合コン。 なんと甘美な響きをもつ単語なんだろうか。 同数の男女が同じテーブルを囲んで名を知り、そして仲良くなるというそういう企画。 どんな女のコが来るんだろう? どんな男のコが来るんだろう? そんな期待に胸を弾ませて、集合場所へ。 しかし、たいていの場合、待ち合わせ場所へ向かう道のりが一番幸せなのかもしれない。 4人vs4人の合コン。 もし向こうが全員かわいくてスタイルも抜群だったらどうしよう? 誰選んでいいかわかんないじゃん。 というようなムダな悩みがもっとも幸せであるといえる。 だってほとんどの場合、待ち合わせ場所に行ってみたら一人か二人、宇宙人が混ざってるから。 高校に入ったばかりのときのこと。 友人のジュンペイ君はジャニーズ系の顔立ちをした美形の男だった。 正直いって、モデルクラスであった。 たしかにこれなら一目ぼれが殺到して、現実にバレンタインチョコ50個というフザケた話も納得できるというものだった。 春のある日のこと。 ふとしたことがきっかけとなって、もうひとりタカシ君を入れて三人で合コンをすることになった。 といってもまだ高校に入りたてのときのこと。 日曜日にシェーキーズ行ってピザ食べてカラオケ行くくらいのものだ。 しかしそれでも気分は興奮状態である。 もし相手3人がアイドル級にカワイかったらどうしよう? というムダな期待に胸を膨らませて、前日の夜のお風呂は2時間、念入りにカラダの一部分を洗ったものだった。 翌日のグループデートのことを考えて眠れない夜を始めようとしていた矢先、電話が鳴った。 セッティング係のジュンペイ君からだった。 ジュンペイ「なあ、明日のことだけど、なんかさ、3人のうち2人来れなくなっちゃったんだって? で、どうしてもっていうなら別のコ捜すらしいけど、どうする? また今度にする?」 僕は若かった。 このとき落ち着いて「来週でも再来週でもいいし、オリジナルのメンバーでしようよ」といっておけばよかったのだ。 僕「いや、絶対に明日。なにがあっても明日!」 高潮した気分を抑えることができなかったのだ。 ***** 数年前に強力な台風がくるまで、渋谷センター街の入り口には、背の高いゲートが建っていた。 そこをくぐって数メートル。 そこにはかつてホットドッグ屋さんがあった。 そこに午後1時。 予定では適当にしゃべってカラオケかボーリングかビリヤード。 どの道、東口会館になりそうだ。 確か先にジュンペイが行ってるはずだった。 少し遅れてきたタカシ君をつれて僕とふたり、興奮を抑えきれずに足早にホットドッグ屋に向かう。 なんせ久しぶりにしゃべる同年代の女のコ。 ドキドキするのも無理のない話だった。 ホットドッグ屋にて。 ん? 二階席にはいないか・・・。 ってことは地下の席だな。 細い階段を降りて、ほぼ満席になってる地下のフロアへ。 渋谷。 いわば流行の発信源といってもいい。 これまでのファッションの流行のほとんどを生み出してきた街。 例えば、かつてのアメカジ、キレカジ、デルカジ、バイカー、サーファー系。ちょっと最近でいえばルーズソックス、ガングロ、ゴングロ・・・。 当然当時だって当時先端の流行がそこにあった。 (確か当時ってラルフローレン全盛時代。) ポロマークの入ったボタンダウンシャツにリーバイス501ジーンズという組み合わせが流行っていた。 女のコのファッションも結構そういう傾向で、カジュアルな格好が街を埋めていた。 ホットドッグ屋の地下のフロアもそういう高校生、大学生で埋まっていたのだった。 えっと、どこにいるんだろう? 見まわしてみた。 奥から3つめのテーブル。 こっちに背中を向けているがあれはジュンペイだ。 そしてベンチシートに並んで座る3人の女のコ♪。 僕はどこかでその女のコ3人を見たことがあると思った。 どこだ? どこで見たことがあるんだ? なんとなく思い出すことができたが、それを口にするのはヤボというものだろう。 僕に記憶が正しければ、3人ともウルトラマンのスペシウム光線でヤられたはずなのだ。 ガマクジラと、ギャンゴと、そしてザラブ星人。 怪獣墓場から戻ってきたのかい? でももう一回、宇宙に帰れ! 科学特捜隊、助けて〜。 僕「あ、遅れてごめん。こんにちは」 タカシ「あ、どうも・・・」 よく、マガジンの『Boys Be・・・』ではこういうとき女のコ全員カワイイけど、あれは思いっきりウソだと言っておこう。 合コンなんて、メンバーのなかに一人、カワイイ女のコがいればいいほうなのだ。 これが現実というものだ。 タカシ君。いきなりやる気なくすなよ。 彼の目は死んだ魚の目になっていた。 そんなこんなで始まったその日のグループデート。 終わるまでまだ数時間、残っていた。 だってまだ始まったばかりなのだから。 ちなみに僕はこのときちょっと内股だった。 洗いすぎで股間の一部がヒリヒリ痛かったのだ。 人間ってこうやって大人になっていくのかな・・・ |