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【これでいいのか日本の税法 Part3】
〜交際費〜
 
1.交際費課税の概要
 所得税においては、特に交際費課税の規定は設けられていないので、個人事業主の場合、事業関連性の明確な交際費等は、全額必要経費に算入できます。
 一方、法人税においては、交際費等原則として損金に算入できないとした上で、例外的に損金に算入できる交際費等の範囲を規定しています。
 企業の冗費(=無駄遣い)を節約させて、内部留保の充実を図る趣旨から、交際費課税の規定が設けられているとされています。
 企業が支出する交際費等を冗費と決めつけて、原則認めないとする姿勢は大いに疑問です。円滑な企業運営において必要不可欠な交際費等は、いくらでもありますし、本来、企業の冗費支出により不利益を被るのは株主のはずですから、それを監視するのは株主の仕事であって、課税庁の仕事ではないはずです。
 しかも、内部留保を図る趣旨を謳いながら、その一方で、同族会社の内部留保には追加課税をするなどは、論理矛盾に思えます。
 つまるところは、税収ありきに思えて仕方がありません。
 
2.交際費等とは
 交際費等とは、交際費接待費機密費、その他の費用で、得意先仕入先、その他事業に関係のある者等に対する接待供応慰安贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいいます。
 
3.損金算入できる交際費等
(1) 損金算入枠
 資本金1億円以下の法人については、年400万円までの交際費等の額の90%が、損金算入できます。
 例えば、交際費等の額が年300万円の場合、270万円が損金になり、交際費等の額が年400万円超の場合、交際費等の額がいくらであっても360万円しか損金になりません。
 実際の事業規模に関係なく資本金1億円以下という基準だけで一律の枠を設定するのは不合理に思えますし、400万円という枠も、なぜ400万円なのか理由も明確ではありません。売上1億円の会社も売上100億円の会社も交際費の損金算入枠が同じというのは、おかしくないでしょうか。
 また、課税の趣旨から考えれば、公私の混同が曖昧になりやすい中小零細企業の方が、冗費抑制の必要があるように思えますが、逆に緩和措置が設けられているのは、課税の影響は小さいが、反対者の数が多い中小零細企業に向けた対応策なのでしょう。税法は政治的意図で規定されることが多分にあるようです。
※ 去る6月19日に補正予算が可決され、追加経済対策の一環として、平成21年4月期決算から、年400万円の枠が年600万円に引き上げられる方向です。
(2) 5,000円以下の飲食費
 一人当たり5,000円以下の飲食費については、所定の記録保存等を要件に損金算入が認められます。
 価格競争が激しく、デフレ不況が長期化・深刻化している現在の経済情勢において、5,000円以下しか認めないというのであれば、飲食業界の価格競争は益々激化するような気もします。
 
4.交際費等に類似する費用
 交際費等に類似する費用を明確に区分し、交際費等に混在させないことは、節税にもつながります。
 交際費等にならない類似費用の例を次に挙げておきます。
@ 従業員の福利厚生のための飲食、旅行、慶弔禍福の費用で通常範囲のもの
A 会議に関連する茶菓、弁当代等
B 一定の基準に基づくリベート
C 一定の基準に基づく紹介料で通常範囲のもの
D 一般消費者を対象とする広告宣伝のための招待旅行
etc・・・
 
5.その他
 こと交際費等に関しては、法人より個人事業の方が断然有利なようです。
 交際費等については、役員賞与として否認を受け二重課税されるケースも多々ありますので、支出のルールを明確にしておきたいものです。
 交際費等の枠がない、あるいは枠を超えている企業において、渡し切り交際費の支給をする場合があります。一考に値する方法だと思います。ただし、源泉所得税が課税されますし、消費税仕入税額控除ができなくなりますので、注意が必要です。
 競争が激しくゆとりのない時代ですから、合理性の乏しい交際費課税をもっとおおらかなものにして欲しいものです。
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