Business Forum Kobe 21
トップページ >税務 >これでいいのか日本の税法>〜株主が負担する税金〜

【これでいいのか日本の税法 Part4】
〜株主が負担する税金〜
1.計算例
会社誰のものか。こと所有権の観点で言うと、会社は株主のものであります(観点を変えると株主のものと言えないことも多々ありますが)。
では、株主が会社に投資して、利益を上げて、投資資金を回収した場合、およそどれくらいの税金負担するのか見てみましょう。
前提として、@1億円投資して非上場会社を設立し、A1億円の利益を生んで、B会社を清算して投資資金を回収した、C株主は個人で所得税の最高税が適用されている、としましょう。
1億円の利益には法人税が4,100万円(実効税率41%)かかります。
会社を清算して残余財産1億5,900万を回収しますと、5,900万円が配当と認識されます。
 5,900万の配当に所得税が2,065万円(5,900千万円×(40%−5%))、住民税が507万円(5,900万円×(10%−1.4%))、合計2,572万円かかります。
 税金を合計しますと、6,672万円となります。つまり、会社の利益に対し、株主は66%の税金を負担することとなるのです。
2.配当控除
会社の利益に対して法人税がかかります。課税済み利益が配当される際に、二重課税防止するために配当控除の制度が設けられています。それが上記計算例の所得税−5%、住民税−1.4%の控除なのですが、申し訳程度の控除でお茶を濁して、大部分の利益が二重課税されているのが実態なのです。
所有権の観点から言えば、法人税株主負担している(上記例によれば、2億の株式価値が法人税の負担により1億5,900万円に減少している)のですが、その認識が低いことをいいことに、多大負担を強いているような気がしてなりません。
 配当課税を二重課税と認めるのなら、税負担が発生しないように措置すべきです。
3.株式を譲渡する場合
上記例の回収方法を清算でなく株式譲渡の場合、どうなるのか見てみましょう。
その際、譲渡価額=純資産価額=1億5,900万とします。
非上場株式の譲渡益5,900万円に対し、申告分離課税で、所得税885万円(5,900万円×15%)、住民税295万円(5,900万円×5%)、合計1,180万円かかります。
 配当の場合に比べて1,392万円(2,572万円−1,180万円)節税できることになります。
 それでも、税金の合計は5,280万円となります。
4.上場会社の場合
上場株式配当の場合、大口株主(株式保有割合3%以上)を除き平成25年12月31日まで10%源泉分離課税(所得税7%住民税3%)が適用されます。
譲渡益に対しても、証券会社を経由する事を条件に、平成25年12月31日まで、10%源泉分離課税(所得税7%、住民税3%)が適用されます。
つまり、非上場会社より上場会社の方が、株主の税負担は優遇されているのです。上記の例に当てはめると、配当、譲渡いずれの場合でも、所得税413万円、住民税177万円、合計590万円かかり、税金の合計は4,690万円となります。
5.まとめ
上記例で見たように、株主は思いの外、税負担を強いられているようです。それは配当譲渡益二重課税されることに起因しています。また、投資資金の回収方法や、投資先が上場しているか否かで、負担率に随分差が生じるようです。
現在のように厳しい経済環境の下で会社を継続することは多大なリスクを伴います。その反面、雇用確保環境保全製品の安全性・説明責任・安定供給などなど、社会的責任は年々増加しています。にもかかわらず、会社に投資した見返りの大部分をお上(かみ)に没収されてしまうのです。日本で企業家が育たない理由ではないでしょうか。
おまけに円高に追い打ちをかけられ、企業の海外シフトがどんどん進んでいるようです。
リスクを背負って社会貢献をする者に対して、インセンティブを与えることがあってもペナルティを与えないようにしないと、社会活力は失われるでしょう。
昨今、増税気運が高まっておりますが、取りやすい所から取るのではなく、明るい未来社会のために、どのように公明正大痛み分かち合うのかを考えて欲しいものです。
税務のトップページへ
トップページへ

Copyright (c) 2006 Business Forum Kobe21 All Rights Reserved.