いておきます。
今回の舞台は、昨年の札幌アートステージ2010の「サプライズ賞」を獲得した作品の再演となりますが、30公演ほどの中から選ばれた「にんぎょひめ」は、審査者によると「大賞」にも匹敵するという評が書かれています。私も公演を見たのですが、思わず落涙…。こどもの純真な気持ちになっていく中で、せつなさに涙が出てしまいました。
舞踏「偶成天」は暗黒舞踏を標榜しています。それなのに、いやそれだからこそのアノ純粋な舞台になったのだと思っています。渋みに押さえのきいたヨミガタリスト・マッツさんの語りも良かったですし。
竹内実花は今年、札幌北光協会で舞踏ライブを行いましたが、震災後のそうした推移の中で、何か一つ大きく変わりつつあるように感じます。今回の竹内実花の「にんぎょひめ」再演は、私は見なければならないと感じています。
9月末にイタリアの古城都市ルッカ(Lucca)で開かれた全ヨーロッパ・アートセラピー大会に、パフォーマンス部門で竹内実花は参加しました(竹内実花は認定ダンスセラピスト)。竹内実花の40分ほどの舞踏ライブは全員総立ちのスタンディング・オベイションとなり拍手が鳴り止まず。そうした舞踏ライブからの、いわば凱旋公演となるのが今回の「にんぎょひめ」なのです。

という宣伝のコーナーではなく、舞踏レッスンの話に戻ります。
「にんぎょひめ」の人魚の竹内実花は舞踏の稽古の時に、「にんぎょ腹筋」というレッスンを行ったりします。にんぎょの形を腹筋で支えるレッスンですが、だいたい数分しか続かないものです。舞台では竹内実花はたぶん少なくとも10〜20数分以上も維持しているようです。
ひそやか過ぎて目には見えない暗黒舞踏の伝統…でしょうか。身体のリアリティと真っ直ぐなこころねに出会えるのではないかと思っています。
黒点が穿たれた私の魂は清められないでしょうが、見に行かねばなりません。
(10/2, 2011)

 
11月に表彰されました。「北の聲アート奨励賞」という賞を戴きました。副賞の金一封と飾り置き時計も戴きました。優秀賞は高名な老彫刻家の方が受け取り、奨励賞は竹内実花と若いアーティストの男性が戴きました。長年の舞踏活動とともに、最近の「人魚姫」での賞なども評価されたようでした。ありがとうございます。ここで感謝の意を述べておきたいと思います。(12/31, 2012)

   


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会場: 竹内実花BUTOH研究所 「スタジオぐう」[地図]
札幌市西区二十四軒3条4丁目 栄輪ビル3F
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