halsstory

ボーダーコリー大作戦

 それから、毎日子供達と家内の洗脳にかかりました。
「ボーダーコリーってすっごく賢いんだって。」
「フリスビードッグになれるらしいよ。」(この頃はフリスビードッグが何かも良く分かってなかったのに)
「あんまり大きくないから、うちの中でも大丈夫だって。ゴールデンレトリバーじゃうちの階段はちよっと可哀相かもしれないよね。」
と自分自身も良く分かってないくせに、吹き込みまくりました。

 しかし、そこで問題発生
「ボーダーコリーってどんな犬?可愛いの?見た事ないからわかんないヨ。」
そうです、僕自身もどんな犬だか実際見た事なかったんです。雑誌を見ても、本を見ても、写真がちょっと載ってるだけでちっちゃくて良く分かりません。しかも写真だとコリーなどに比べて鼻が短めで、あんまり可愛い感じがしません。ゴールデンレトリバーはいくらでも近所にいるし、見るからに可愛いし忠実な犬そのものっていうイメージがあるし、爆発的に人気が出たのもうなづける容姿の持ち主で雑誌や本でも可愛い犬が沢山載ってます。う〜ん、やばい。これじゃ〜ボーダーコリーに決めることは難しい。

 苦肉の策で考えたのが、子犬を見せるということでした。子犬はとにかく可愛いから、どんな犬種でも見せてしまえば絶対気に入るに違いないと思い、雑誌で見つけた秦野のブリーダーさんのところに見に行くことになりました。東名高速をおりて山に向かって走り、迷いに迷った挙げ句にやっと到着。駐車場のすぐ脇のケージに雑誌に載っていたボーダーコリーが入っていました。思ってたよりずっと大きく、人を見透かすような鋭い眼差し、確かに見るからに利口そうな犬でした。
が、しかし、
「ぜんぜん可愛くないじゃん。」と子供達。
「それに大きいわ。」と家内。
う〜ん、お父ちゃん、ピーンチ。
「この子は男の子でも大きい方だから。あっちの犬舎に行くと可愛い子犬が沢山いるよ。」
とブリーダーさんが言ってくれて、犬舎を見に行きました。

 広い広い敷地に沢山の犬舎があって、いろんな犬が沢山います。こんなに沢山の犬を間近に見たのは始めてなので、子供達はちょっと腰が引けてました。大きな犬舎の真ん中に通路があり、両側がいくつかに仕切られていて母犬と子犬が入っています。いくつかのブロックにボーダーコリーの親子がいました。白黒の小さな子犬達、プニョプニョと動き回ってます。(かっ、可愛い。これなら大丈夫かも)
「うわぁ〜、かっわいい〜。ホラホラ動いてる動いてる。」
(あったり前だっちゅうの、動くに決まってんだろが)
「ほ〜んと、可愛いわね〜。」
との声に、お父ちゃんほっと一息。(しめしめ)
「この子達はまだ小さいんですぐには連れて帰れませんが、いい子を選んでもらえればお家で飼えるようになるまで育ててご連絡します。あっちに、もうちょっと大きい子がいるから見てみる?」
とブリーダーさんが言ってくれました。
そっちのブロックの子達は元気良くピョコピョコ動き回っていました。ポワポワの毛で白黒のぬいぐるみみたいでした。子供達は柵にしがみついて一生懸命見ています。
「ところで、ボーダーコリーっていくらぐらいするんですか?」
と家内がブリーダーさんに聞きます。
「こっちの子だと××万円。あっちの子だと××万円くらいかな。」
とブリーダーさん。
(ガビーン、たっ高い。)
家内も一瞬ひるんだようでしたが、さらに
「どこで値段がきまるんですか?」と聞きました。
ブリーダーさんは
「鼻の上の白いところをブレーズって言うんですけどそこが左右対象になってて、首の回りのカラーって言う白いところが奇麗につながってる子の方が高いんですよ。ほら、あっちの子はカラーがちょっと切れてるでしょ。こっちの子はきれいにつながってるしブレーズもきれいに入ってるんで高いんです。」
と説明してくれました。
説明は良く分かったんだけど値段が.......。

 実は犬を飼う時の早起き以外の条件が、子供達のお年玉貯金で出せる範囲でということだったのです。ブリーダーさんの言った安い方の子の値段は、子供達の貯金で買えない値段ではなかったんですが、飼った後にかかるいろいろなお金を考えると足りないのは一目瞭然でした。それに、そこまで話しを聞いてしまったら、やっぱり奇麗な子の方が良いに決まってるし。
(飼った後いくらぐらい掛るんだろう、ケージにトイレにカラーにリードに予防接種に、あっそれからフードもあるや、.......。)
カタカタと頭の中で計算していくと、大幅に足が出てしまいそうです。家内の方を見ると、どうやら同じような事を計算しているらしく、キッとこっちを見ました。
(足りない分はお父ちゃんの小遣いから出すんだからネ)
(足りない分は勿論家計から出すんだよネ)
と空中で視線が激しくぶつかり合い、火花が飛び散っているようでした。

 結局、どの子を連れて帰るとワァワァ騒いでいる子供達を引きずりながら、
「じゃ、ちょっと考えてからもう一度来ます。」
と言って帰ってきました。その時点で知っているブリーダーさんはそこしかなかったので、ボーダーコリーは予算的にちょっと合わないかなと思いました。 

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