●今年になってからなにか、残酷な殺人事件が続いているように思う。大阪の愛犬家連続殺人に始まって、福岡の美容師殺し、井の頭公園のバラバラ殺人、大阪ではほかにもバラバラ殺人が起きている。犯罪は時代を映すというけれど、確かに政治の世界も与党がバラバラ状態になって、なるほどなと思う。それにしても、救いようのない、シンパシーの持てない事件ばっかりだ。どの犯人も、被害者に対して愛情を持っていないのはもちろん、憎しみさえも持っていなかったのではないかと思える。それだけクールな感じがするのだ。これから語られる「岩の坂もらい子殺し」は、救いようがないという意味では同じなのだが、犯人が被害者に対して抱いていた感情はちょっと違う。もうちょっとどろっとしたものがあるような気がするのだが、どうだろう。 |
■かつて東北地方では間引きが半ば公然と行われていて、生まれてきた子どもを殺す「子潰しばばあ」などというのがいたらしい。そういう時代の、最後の名残りがあった頃の事件なのだろう。ただこれを犯罪と呼ぶことができるだろうか。それよりむしろ、社会のなかである役割を背負わされた人々のすさまじい現実といったほうがいいのではないか。 |
Copyright(c) 1996 BODHI PRESS. All Rights Reserved.