秘密戦隊ゴレンジャー
僕たちが生活する日本。
確かに犯罪は起きるものだし、殺伐としたニュースが流れるのも別段不思議なことではない。
青少年による犯罪は後を絶たないし、警察や官僚の汚職事件だって表に現れるのは氷山の一角に過ぎないのだろう。
それでも僕たちは毎朝眠い目をこすってベッドから起き、上司の目を伺いながら適当に仕事をし、そして夕方には帰宅してお風呂に入って寝ることができる。
それは紛れもなく平和である証拠だ。
ニュースに流れてる事件はあくまでも他人事であって、自分の生活はちゃんと別の次元で存在しているのだ。
僕たちは普段、自分の身に関わるような危険とは関わりなく生活を続けている。
そしてそれは僕らが知らないところで活躍する正義の味方のおかげでもあるのだ。
日本を足がかりにして世界の破壊、人類の滅亡を図る悪の秘密結社と戦う5人の勇者のことを、我々はまったく知らない・・・。
*****
街で怪人が暴れている−−−!!
日本のどこにでもあるような、とある街。
そしてその街中にあるどこにでもあるようなカレーショップ。
一番の人気メニューは店長特製のビーフカレーだ。
しかし、ひとたび市民の悲鳴が聞こえると、そこは秘密戦隊ゴレンジャーの秘密基地に様変わりするのだ。
カレーショップの地下には実は現代科学の粋を集めた高性能コンピュータで囲まれた司令室があり、そして世界中からあらゆる情報が瞬時に集まるようになっている。
その横にはスクランブル出動を可能にするスーパーバイクと武器の数々。
バイクの最高速度は時速300キロだ。
そして今日も怪人が暴れているとの通報が・・・。
司令官「幼稚園のバスが怪人にバスジャックされたそうだ! 秘密戦隊ゴレンジャー、出動!!」
先頭を切ってバイクにまたがったのは、アカレンジャーだ。
アカレンジャー「」
アカレンジャーはみんなのリーダーであり、熱血漢。
司令官はその後姿を見て、やはりリーダーはこいつしかいない、と思った。
そしてその後ろを追ってタイヤの音を軋らせる4人の勇者たち。
司令官は葉巻をふかしながらその背中を見送った。
怪人がジャックしたというバスはすぐに見つかった。
どうやら子供たちを悪の秘密結社のアジトに誘拐するつもりらしい。
子供たちは泣き叫びながら助けを求めている。
アオレンジャーがバイクを怪人に体当たりさせて、そして自分は空中で一回転して着地した。
アオレンジャー「」
続いてキレンジャーもキックを放つ。
キレンジャー「」
よろめいたところに、ミドレンジャーがバイクに備え付けられているマシンガンをぶっ放す。
ミドレンジャー「」
怪人は立て続けの攻撃に一瞬ひるんだが、それでも致命的なダメージは受けていないらしい。
5人の戦士に向かって、一斉にミサイルを発射した。
ゴレンジャー「おあああッ!!」
しかし、その発射後の一瞬のスキを突いてまたも怪人を攻撃したのは、戦隊の中での紅一点、モモレンジャーであった。
モモレンジャー「」
キレイな回し蹴りが怪人の延髄あたりに入った。
どうやらそこが怪人の弱点だったようだ。
怪人はよろめいて動きが止まる。
アカレンジャー「今だ!」
ここで必殺のコンビネーション技が始まった。
ボール状の爆弾に5人それぞれが特有の回転を与えながらパスを回し、最後にアタックをするという最強の極め技。
ボールは怪人に命中した!
ドォォォォーーーンンンン
怪人は木っ端微塵に爆発し、跡形もなく消え去った。
そして今日の世界の平和は守られたのである。
多分、この日の出来事もニュースには載らないだろう。
しかし、秘密戦隊ゴレンジャーは有名になるために戦っているのではない。
我々の平和を守ることがその使命なのだ。
司令官は、モニターに映るその5人の勇ましくも頼もしい勇姿を見ながら、今日も葉巻をふかしていた。
司令官「」
秘密戦隊ゴレンジャーは、明日も明後日も、世界の平和のために戦いつづけるのだった。
《完》
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